予定日を5日ほど過ぎた、快晴予報の朝。 その頃にはさすがに仕事も産休に入っていて、家でのんびり過ごさせてもらっていたのだけれど、私ってば夏の暑さにもお腹の圧迫にも負けず、食い意地が元気に健在で。 食べ悪阻《つわり》こそ妊娠中期の半ば頃には落ち着いたけれど、食欲は衰えなかったから我ながら凄いって思った。 結果、太り過ぎないよう毎日のウォーキングが日課になって。 最近では夏の射るような日差しを避けて、早朝にお散歩するようにしていたの。 薄暗い日の出前とは言え、歩けばそれなりに汗をかいて。 それを流したくてシャワーを浴びるために服を脱いだら下着を薄らと汚す〝おしるし〟に気が付いた。 「わわわ、ついに!?」って思いながらも、冷静にシャワーを浴びて。 髪をタオルドライしながら頼綱《よりつな》に、「おしるしが来たからそろそろかも知れない」って話したの。 私がそう言った途端、ソワソワしながら「何かあったらすぐに連絡するんだよっ? いいね!? 分かったね!?」って、目に見えて狼狽《うろた》える頼綱に、いつも仕事で赤ちゃんを取り上げていても、いざ我が子のこととなるとただの心配性のお父さんになっちゃうんだなぁって可笑しくなった。 「そんなに心配しなくても大丈夫だよ?」 ってクスクス笑いながら言ったら、 「俺が心配してるのは……子供のことももちろんだけど、1番は出産を控えた花々里《かがり》のことだからね?」 って眉根を寄せられた。 こんな時まで私をドキドキさせてくれるとかっ。 うちの旦那様は溺愛が過ぎて困ります! そう思いつつも照れながら「ありがとう」って言おうとしたら、頼綱《よりつな》が「今夜の当直は杉本先生だけど、もし日付がズレたらその限りではないと言うのが気になって仕方がないんだよ」とつぶやいて。 「えっ!? ちょっと待って、そっちなの!?」 1番に心配しているって言ってくれたから、私の身体のことかと思いきや、「それは言うまでもないことだろう?」らしい。 頼綱としては、私が臨月に入った辺りから、お産は院長先生や浅田先生には任せたくないという思いが強くなっていたみたいで。 「杉本先生が当直じゃない日にキミが産気づいたら……その時は誰がなんと言おうと僕が取り上げる。それだけは了承しておいておくれね
Last Updated : 2025-08-26 Read more