Semua Bab そろそろ喰ってもいい頃だよな?〜出会ったばかりの人に嫁ぐとか有り得ません! 謹んでお断り申し上げます!〜: Bab 131 - Bab 140

144 Bab

30.私にぴったりの?⑥

「四つ葉の……クローバー?」 今も私の耳に揺れるクローバーデザインのイヤリングを思い出して、私はこんなところにもクローバー?ってびっくりした。 「重ねたら現れるデザインっていうのが、ペアって感じがして良いだろう?」 リングを手にした私の手ごと、頼綱《よりつな》の大きな手がそっと包み込んできて、その温かさにトクンッと心臓が跳ねた。 「頼綱……」 嬉しさが込み上げるあまり何て言っていいのか分からなくて、彼の名をポツンと口の端に乗せた私の耳に、頼綱が唇を寄せてささやいてくる。 「愛してるよ、花々里《かがり》。僕とずっと一緒にいてくれるかい?」 「ひゃっ」 私はその声に思わず首をすくめて真っ赤になって。 こっ、こっ、こっ、こんなところでそんなっ。 照れ過ぎるあまり固まってしまった私の手から、一旦シンプルなデザインの結婚指輪を取ると、頼綱《よりつな》がそれをリングケースに戻した。 そうして、代わりに望月《もちづき》デザインの婚約指輪をケースから取り出して、私の左手薬指にはめてくれて。 指輪のハマった私の指をそっとなぞりながら、「僕のはキミにつけて欲しいんだがね?」ってじっと見詰めてくるの。 店員さんが真正面に座っていらっしゃるのに頼綱ってばそんなの全然お構いなしみたいに言うから、私ひとりでドギマギしてしまって、余計に恥ずかしい。 「ねぇ花々里《かがり》。お願い……?」 頼綱のリングを手にしたまま躊躇う私に、おねだりするみたいに頼綱の甘い声音が耳朶を揺らす。 恥ずかしさで潤んだ目になりながら、まるで助けを求めるみたいにチラリと店員さんに視線を投げ掛けたら、ニコッと微笑まれた。 えっと。もしかして……宝石店ではこんなこと、よくあることなのかな? 私が思っているほど、実は大したことではないのかも? そう思った私は店員さんに小さくうなずくと、緊張でフルフル震える手で頼綱《よりつな》の左手薬指にリングを通す。 手が震えているからか、なかなかうまく彼の指――特に男性らしく節くれだった関節の辺り――を通過させられなくて四苦八苦してしまった。 そんな不器用な自分の手際の悪さが、照れくささに拍車を掛ける。 頼綱は、私のモタモタした動作でさえも愛しくて堪らないと言わんばかりの優しい目でじっと見つめてき
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-22
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31.私の本心、分かってますか?①

私が文学部を辞めて少しした頃、お母さんが無事退院。当初の予定通り御神本邸《みきもとてい》の一角を占める離れに移り住んできた。 同じ敷地内にいるんだし、何よりまだお母さん自身リハビリが必要な病み上がりの身体。 せめて身体が完全に回復するまでは母屋《おもや》で一緒に暮らそう?って頼綱《よりつな》と一緒に誘ったんだけど。 お母さんは「新婚さんを邪魔するなんて野暮なことはしたくないし、何より気ままにひとり暮らしを満喫したいのよ」って首を縦に振ってくれなかった。 そればかりか、私や頼綱や八千代さんご夫妻が寝起きしている母屋と、木々などを挟んで隔絶されているところが気楽でいいのって笑うの。 そんな環境でなかったら、きっとここには厄介にはならなかったと思う、と言って気丈に振る舞う姿は、やはり私を女手ひとつでここまで育て上げてくれたお母さんらしいなって思えて。 でもその頑張り屋さんなところが今回の入院にも繋がったわけで。 あれこれ考えて不安になった私が「でもっ」って言い募ったら、「そんな風に花々里《かがり》ちゃんがあんまり干渉するようなら、お母さんアパートを借りて出て行くわ」とか言うの。 それで結局、私はお母さんのことを気にしつつもそれ以上は口出し出来なくて一旦引き下がらざるを得なかった。 離れは、私たちがいつも出入りしている車庫近くの門とは別の門を有しているのもあって、近くにいるはずなのにお母さんの行動がほとんど見えないと言うのが実際のところ。 娘としては無理しがちなお母さんのことが心配でたまらないのに、お母さんは心配自体をして欲しくないというスタンスを貫くの。 頼綱《よりつな》は、「今までずっとひとりで花々里を育ててきた分、少し羽を伸ばされたいんじゃないかな?」って言うんだけど……そんなものなの? 「でも……」 何を言われてもどうしても納得がいかなくてうにゃうにゃと言い募る私に、「花々里《かがり》が幸せでいてくれると思えるから、お母さんもキミを突っぱねることが出来るんじゃないのかね?」って頭をポンポンと叩《はた》かれた。 「お母さん……私やっぱり……」 それでもどうしても不安が拭えなくて、数日後ひとりで離れに出向いて眉根を寄せた私を、お母さんはなだめるように撫でながら、「花々里ちゃんが今一番気にしないといけないのは編
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-23
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31.私の本心、分かってますか?②

