「実は、先ほど報告があったのですが、ワイール伯爵の館に、王太子の補佐官が訪れたそうです」 「補佐官が? まだ伝令は出していないのだろう?」 「はい。第二王子がワイール領に潜伏しているのではないかと、調査に来られたそうです」 「王太子の補佐官ならば、この上ない適任だ。しかし、本物の補佐官かどうか確認しなければならない」 「それでしたら、聖樹様のメイドか護衛騎士に面通しをすれば問題ないかと。補佐官殿は、三日前まで聖樹様の公務に同行していたと仰っていました」 「そうだったのか。ならば、メイドの一人に頼もう。ニコラは、ここの護衛をしてもらわねばならぬ」 「かしこまりました。王太子殿下と、補佐官殿に文をしたためます」 「お前に任せる。確認は不要だ」 「御意」 ノエルは頭を下げると、すぐさま一階の書斎へ向かう。 本来なら、ルシアンが中身をあらためた後に使者を出すが、今はそんな余裕がなかった。 両腕に抱えたエマから、ほのかに甘い香りが漂ってくる。鎮静剤を飲ませ、エマも半分意識を失っているが、火照った躰はそのままだ。 「伯爵様。準備が整いました!」 「ああ。シーシ、お前には使いを頼みたい。詳細はノエルに聞いてくれ」 「はいっ」 「さあ、エマ様、伯爵様。こちらへ」 スースがルシアンたちを脱衣所に案内する。 簡易な長椅子があり、ルシアンは外套に包んだままのエマを、そっと横たわらせた。 「お手伝いいたします」 「エマには触れるな。私が介抱する」 「はい」 ルシアンはスースの手を借りて、腰から剣を外し、ブーツを脱いだ。ジャケットとベストを脱いだ。 着替えをしている間に、シーシがトレイに杯を載せて運んできた。 「伯爵様。ノエル殿から、こちらを召し上がるようにと言伝がありました」 「ああ、そうだったな。助かった」 ルシアンは礼を言って、杯の中身を飲み干す。
Read More