ナタリナが十五歳になる年、幼いエマと初めて出会った。 代々騎士の家系であるケイル男爵家に生まれ、男兄弟に囲まれて育ったせいか、ナタリナには結婚願望がなかった。 次々とやってくる縁談話にうんざりしていたナタリナの元へ『幼い聖樹の侍女にならないか』という話が舞い込んだ。その『聖樹』が平民の生まれであり、男子であることを知ったナタリナは、誰も侍女になりたがらないのだろうと思い、弟の世話をするくらいの気持ちで、神殿に入った。 貴族生まれの聖樹が多い中、平民の、しかも男の『聖樹』は、他の『聖樹』達から歓迎されておらず、ナタリナを前にしたエマは、心細そうにしていた。 歳は五つと聞いていたが、ナタリナの生意気な弟とは全く違い、女の子のように可愛らしい。 光に輝く金髪と、煌めくような黄金色の瞳。まるで天使のようで、ナタリナはうっとりと見惚れたものだ。 「……ぼくの、じじょさんですか?」 侍女が何なのかさえ分かっていない顔だ。けれど、ナタリナを窺う瞳が、期待に満ちているのを感じた。 「はい。エマヌエーレ様。このナタリナが、侍女としてお仕えいたします」 「……ぼくと、いっしょにいてくれるの?」 「もちろんです。ずっと、エマヌエーレ様のお側にいます」 「よるも? かえったりしない?」 「ええ。朝も夜も、ずっと一緒ですよ」 ナタリナが優しく答えると、エマの目が輝いた。 トコトコとナタリナの側にきて、ドレスの裾をぎゅっと握る。 「ぼくも、ナタリナといっしょにいるっ」 掴んだ裾を懸命に握りしめる姿に、胸を締めつけられた。 エマは、両親から無理やり引き離され、神殿に入れられたと聞いている。その上、他の『聖樹』からは、のけ者にされているのだ。 ナタリナはその境遇を哀れに思い、同時に、愛らしいエマの側にいられる自分を、幸せだと思った。 (私が、エマヌエーレ様をお守りしなくては!) 使命感に燃えたナタリナは、固く心に誓った。 幼くして家族と生き別れになったエマのために、誠心誠意尽
Huling Na-update : 2025-06-12 Magbasa pa