結局のところ、私の試験が全ての鍵を握っていることに代わりはないんだって痛感させられた私は、頼綱《よりつな》が手配してくれた予備校で、がむしゃらに勉強を頑張った。 家でも勉強する私に、時折頼綱が差し入れてくれるご当地スイーツは、必ずお母さんの分も用意されていて。 それを「食べにこない?」ってチラつかせた時だけ、お母さんは「そんな美味しいの見せられたんじゃ敵わないなぁ」って苦笑しながら母屋《こっち》に遊びに来てくれた。 それが、私には頼綱がお母さんが私の様子を見にくる口実を作ってくれているように思えて。 だって私とお母さんの双方が、近くにいるけど遠く思えるお互いのことを気にしているって言う状態になる前は、頼綱、こんなにお取り寄せスイーツなんてしなかったんだもの。 *** 「花々里《かがり》、編入試験合格おめでとう」 幼馴染みの小町《こまち》ちゃんが、私が在籍していた文学部の3年生に進級した春、約1年の猛勉強の末、無事編入試験に合格して頼綱《よりつな》の母校である夏ヶ丘医科大学に入り直した私は、家で八千代さんと頼綱とお母さんに盛大なお祝いをしてもらいました。 私、結局夏が丘大の文学部には1年の終わりまで在籍して、その年に取れる単位はみんな取得してから2年生になるタイミングで退学したの。 医科大の看護学科と文学部では学部が違いすぎて認められる単位数がすごく少なかったけれど、そこはもう4年間を費やす覚悟で1年生から臨むことに頼綱も了承してくれて……。 何より助産師は看護師の国家資格と、助産師の国家資格の両方を取得しなければいけないから、思ったより大変で、4年間でそれら2つに合格するのも至難の業なのだと知ったから。 先を考えると物凄く不安だけれど、ひとまず第一関門突破ということで、編入試験合格の知らせに舞い上がる気持ちの覚めやらぬまま、私はここ――頼綱《よりつな》の寝室――にいます。 「――花々里《かがり》。やっと……だね」 私の編入試験が無事に終わるまでは私にキス以上のことはしないと決めていたらしい頼綱《よりつな》だけど……。 「やっと、って……あ、あのっ、えっと……どう言う……?」 「何を惚《とぼ》けたことを。無事試験に合格できたんだ。とりあえず諸々解禁で構わないだろう? それに――」 スッと重ね付け
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-24
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31.私の本心、分かってますか?③

