All Chapters of 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる: Chapter 201 - Chapter 210

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第200話 洗い流す

    「実は、先ほど報告があったのですが、ワイール伯爵の館に、王太子の補佐官が訪れたそうです」 「補佐官が? まだ伝令は出していないのだろう?」 「はい。第二王子がワイール領に潜伏しているのではないかと、調査に来られたそうです」 「王太子の補佐官ならば、この上ない適任だ。しかし、本物の補佐官かどうか確認しなければならない」 「それでしたら、聖樹様のメイドか護衛騎士に面通しをすれば問題ないかと。補佐官殿は、三日前まで聖樹様の公務に同行していたと仰っていました」 「そうだったのか。ならば、メイドの一人に頼もう。ニコラは、ここの護衛をしてもらわねばならぬ」 「かしこまりました。王太子殿下と、補佐官殿に文をしたためます」 「お前に任せる。確認は不要だ」 「御意」  ノエルは頭を下げると、すぐさま一階の書斎へ向かう。  本来なら、ルシアンが中身をあらためた後に使者を出すが、今はそんな余裕がなかった。  両腕に抱えたエマから、ほのかに甘い香りが漂ってくる。鎮静剤を飲ませ、エマも半分意識を失っているが、火照った躰はそのままだ。 「伯爵様。準備が整いました!」 「ああ。シーシ、お前には使いを頼みたい。詳細はノエルに聞いてくれ」 「はいっ」 「さあ、エマ様、伯爵様。こちらへ」  スースがルシアンたちを脱衣所に案内する。  簡易な長椅子があり、ルシアンは外套に包んだままのエマを、そっと横たわらせた。 「お手伝いいたします」 「エマには触れるな。私が介抱する」 「はい」  ルシアンはスースの手を借りて、腰から剣を外し、ブーツを脱いだ。ジャケットとベストを脱いだ。  着替えをしている間に、シーシがトレイに杯を載せて運んできた。 「伯爵様。ノエル殿から、こちらを召し上がるようにと言伝がありました」 「ああ、そうだったな。助かった」  ルシアンは礼を言って、杯の中身を飲み干す。
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第201話 馬車の中

    「んぁぁっ、ァァ……ぃゃっ」 「そこはダメですよ」  エマが手を伸ばして、蕾から伸びた紐を掴もうとしている。  その手を押さえて、優しく咎めた。 「抜いてはいけません」 「ゃっ……んっ、イク……イきたいっ」 「ここを弄らなくても、イかせてあげますから」  ルシアンはエマの昂ぶりに手を添えて、ゆっくりと扱いた。 「ひゃぁぁんっ!」 「ほら、もうイったでしょう?」 「あぁっ! ぁんっ、もっと……ぁぁぁっ」  エマは背をのけぞらせて、ビクビクと震える。  その淫らな姿に理性を揺さぶられ、ルシアンは奥歯を噛みしめた。 (くッ……ダメだッ、エマをここで抱くわけにはいかないっ!)  エマはまだ、ルシアンのものではない。  王族との婚約破棄が叶っても、エマの所有権はランダリエ王家にある。 (エマは、必ず私がもらい受けるッ! だからこそ、手を出す訳にはいかないッ)  ルシアンは鋼の理性で耐え、エマを清めることに集中した。  エマのフェロモンに負けてしまわぬよう、静香石を抜かずに終わらせるつもりだ。 「ぁんっ、……ぁぁっ!」 「ほら、ここが好きでしたよね?」 「ひゃんっ、ぁ、っ、そこぉ……んぁぁっ」  布で乳首を優しく擦る。  塗られた媚薬がどこまで浸透しているか分からないが、できるだけ洗い落とすつもりだ。 「こんなに勃って……気持ちいいでしょう?」 「ぁっ、きもち、ぃっ、んぁっ、……はぁんっ」  乳首を指先でこねると、エマがイヤイヤと首を振る。  けれど、乳首はピンと尖り、エマは腰を揺らして自らの昂ぶりを扱いた。 「ァァッ……んぁっ、ぁぁ」 「エマ。可愛いですよ」  エマの手に重ねて、昂ぶりを扱く。  悪戯をするように、静香石を指で押すと、ビクンッと躰が跳ねた。 「ひゃぁっ……ぁぁんっ、ぁ
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第202話 メイドの髪飾り

