クラブから出たばかりの翔琉くんのスマホに、誠士郎さんからのメッセージが届いた。画面を確認した瞬間、彼は思わず声を上げた。【うわっ……兄貴、まさかまた「家族会議」とか言い出すつもりじゃないよな!?今回ばっかりは真剣なんだからな?オレ、初めて本気で人を好きになったんだぞ?絶対に邪魔するなよ!もう十九歳なんだからな!】ブツブツとスマホに向かって愚痴をこぼす。それもそのはず、誠士郎さんには「前科」があった。昔から翔琉くんの行動は、恋愛もサボりも一切NG。模範的な優等生であることを強要されてきた。その結果――大学に入った今、周りは高校時代からの彼女持ちばかり。彼だけが、バリバリの独り身。ようやく出会えた「好きな人」、今度ばかりは絶対に守りたい!そんな思いの中、誠士郎さんから写真が送られてきた。そこに写っていたのは、一枚の絵。【これ、君が気になってる画家の作品と同じじゃないか?右下のサイン……百合の花に包まれた「夕凪」の字、前に見せてもらったやつとそっくりだろ?】翔琉くんは画面を食い入るように見つめた。たしかに――百合の花の中に「夕凪」という字が描かれている。でも、見覚えがない絵だった。夕凪が描いた作品は、全部ちゃんと記憶している。これは違う。すぐさまスマホを構え、キーボードを叩く。【おいっ!まさか兄貴、オレの恋人にちょっかい出そうとしてないよな!?義姉さんにバラすぞ!】勝ち誇ったように送信したその直後――次に返ってきたメッセージを見て、翔琉くんは固まった。【その絵、月城悠真の家で見つけた。彼いわく、婚約者の作品だと。君の画家さん、桃山夕凪って名前じゃないか?】その一言に、翔琉くんの思考がフリーズした。「……う、うそだろ!?そ、そんなワケ……いや待て、あの性格地味な男の妄想かも!きっとそうだ!オレ、聞いてないよ!夕凪姉に婚約者がいるなんて!」――まるで雷が落ちたかのような衝撃。翔琉くんは、もう何も手につかなくなっていた。頭の中には、その事実だけがぐるぐると回っている。夕凪姉に婚約者がいる!?「……だめだ。ちゃんと確かめなきゃ!」そう決意した翔琉くんは、その足でバイクを飛ばし、いつも訪れていた、あの小さな別荘へ向かった。庭で穏やかに絵を描いて
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