「こ、子どっ……!?」 頼綱《よりつな》の言動全てに反応するみたいに身体がぶわりと熱くなって、私はそれを誤魔化すみたいにコクコクとうなずいた。 「……やっぱり怖い?」 聞かれて、そんなの当たり前だよぅ、とギュッと頼綱にしがみついたら、 「そうか。――けど、ごめんね。さすがにもうこれ以上は待てそうにない。俺が全部リードするし、出来るだけ優しくするから……。だからお願い。花々里《かがり》の全てを僕に奪わせて?」 どこか懇願《こんがん》するみたいな口調で頼綱に請われて、私はそれだけで恥ずかしさに消え入りそうになる。 彼のプロポーズを受けた後、一向に手を出そうとしてくれない頼綱に、女性として見られていない気がして不安になったことがある。 結局は私が合格するまでは、という頼綱なりの願掛けだと分かったんだけど――。 いざこんな風に障害が取り払われて、伴侶として全力で求められると、どうしていいか分からなくなるとか……我ながら情けないっ。 恐る恐る頼綱を見上げて、往生際《おうじょうぎわ》悪く「ホントに……するの?」と躊躇いがちに尋ねたら、頼綱が一瞬驚いたように瞳を見開いた。 「さっきからそう打診しているつもりだったんだがね。――もしかして通じてなかったの?」 クスッと笑われて、私はほんの少し肩の力が抜ける。 「だって……改めてそんな風に言われたらっ。すごくすごく恥ずかしくてたまらなかったんだものっ! わ、笑うことないじゃないっ」 私だけガチガチに緊張しているみたいなのが悔しくて、笑われてしまったことを拗ねて見せたら、頼綱《よりつな》に「揶揄《からか》ったつもりじゃなかったんだがね。つい浮かれ過ぎていたみたいだ。――もしそう取れたんだとしたら、すまない」って素直に謝られた。 「俺は至極真剣に心の底から花々里《かがり》のことを欲しているんだけど……どうやったらそれを伝えられるかな?」 そう言ってしばし考え込むような間があって。 不意に耳元へ甘くささやくような言葉が落ちてくる。 「そうだ。花々里《かがり》。最後までちゃんと出来たら……お祝いに鰻を食べに行かないか?」 言われて、私は「鰻!?」と目をキラキラさせて。 元より合格祝いはそれだと、指輪を見に行った夜、車内で約束したことを頼綱が忘れている
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-25
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32.Epilogue①

「花々里《かがり》、卒業おめでとう」 卒業式で着付けてもらった袴姿《はかますがた》のまま頼綱《よりつな》にギュッと抱きしめられて、これまでの苦労が走馬灯のように頭の中を駆け巡った私は、その感情に押し流されてその場に崩折《くずお》れてしまいそうになる。 それを頼綱にしがみついて必死に堪えて。 小町《こまち》ちゃんたち同級生から遅れること丸2年。 みんなが文学部の3年生になる頃、私はようやく大学の編入試験に合格して、頼綱の母校である夏ヶ丘医科大学に1年生として入り直した。 その日の夜に頼綱と初めて結ばれて……とても幸せな一夜を過ごして。以来夜は彼と同じ部屋で眠っていて――。 ってそのことは今は関係なかったっ! と、とにかくっ。 あの日から4年間。 私は必死に勉強して最短ルートで看護師と助産師の国家資格の両方を、一発合格で取得したんだけど。 頼綱みたいに、やらなくても勉強が出来ると言うタイプではなかった私は、在学中は頼綱先生にかなりスパルタで勉強をみてもらったの。 *** 私が医科大学に編入した年、頼綱も29歳で後期研修を終え、晴れて彼の父親が運営している『御神本《みきもと》レディースクリニック』の産婦人科医になって。 立場的には副院長先生。 もちろん産科も健在のまま、お義父《とう》さまと協力しながら対応中。 医師が院長先生のワンマン体制で切り盛りされていた頃に比べると、頼綱が加わったことで大分院長先生の負担が減ったみたい。 でも――。 逆に頼綱《よ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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32.Epilogue②