     思い出の中では、サファイアベリーが多かったけど、ここではルシアンがメルベランを用意してくれていた。 「わあ! いいんですか?」 「もちろんです。どうぞ」 「ありがとうございます」  エマはニコニコしながら、メルベランを食べて、薬の苦味を忘れる。  エマの馬車旅の記憶は、食事と湯浴みだけで、それ以外は眠っているか、ウトウトしながらエマを抱っこするルシアンの鼓動を聞いていた。  そうしているうちに、いつの間にか王都に到着していたようだ。  エマが目覚めると、フカフカの大きなベッドで眠っていた。 「あれ? 馬車じゃない?」  見慣れない天蓋を不思議に思いながら起き上がると、そこが客間であることが分かった。白を基調にした客間は広々としていて、壁には淡い金の縁取りが施され、高級そうな調度品が飾られている。 「ここは……」 「エマ、起きたのですか?」 「あ、ルシアン様っ」  近くのソファーに座っていたルシアンが、パッと立ち上がり、エマの元に寄った。  ベッド横の椅子に腰掛けて、エマの顔を覗きこむ。  ルシアンは、上質なシャツにズボンを履いただけの装いで、ベストもジャケットも着ていない。室内着のようだが、ルシアンが身につけると、華やかに見えた。 「気分はどうですか? 痛むところはありませんか?」 「えと……大丈夫です」  エマは自分の体を見下ろした。身に馴染んだ法衣姿で、ここはもう王宮なのだろうと推測する。 「もう、王都に着いたのですか?」 「ええ。体調が戻ったようで安心しました。アズレーヌでは、貧血を起こして倒れたと聞き、驚きましたから」 「あっ……僕、貧血で……?」 「慣れない旅で、疲れていたようだと医師から伺いました。私もちょうど任務が終わったところだったので、王宮まで送っていくことにしたのですよ」  ルシアンの説明に、エマは頬を染めた。  道中は、なぜルシアンが一緒にいて
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第203話 北殿の部屋

    「シーシの髪飾りも可愛いね。それはルビーなのかな?」 「はい! あの店、サファイアだけじゃなくて、いろんな宝石がありましたよ!」 「エマ様がお選びになった髪留めも、スゥからミナに渡してありますわ~」 「ミナ、すっごく喜んでましたよ~!」 「良かった。ミナと仲良くなれたかな?」 「はいっ! とっても可愛い子です~」 「あたし達と同じで、エマ様のことが大好きなのですわ~!」  シーシとスースは、にっこり笑う。  三人が仲良くなれたと分かり、エマも嬉しくなった。 「貴女達、おしゃべりはそこまで」  ナタリナが注意するように声を掛けた。 「エマ様の食事が冷めてしまうわ」 「そうでした!」 「エマ様、すぐ準備しますね!」 「そんなに急がなくても、大丈夫だよ」  エマは首を振って答える。 (僕が見せてって言っちゃったから。二人のせいじゃないのに)  けど、シーシもスースも、まるで気にしていないようで、手際よく脚つきの木製トレイを置き、その上に器を並べていく。  その間に、ナタリナがエマに小さな木箱を渡してくれた。 「エマ様。こちらは、エマ様の物ですわ」 「僕の?」  受け取った木箱を開けると、中には小さいルビーのペンダントが入っていた。 「あっ! これ、あの店で買ったやつだよね?」  エマはパッと顔を輝かせて、ペンダントを手のひらに乗せる。爪留めのシンプルな形だが、澄んだ輝きを放つルビーに惹かれたのだ。 (ルシアンの瞳みたいに綺麗だから……よすがにしようと思っていたけど)  エマは、そっとルシアンを振り向いた。  エマの焦がれた赤い瞳が、優しく微笑んでくれる。 「可愛いペンダントですね。どこで買ったのですか?」 「あ、えと……アズレーヌの街で、朝市に行ったときに見つけたんです。シーシとスースの髪飾りと同じお店です」 「そ
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第204話 王太子の執務室

