All Chapters of 神殿育ちの嫌われΩは、隣国の伯爵αに蕩ける愛を刻まれる: Chapter 51

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第50話 最高品質のサファイア

     それでも、ルシアンへの思慕を隠すことができなくて、エマは真っ赤な顔で俯いた。 「エマ」 「は、はいっ」 「この前案内してくれた紅薔薇(べにばら)離宮は、とても見事でした」  ルシアンが気を利かせて、話題を変えてくれる。  エマは赤い顔を気にしつつ、それに答えた。 「あ、はい! あの離宮は本当に素晴らしくて、何度訪れても、魅入ってしまいます」  エマも、紅薔薇離宮を初めて訪れたときは、感激した。  十四歳で王宮に来て、西殿(さいでん)で暮らしていた頃は、何かの折りに付けて、よく足を運んだものだ。  けど、レオナールの婚約者に選ばれ、琥珀の館に移ってからは、離れに軟禁されて自由に出歩くことができなくなった。  だから、先日久しぶりに訪れた紅薔薇離宮は、エマにとっても楽しい時間だったのだ。  ルシアンも紅薔薇離宮を気に入ったのか、感心したように話し出す。 「特に、宝石で造られた薔薇には驚きました。噂には聞いていましたが、あれほどの規模とは思いませんでしたから」 「はい。高名な建築家や芸術家の方々が、何年も掛けて作り上げた芸術品ですから」 「宝石は、すべてランダリエで採れた物を使っているのですか?」 「全部ではないですが、サファイアとルビーだけは、国内の鉱山で採れた物を使用しています」  エマは胸を張って答える。  ランダリエ王国の鉱山のサファイアとルビーは、高品質の原石が多く採掘され、高値で取引される。  オスティン帝国には、毎年一定量の鉱石と金を献上しているが、サファイア原石のランクは、最高、もしくは高級ランクの原石ばかりだった。  加工技術も発達している為、ランダリエの宝飾品は外国でも評価が高いのだ。 「それは素晴らしいですね。あのような最高品質のサファイアは、どこの鉱山でも採れるのですか?」 「いえ、限られた鉱山になります。最高品質となると……カースレーン領でしょうか。あ、ワイール領も最高品質のものが採れるのですが……」 「そちらは
last updateLast Updated : 2025-07-22
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