旧態依然《きゅうたいいぜん》のままでは中にいる人間が潰れてしまう、自分は花々里《つま》と、両親《あなたたち》のような結末を迎える気はないのだと頼綱が説得を続けた結果、お義父《とう》さまも彼の言葉に耳を傾けて下さった。 結果、御神本《みきもと》レディースクリニックは、私が入る頃には医師が院長先生、頼綱、浅田先生、そして唯一の女性産科医である杉本先生の4人体制に。 助産師が松井さん、小野田さん、山本さん、梅田さん、後藤さん、私の6人に。 看護師が八尾さん、水木さん、下田さん、渡辺さん、竹本さん、野々村さん、岩村さん、山根さんの8人と、医療事務で受付担当の丸井さん、長谷川さんの2人という、そこそこのスタッフ数になっていた。 このメンバーは正規雇用の職員で、彼らとは別にパートや臨時職員といった雇用形態でサポートをしてくださる面々が他に数名いて。 全員でシフトを組んで、ひとりだけに負担がかかるようなことにはならないようになっていた。 そんなこんなで、御神本《みきもと》レディースクリニックは、人件費こそ大幅に増えたことは否めないけれど、スタッフ1人あたりの負担が大きく削減されてすごく働きやすい職場になって。 結果、スタッフに心身ともにゆとりが出来て、サービスの質が大幅にが向上。 もともと悪くなかった評判がさらに良くなって、科の性質上女性医師がいるというのも大きかったのか、患者数もかなり増えた御神本《みきもと》レディースクリニックは、産科を有した個人病院としては、この辺りでは一目置かれる病院になった。 お陰様で頼綱《よりつな》と私の結婚生活も、順風満帆。 でも――。 外部からスタッフをあんなに沢山入れるのなら、私、別に助産師にならなくてもよかったんじゃない?とか思ったりもして。 みんなからチヤホヤと手塩に掛けてもらった割に、あまり頼綱《よりつな》の助けになれていない気がして、実はちょっぴり意気消沈モード。 そんなことを思ってしょげていたのを頼綱が察してくれたのかどうかは分からない。 ある日用があって副院長室へ行ったら、まるで話のついでみたいに頼綱が私を呼び止めた。 「ねぇ花々里《かがり》。キミがどう思っているかは分からないけれど、今こうしてキミと肩を並べて仕事ができること、私は心の底から誇りに思っているからね?
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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32.Epilogue③

予期せぬその言葉に、「え?」と声を漏らして彼を見上げたら、含みのある笑顔を向けられる。 どうやら、私が思わず卑屈になってしまうくらい人員を増やしてくれたのには、病院業務が円滑に進むと言うメリットとともに、何やら頼綱《よりつな》なりの目論見があるみたいです! *** 私が御神本《みきもと》レディースクリニックに勤め始めて半年ちょっとが経過した頃、入籍から考えると本当に数年越しで今更なんだけど……結婚式をしようという話になった。 というのも――。 「半年経てば花々里《かがり》も有給休暇が取れるようになるだろう? それを使って、新婚旅行も兼ねて、海外挙式をしたいなと考えているんだけど、どうだろう?」 私、正直学費とかで頼綱《よりつな》にすごく負担をかけたという自覚があって、少し落ち着いたら頼綱とふたり、花婿花嫁姿の写真が撮れたらいいなぁくらいに考えていた。 だから頼綱からそう打診された時は本当に驚いて、 「い、今更じゃ……ない……かな」 本当はすっごくすっごく嬉しかったくせに、ソワソワしながら心にもないことを言ってしまった。 途端、 「色々後手後手になってしまったのは自覚してるし……キミには本当申し訳なく思っているけれど、僕の可愛い花々里《かがり》の花嫁衣装を見られないとか……論外なんだけど?」 と頼綱にムスッとされる。 指輪も、仕事中はともかくプライベートな時には何年もお互いの左手薬指にあって。あるのが当たり前みたいになってしまっているけれど……。 それでも私、やっぱりバージンロードを歩きたいっ! そう思って頼綱を見上げながら「私も……大好きな頼綱の花婿姿が見たいです」と言ってみたら、少し照れた顔をした頼綱に、「じゃあ決まりだな」って抱きしめられた。 *** 場所はベタかな?と思いながらもハワイにして。 ゲストを親族と、ごくごく親しい人だけに絞る形で小ぢんまりとした式を執り行うことにしたの。 優秀なスタッフが沢山いてくれるから恐らく問題はないはずとはいえ、院長・副院長共に不在になると考えたらみんなにそんなに負担は掛けられない。 そう判断して新婚旅行も兼ねたごくごくシンプルな結婚式にしたんだけど。 そのあと旅行になんて行けない状況になってしまうことを思うと正解だった!……
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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32.Epilogue④