     けれど、ルシアンはため息をついて、とんでもないことを口にした。 「当然です。それに、私としては、エマの部屋を天耀宮に用意して頂きたかったのです。断られてしまいましたが」 「えぇっ!? 天耀宮は、王族専用の迎賓館ですっ。僕なんかが使えるお部屋ではありませんっ」  エマはびっくりして首を振った。  けれど、ルシアンは納得してない顔で、ため息をつく。 (ルシアン様、本気だったんだ)  エマとしては、そんなことにならなくて良かったと、胸をなで下ろす。そして、王太子の配慮に改めて感謝した。 「そ、それで……ルシアン様は、いつまでいらっしゃるのですか?」 「いつまで、とは?」 「その、任務が終わったと仰っていたので、もう帝国に戻られるのかと……」 「ああ。もうしばらく、ここに滞在する予定です」 「本当ですかっ?」  エマはパッと顔を輝かせる。  明日にでも帰ってしまうのではと思っていたから、ホッとした。  ルシアンは優しく微笑んで、エマの髪を撫でる。 「せっかく貴方に会えたのです。どうか、貴方の側にいさせてください」 「は、はいっ」  請うように言われて、また頬が熱くなる。  キスをねだってしまわないように、エマは食事に集中することにした。  + + +  ダリウは南殿にある執務室に補佐官達を集め、協議を行っていた。  ここ一週間ほど、慌ただしい事態が続いていたが、対処していくうちに、とんでもない事実が発覚したのだ。  まず、レオナールは、自室での謹慎を命じたにも関わらず、ジゼル側妃の手引きによって王宮を抜け出していた。脱走を公にすれば、ダリウの監督不行き届きをノワジエール侯爵に責められることは目に見えている。 (まったく、忌々しいことだ)  ジゼル側妃が手引きしたと分かっていても、確実な証拠はない。  ダリウは自らの近衛隊に指示を出し、密かにレオナー
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第205話 王太子と皇太子の密談

     今後、ティエリーから今回の騒動の補償として、エマの所有権を譲るように要求されても、こちらは断れない。その口実が、ダリウの手にもたらされたのだ。 (ティエリー殿下は、大した御方だ)  デイモンド伯が密売疑惑でレオナールを拘束したことで、ランダリエ側は取り調べに手を出すことができなくなった。  レオナール達が王宮に輸送された当初は、ダリウも国王や大臣達の意向を汲み、身柄の引き渡しを試みた。しかし、偽装されたサファイア原石が帝国献上品に混じっていた事実が明らかになり、引き下がるしかなくなった。  もし「ランダリエの人間は、自分たちの手で取り調べを行うべきだ」などと主張すれば、すなわち偽装工作に関与したと疑われるからだ。  その結果、ダリウが帝国側での取り調べを容認しても、さほど批判は出なかった。  ダリウにしてみれば、水面下でティエリーと取引済みであり、ノワジエール侯爵を失脚させるための、不正の証拠が出揃うのを待つだけで良い。 (ティエリー殿下には、大きな借りが出来たな)  取引の条件も、帝国へ献上するサファイア原石の量が増えるくらいで、それほど厳しいものではない。ダリウが王位を継げば問題なく対応できる範囲だ。  何より、エマをティエリーに譲ることは、決してエマを不幸にはしない。 「我々の勝負は、王家審問だ」  ダリウは、ルシアンから入手した極秘の報告書に目を通す。  すでに裏付けを取ってあるが、万が一にも失敗は許されない。 「決して、騒ぎが外に漏れぬよう、警備と厳重に頼む」 「はっ。かしこまりました!」  ダリウは協議を終えると、人目を避けて北殿へ向かった。  非公式で滞在している帝国皇太子ティエリーの部屋だ。彼の存在は伏せられており、天耀宮ではなく、北殿の一室があてがわれている。 (反皇太子派を油断させるため……そして、逃げ場を塞ぐためか)  ノワジエール侯爵とワイール伯爵はすでに拘束され、そこから繋がる帝国貴族――反皇太子派の者たちも捕らえ
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第206話 王太子の見舞い

