All Chapters of 君を救えるなら、僕は: Chapter 31 - Chapter 32

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三十章 「君よりも、君のことを」

「僕は、華菜よりも、華菜のことを大切にし愛するよ」 僕はさっき閃いたことを早速言葉にした。 僕は、言葉にするスピードも前の僕に比べたら早くなったと自分で感じることができた。 もちろん、聞いた相手が嫌な思いをしないかはまずしっかり考える。 でも、華菜についてたくさん考えたことで、スピード感が身についたのかもしれない。 自己成長をしっかり確認できた自分を、心の中で褒めた。自分自身を褒めることは、おかしなことじゃないから。それは、他者だけができることではない。 そして、褒めることのハードルが、多くの人は高すぎる気がする。 小さくても、大きくても、あることができたことに変わりないのにわざわざ褒めない理由を作らなくていいと僕は思う。 一方で、たとえ人を救う力がなくても、『言葉』の力を信じたい気持ちがどうしても僕の心の中にあるようだ。 『自分の考え方や生き方を変えることは、簡単にはできなくてもっと難しいことだよ』と前に彼女が話していたことが、今ならよくわかった。 でも、難しいだけで、できないわけではきっとない。 時間がかかっても、僕は彼女のために変わる。「私よりも??」 彼女を見つめると、少しどういう意味かわかっていない感じをしていた。 まだ僕は順序立てて話すことは、課題が多いようだ。 でも、いつも『完璧』である必要性はないと思った。僕たちは『完璧』でないからこそ、もっと頑張ろうと思えるのではないだろうか。また、足りないところがあるからこそ、人は誰かと補い合いたいと思うのだと思う。それを行動に移すかはその人次第だけど、一度は助けてもらいたいと思ったことがある人がほとんどではないだろうか。「うん。まずは、今更だけど僕は話すのが下手でごめんね。どういう意味かというと、僕が僕に向ける思いや愛情と同じ分だけ、華菜に注ごうと僕は思った。その量には、意味がちゃんとある。まず、自分を愛することをできない人は、愛するということはどんなものかわからなっていないのかもしれない。わからないから他人も愛することができない。一方、自分以上に誰かを愛することは、無理をしていると僕は思った。さらにその思いの大きさに、相手も申し訳なく感じると思う。『愛』を簡単に言葉で表現することはとてもできないと思う。『愛』は、様々な形があるから。きっと正解はない。ただ自分の愛の形を客観的に
last updateLast Updated : 2025-06-30
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エピローグ

 プロポーズともとれる言葉を僕が言ってから、六ヶ月後のことだ。 僕と彼女は、今彼女の荷物が入った段ボール箱を僕の家で一緒に開けている。 あれからやることがたくさんあって、あっという間に月日が過ぎていった。でも、やっとすべて終わり、同棲を今日から開始することになった。 まず、彼女のお母さんにたいしては、行政の支援手続きが完了し今後の方針も決まった。 一度で全ての手続きが済めば楽なのに、行政への相談はかなり時間がかかった。 でも市役所福祉支援課の担当者に現状を話すと、親身になり様々な提案をしてくれた。 その結果、彼女のお母さんは障害認定を受け、介護老人施設に行くことになった。所謂『老人ホーム』と呼ばれるところだ。 彼女はその話を聞いた時、驚いていた。 今まで当たり前のように一緒に住んでいたのだから、驚くのも無理はないと僕は思った。どんな人でも、突然離れ離れになるとわかると、気持ちは乱れてどうしていいかわからなくなるだろう。 そして、そこまで病状もひどくないと彼女からは見えていたのだろう。 でも、担当者の人はただ老人ホームに入れてしまえばいいという考えではなかった。 その人は認知症の人の介護は長期戦になることが多いと、大変さと家族のすることを具体的にわかりやすく説明してくれた。 そのように対応してくれたから、彼女はしっかりと支援方法を受け入れ、納得できたのだろう。 二人っきりで家にずっといると、どうしても外の人と話す機会が少なくなってくる。そうなると考えはどうしても偏ったり、狭くなってくる。客観的な視点が必要だと僕は思い、前に行政に相談しようと彼女に言ったのだ。 彼女は、定期的にお母さんに会いに行くと言っていた。 次に彼女の元カレのことは、あのあとすぐに警察に行った。 彼女は被害届を出し、元カレに接近禁止命令がだされた。 僕は彼女がどのようなことをされたか警察に話している間ずっと彼女の手を握っていた。 少しでも支えになればと思い、そばにいた。 でも、警察に相談しただけでは彼女を守れないと僕はわかっている。 だから彼女の了解を得てから、彼女のスマホを買い替えて電話番号を変えてもらった。また、今彼女がいる同棲先の住所は誰にも教えなかった。 さらに元カレが同棲先をなんらかの方法で知り突然押しかけてきたとしても、彼女には絶対に会わせず追
last updateLast Updated : 2025-07-01
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