代わりに前撮りで写真だけ、ロイヤルブルーのカラードレスと、和装の写真を撮りました。 私がカラードレスを着た時に、頼綱《よりつな》が着た黒いタキシード姿もかっこよかったけれど、普段からスーツ姿の多い頼綱だったから、私はそれよりも見慣れない和装にときめいて。 頼綱の黒五つ紋付き羽織袴《はおりはかま》姿は本当にかっこよくて、私、正直洋装のときより数倍心臓がバクバクしましたっ! 頼綱には私のカラードレス姿も白無垢《しろむく》姿も色打掛姿も好評で、前撮りして良かったね、って2人で話して。 挙式ともども、すっごくすっごく幸せな思い出を頼綱からたくさんたくさんもらいました! 私たち、色々なことが世間一般の恋人たちとは順番がバラバラになってしまったけれど。 大好きな頼綱と結婚できて、私は本当に幸せです!! *** 「あのね、頼綱《よりつな》。世の中には何にも食べられなくなる悪阻《つわり》もあるんだよ? 知ってた?」 口の中で蜂蜜100%で作られたという飴玉を転がしながら頼綱を見つめたら、「もちろん仕事柄知っているよ? けど花々里《かがり》のはどうやら違いそうだね?」って飴でポッコリ膨らんだ頬を優しく撫でられる。 海外挙式から帰ってきてしばらくして、私は自分が妊娠しているかも?と気が付いた。 妊娠検査薬で陽性を確認して……ソワソワしながらうちの産科の紅一点、杉本先生の診察を受けたらビンゴで。 「きっと、時期的に新婚旅行で出来た赤ちゃんだね」って頼綱と話したの。 私の在学中は子供が出来ないように気を付けていたけれど、私が社会に出てからはそこまで避妊を徹底していなくて。 スタッフを増員していることもあって、気持ちにゆとりのあった私たちは、そろそろ赤ちゃんが来てくれてもいいかな?って何となく思うようになっていた。 心身ともに解放されたあのハワイでの数日間は特に……その……ごにょごにょ。 だから、妊娠が分かった時はすごくすごく嬉しかった! ……んだけどっ! 「だからって……。何で私の悪阻《つわり》、いつもいつも食べてないとダメなのぉぉぉぉ!?」 飴の甘さを舌の上で転がしながら言ったら、「食べられなくなって点滴しなきゃいけなくなるより、俺としては花々里《かがり》らしいその悪阻《つわり》の方がしっくりきて安心なんだがね」っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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32.Epilogue⑤