     エマが食事を終えると、王太子が見舞いにやってきた。  ベッドの上で対応するわけにはいかないので、エマは応接間で王太子を出迎えた。 「ダリウ殿下! わざわざご足労頂き、ありがとうございます」 「休んでいるところを済まない。調子はどうだ?」 「おかげさまで、回復しました。北殿に部屋を用意していただき、感謝しております」  エマは笑顔で頭を下げた。  与えられた客間から外には出ていないが、かなり厳重に警護されていると、ルシアンやナタリナから聞いている。  そのルシアンは、別室で待機していた。王太子が「エマと二人で話したい」と同席を拒んだからだ。 (ダリウ殿下からのお話って、たぶん、王族関係だよね?)  そうでなければ、ルシアンの滞在を許している王太子が、同席を断るはずがない。そのうえ、王太子は応接間から侍従まで下げたのだ。  本当に二人きりでの会話を望んでいると分かり、エマもナタリナを下がらせている。 「あの……お話とは、何でしょうか?」  エマはやや緊張しながら、王太子を見つめた。  すると、王太子は眉根を寄せ、苦渋を滲ませた表情で口を開いた。 「エマヌエーレ」 「はい」 「……この半年のもの間、レオナールの犯した数々の愚行を、王太子として謝罪したい」 「えっ?」  思いがけない言葉に、エマは目を見開いた。 「私の判断と対応が甘かった。そのせいで、そなたに多大な苦労を背負わせてしまった。琥珀の館ではなく、使用人の住む離れに置かれていたと聞いている」 「はい……でも、それはダリウ殿下の責任ではありません」  エマは戸惑いながらも、首を振って否定する。 「王子は、私が平民であることを快く思っておりませんでした。もうご存じかと思いますが、侍女長もジゼル側妃の指示を受けていました……私が恨むとすれば、彼らだけです。ダリウ殿下が詫びる必要はありません」  西殿の琥珀の館は、王族の婚約者が住まう場所。現在は第二王子レオナールの領分であり、
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第207話 王家審問の話

     レオナールの婚約者という立場は、エマにとって重い足枷だった。逃げ出したくてたまらないのに、どこへも逃げられない。  それに、レオナールの描いた筋書きでは、半年後に「子を産めない聖樹」として婚約破棄され、いわれのない罪をなすりつけられるところだったのだ。もしそうなっていれば、エマは二度と自由を手にすることなく、さらなる地獄を見ることになっただろう。 「本当にっ!?」 「ああ。私の名にかけて誓う」  王太子が力強く頷いた。 「ただし、王家審問では、レオナールがそなたに行ったことを、明らかにせねばならぬ。そなたが琥珀の館に移ってからこれまでのことを、全てだ」 「ぁっ……!」  エマはハッとして、王太子を見つめた。 (もしかして……ぜんぶ、知ってるの?)  レオナールから受けた、非道な仕打ちの数々。思い出すだけで胸が苦しくなる。  先ほどの高揚が嘘みたいに、冷や汗が出てきた。  冷遇されたことならまだしも、発情期のたびに虐待を受けていたことは、ナタリナしか知らないはずだ。だが、それを抜きにすれば、レオナールの罪が軽くなる恐れがある。 (どうしよう……知られたくないっ)  真っ先に思い浮かぶのは、ルシアンの顔だった。  愛する人に、自分が受けてきた仕打ちを知られるなんて、こんなに辛いことはない。  だけど同時に、聖樹として貴族教育を受けたエマには分かっていた。 (王子を確実に断罪するには、審問の場で事実を明らかにするしかない……っ)  虐待を受けていたと、周りに知られるのは怖い。  想像するだけで、胸が張り裂けそうに痛む。  体が竦んで、震えてしまう。 (でも……いちどは、覚悟を決めた……ルシアン様と、別れたあとに)  あのとき、エマがレオナールから受けた非道な仕打ちは、王太子へ報告されたはずだ。そしてエマは決めたのだ。  自由になるためなら、事実を話す、と。  ようやく、そのときが訪れただけのことだ。 「……分かりました
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第208話 送迎の騎士

