「まだ足りませんよ。我が国の皇后や皇太子妃は、一度身に着けた装飾品を、二度着けることはありません。高位貴族もそうです」 「そうなんですか!?」 初めて聞いたが、すごく贅沢な話である。 ランダリエ王国の王妃や王太子妃は、代々受け継がれてきた宝石を大事にするため、重要な式典や公務では、所有している最高級の装飾品を使い回すのが慣例だ。 「レディー。ランダリエの貴族でも、常に新しい装飾品を身につけている方をお見かけしますよ」 ルシアンの言葉に、ナタリナも頷いた。 「お嬢様。殿方からの贈り物は、受け取るのが礼儀ですよ」 「あっ……」 昨日も、同じことを言われたのだ。 反対する言葉が思いつかず、エマはためらいながらも頷く。 (もうネックレスを頂いているのに……いいのかなぁ) 首元を飾るピンクサファイアのネックレスも、ブローチも、素敵すぎてうっとりするけど、エマにはあまりに過ぎた代物だ。 だけどルシアンにとっては、大した金額ではないのだろう。 (やっぱり、ルシアン様と僕は、住む世界が違うんだ……) 分かっていたことだけど、あらためて身分の差を感じてしまい、胸の奥がチクリと痛む。 ルシアンと、一緒にいたい。 そう望むことさえ不相応な気がして、エマはそっとため息をこぼした。 初めて訪れた王立劇場は、立派な建物だった。 足を踏み入れると、豪華絢爛と呼ぶにふさわしい装飾で彩られている。天井には金箔とフレスコ画が施され、漆喰の曲線美が柔らかい光を反射している。壁には赤と紫の深いベルベットのカーテンが垂れ、緞帳の金糸刺繍が煌めく。 通路には細長いシャンデリアが幾つも吊り下がり、観客席全体を柔らかく照らしていた。 「うわぁ。すごいですね!」 エマは視線だけをキョロキョロと動かしながら、隣のルシアンに話しかける。 三階建ての劇場は、舞台の前に重厚な木製のバルコニーが張り出し、貴族や王族用の特別席が並んでいる
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