お腹の中、食い意地の虫とちっちゃなちっちゃな赤ちゃんが、ミルクを酌み交わしながらおしゃぶり片手にどんちゃん騒ぎをしているのを想像してブルっと身震いしたら、頼綱《よりつな》が「何を想像したの?」って聞いてきて。 涙目で「私のお腹の中で腹ペコ虫と胎児がミルクで酒盛りしてるのっ」って訴えたら、変な顔をされてしまった。 「花々里《かがり》が飲まなきゃ中の住人も酒盛りは出来ないと思うよ? ――っていうか、それ。そもそもミルクなの、酒なの? ねぇ花々里。まさかと思うけど、僕に内緒で飲酒とかしてないよね?」 突然私が支離滅裂なことを言ったりしたから、もしかして酔ってる?って疑われてしまったのかも? 「飲んでなんっ、……んん!」 飲んでなんかいないよ?って言おうとしたら、言葉半ばで頼綱に深く口付けられて。 まるでお酒をたしなんだりしていないことを確認するみたいに口の中を探られた上、「……甘い」とつぶやかれて「よしよし」と頭を撫でられた。 よ、頼綱の馬鹿っ。イメージの話だったのに、なに真に受けちゃってんのよ! びっくりしたじゃないっ。 照れ臭さにそわつく私をよそに、頼綱はケロリとした顔をして、「僕としてはご馳走出来る食いしん坊さんが増えるの、今から楽しみで堪らないんだけどね」って心底嬉しそうに私のお腹に触れてくるの。 頼綱めっ。 この子が育ち盛りになった時、エンゲル係数が跳ね上がってピィーピィー泣く羽目になっても知らないんだからね!? 村陰家《むらかげけ》直伝《じきでん》の食いしん坊遺伝子、舐めんなよーっ!? *** 「食事は八千代さんにも協力してもらって、なるべく少量を小分けに摂るようにしてるだろう?」 頼綱《よりつな》の言葉にうんうん、とうなずく。 途端込み上げてきた何となくしょっぱい生唾に、口元を押さえて立ち止まる。 うー、まずい。 なんかまた気持ち悪くなってきた……。 「頼綱……。飴玉……」 言ったら、スーツのポケットから取り出した飴を、「ゆっくりお食べ」って包みをほどいてそっと口に入れてくれる。 飴。自分で持っていたら、つい高速でコロコロコロコロ転がして次々に食べてしまうから、一緒にいる時は頼綱に管理してもらっているんだけど。 「あ、この味。懐かしいっ」 出会っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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32.Epilogue⑥

「あとは――野菜スティックとかモグモグするのもありかも?」 何の気無しに言ったら、頼綱《よりつな》が瞳を見開いて。 「それはまた、肉食の花々里《かがり》にしては珍しくウサギみたいなことを言うね」 って笑うの。 に、肉食って! 確かにお肉もお魚も大好きだけど、私、お野菜も好きなのにっ。 「ウサギでも何でも構わないのよぅ。なるべく太りにくい食べ物をムシャムシャしたいのっ」 力説して眉根を寄せる私に、「〝Auberge《オーベルジュ》 Vie de lapin《ヴィ・ドゥ・ラパン》〟に連れて行った時、キミが兎《ウサギ》より鰻《ウナギ》がいいってゴネたのを思い出すよ」って頼綱が肩を震わせて。 |羽の生えたうさぎ《ル・ラパン・エレ》というホテルでデートした時の話だ。 「べっ、別にゴネたりなんかしてないよ?」 唇をとんがらせて言ったら、「そうだっけね?」と意味深に視線を流される。 あの日、ホテル内にあったお洒落なお店の前で、「Vie de lapin《ヴィ・ドゥ・ラパン》は、フランス語でウサギ生活という意味だよ」と教えてくれた頼綱《よりつな》に、ウサギからウナギを連想した私が、「鰻《うなぎ》は何て言うの?」って聞いたら「anguille《アンギーユ》」だと教えてくれて。 うん、私、その時、「ウナギ生活《ヴィ・ドゥ・アンギーユ》!」って言ったんだよね。 因みにAuberge《オーベルジュ》はレストランっていう意味だと解説された私は、ウサギのイメージが強過ぎて「野菜料理ばかりは嫌だよ?」って心の中で思ったの。 けど、今の口ぶりからすると、頼綱は全部お見通しだったのかも? くぅ〜。 記憶力良すぎも、察しの良すぎも、やっぱり何だか腹立たしいですっ! *** 妊婦健診は、最初に妊娠を確認して頂いたとき同様、うちの病院の紅一点、杉本先生にお願いしています。 やっぱり頼綱《よりつな》にっていうのはいくら夫とはいえ――いや、夫であるがゆえに?――恥ずかしかったし、ましてやお義父《とう》さまや、同僚の男性医師に、なんていうのは論外でっ。 お腹の上から経腹《けいふく》エコーが掛けられるようになってからならまだしも、初期の経膣《けいちつ》エコーの時はさすがにちょっと、と思ってしまったの。 「――それでい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-26
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