そう思った私は、頼綱《よりつな》の方を見上げて、「頼綱、あの……」 付けて?って言おうとしたけれど、頼綱と目が合った途端、何だか気恥ずかしくて言えなくなってしまった。 結果中途半端にモゴモゴしたら、頼綱が「せっかくだし。〝僕〟に付けさせてもらえるかい?」って察してくれた。 私は小さくうなずいて前を向いて。 何だか照れて頼綱の方を見られないの、何でだろ。 頼綱の方を見ないままにあえてまっすぐ鏡を見つめた私だけど、見えなくても頼綱が私の髪の毛を避ける気配や、耳に触れる微かな吐息がすぐそばで感じられて、それはそれで照れ臭くてたまらなくなった。 いっそのこと、とギュッと目を閉じてやり過ごそうとしたけれど、それだと余計に感性が研ぎ澄まされる気がして慌てて目を開けて。 ふと視線を転じたと同時、目の前に置かれた鏡越しに頼綱と目が合ってしまってドキッとさせられる。「花々里《かがり》、そんな色っぽい顔しないで? ――キスしたくなる」 イヤリングを耳に付けてくれながら、頼綱が吐息まじりに私にしか聞こえないぐらいの小声、耳元でそうささやいてきて。 私は思わず耳を押さえて頼綱を振り返った。「ほら、出来た。――すごく似合ってる」 頼綱《よりつな》はそんな私の視線をクスッと笑ってかわすと、鏡を指さして「ご覧?」とうながすの。 私は目端が潤むのを感じながら、何とか鏡を見て。 頼綱が選んでくれたイヤリングが耳元で小さく揺れているのを目にして、じんわりと心が温かくなった。「指輪が仕上がるまでの間は、毎日これを付けていてくれるかい?」 頼綱がそう言って、私の髪の毛をそっと撫でて、ついでのように微かに耳朶《じだ》にも掠《かす》めるように触れながら問うてくる。 私はその感触に反応しそうになった身体を戒めるようにギュッと力を入れて踏ん張ると、それでも「ん……」と喘ぎ声だか返事だか分からない吐息を落とした。 私の返事《その声》を受けた頼綱が
Terakhir Diperbarui : 2025-08-12 Baca selengkapnya