    「ええ。密輸罪の審問時に出席するようにと、要請を受けています。エマも、最初は控え室で待機するのでしょう?」 「はい。ダリウ殿下から、お許しを頂きました」 「では、控え室で一緒に待機ですね」  ルシアンが嬉しそうに言いながら、エマの髪を撫でる。 (あ、そっか。ルシアン様には、冒涜罪の審問は聞かれなくて済むんだ)  エマは安心して、ルシアンに寄りかかる。  ルシアンには、レオナールから受けた仕打ちを話したことがある。 ほんの一部だから、詳細は知らないはずだ。 (ルシアン様に知られなくて良かった)  今後も、知られることはないだろう。  エマは安堵の笑みを浮かべて、ルシアンの腕をそっと握りしめた。 + + +  翌朝、エマは早くから身支度を整えた。  湯浴みを済ませ、儀礼用の法衣に袖を通す。最高級の絹糸で仕立てた法衣は、よく肌に馴染んだ。儀礼に則った軽めの食事を取ると、心も落ち着いてくる。  しばらくすると、ルシアンが姿を見せた。深い藍色のジャケットとベストを合わせた服装で、華美な装飾はないが、洗練された装いが気品にあふれていた。 (わぁっ。今日も素敵だな)  麗しい見た目にすらりとした立ち姿は、何度でも見惚れてしまう。 「エマ。よく眠れましたか?」 「はい。ルシアン様は?」 「私もしっかり休みましたよ」  そんな他愛ない会話をしていると、緊張も緩む。  迎えの騎士が来るまで、ソファーでおしゃべりをしながら待った。 「エマ様。お時間です」  声をかけたのは、ナタリナだった。  今日の彼女は、いつもの侍女服に加え、肩に聖花女の徽章を付けている。リンデンの花を模したその徽章は、三段階ある聖花女の位のうち、二番目、上聖花の証だ。 (僕の代理として、証言するからだね)  誇らしげに胸を張るナタリナを見て、エマは微笑む。 「エマ様。どうぞ
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第209話 聖樹冒涜罪

     パトリックが一歩前へ出て、扉の前に立つ近衛兵へ到着を告げた。 「聖樹エマヌエーレ・イーリス様。ならびに聖花女カタリナ・ケイル様。そして、特別証人として、オスティン帝国より、ルシアン・デイモンド伯がお越しです」 「三名の出席を確認しました。中へお進みください」  静かな声とともに扉が開き、一行は中へ足を踏み入れる。  その先にあったのは、控えの間だった。中央の空間から、前方と左右にそれぞれ扉が設けられており、用途ごとに分かれているらしい。  近衛兵に導かれ、エマとルシアンは左手の扉へ向かう。 「聖樹様。こちらは控え室となります。証人召喚まで、こちらでお待ちください」 「承知しました」  エマが頷くと、ナタリナが一歩前へ出て、エマの前に跪いた。 「エマ様。私は一足先に、審問の場へ参ります」 「ナタリナ……無理はしないでね」 「はい」  凛とした返事を残し、ナタリナは立ち上がる。  正面の扉の向こうが、審問の場なのだろう。 「エマ。私たちはこちらへ」 「はい」  ルシアンに促され、エマはナタリナに小さく頷いた。  そこでいったん別れを告げると、控え室へと足を踏み入れた。  部屋は簡素な造りながら、落ち着いて過ごせるよう配慮されている。壁際には長椅子やソファーが並び、低い卓には水差しが置かれていた。装飾は控えめだが、使われている調度品はいずれも一級品で、王宮に相応しいしつらえだ。  そして、奥にある扉の前には、二人の騎士が立っていた。その扉が、審問の場に繋がっているのだ。 「聖樹様。デイモンド伯。王太子殿下より召喚があるまで、ここでお待ちください」  エマが頷くと、パトリックは退出せず入り口近くに控えた。送迎役として、エマの近くで待機してくれるのだ。 (良かった。パトリックがいるから、安心できる)  ルシアンが側にいてくれるのは心強いけど、見知った顔が増えるだけで安心感が違う。 「エマ。座りましょう」 「はい」
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