一方、梨央も焦っていた。まさか一平がここまでしつこいとは思っていなかった。斎藤家に危害を加えることだけは絶対に許さなかった。考えた末に、彼女は意味深な笑みを浮かべた。探したいのなら、探させてあげるわ。そう呟くと、この数日間の作品に細工を施し、世界各地に送った。同時に、ある人物に依頼していくつかの写真を用意させ、それを一平に渡した。一方、A市の病室でその情報を受け取った一平は、思わずベッドから飛び起き、点滴の針を引き抜いて、最も早い便を予約した。興奮のあまり、機内でも一睡もできなかった。時間はまるで引き伸ばされたように、一分一秒も、心地よい苦しみとなっていた。梨央も、彼を想ってくれているだろう。そう信じたい気持ちが、彼の口元を自然と緩ませた。瞳は希望で輝いていた。ついにZ国の地に足を踏み入れたとき、一平の目からは思わず涙がこぼれた。彼は結婚指輪を持っていた。もう一度プロポーズする覚悟もできていた。今度こそ、倍にして愛する。そう誓いながら、彼は車を走らせ、ある僻地の小さな町へと向かった。長時間の旅で顔色は悪くなっていたが、到着後、何度も服装を整えさせた上で、ようやくドアをノックした。だが、しばらく待っても反応がなかった。彼はあきらめきれずに、もう何度もノックを繰り返した。それでも返事はなかった。覚悟を決めてドアを押し開けると、彼の期待はあっけなく裏切られた。部屋の中は空っぽで、埃だらけだった。ただ、一枚の絵だけが机の上に置かれていた。一平の表情は瞬時に曇り、目には自嘲の色が浮かんだ。自信過剰だった。梨央がそう簡単に許してくれるはずがない。彼は絵を手に取り、じっと見つめた。ふと、あることに気づいた。数字が隠されている……?目が輝きを帯び、瞬きもせずに画面を凝視した。きっと、これは梨央の出した試練だ。これを解けたら、きっと彼女は――!一平はそのままZ国に留まり、数日かけて絵の中の暗号を解析した。全てを荷造りして、すぐにD国へと向かった。飛行機の中、彼の心は落ち着かなかった。待っているのは梨央か、それともまた新たな謎か――それでも、彼は向かった。梨央に会える可能性を、絶対に逃したくなかった。だが、期待に胸を膨らませてドアを開けた先にあったのも
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