海綿の柔らかな感触は、腕の次は当然二の足、とばかりに肌蹴たままの足に移ってきた。 つま先から撫で上げるように膝、内もも……と泡を塗りたくられて、身体に力が入らなくなってしまう。「よ、りつなっ、ダメ……っ」 それでも何とかそうつぶやいたら「ね? 僕が言った通り、気持ち良かっただろう?」っていつもよりほんの少し掠れた、どこか艶っぽい声で問いかけられた。「は、いっ。海綿の凄さはじゅーぶん分かった……ので、もう……」 離して欲しいとそっと足に伸ばされたままの頼綱(よりつな)の手に手のひらを重ねたら、「よろしい。じゃあ俺は泡を流して少し温まってから上がるから、花々里(かがり)も濡れた浴衣を脱いで風呂に入るといい」 そう言って私の身体を起こして、自分が座っていた椅子を譲って座らせてくれた。 一人称もいつもの「俺」に戻っていて、何故だか少しホッとする。 私はまだ自分の身体に残る、何だかよく分からない熱のようなものが冷めきらなくて、椅子の上にうずくまるようにして顔を伏せた。「花々里、大丈夫? 気分悪い?」 それをそう解釈したのか、心配そうにすぐそばから頼綱にそう問いかけられて。 私は慌ててゆるゆると首を横に振る。 気分が悪いのとは少し違う。 何だかよく分からないけど……この感じはお腹が空いた、とか眠たい、とか……そういうのに似ている気がするの。 そうしてこれは――。「あのっ、あなたがそばにいると収まらない気がするので……離れてもらえると有難いですっ」 そう。そんな感じの……。変な感覚なの。「分かった」 でも私がそう言って頼綱を恨みがましく睨みあげた途端、何故か彼は嬉しそうに微かに笑って、案外やすやすと引き下がってくれた。 もう少しゴネら
Last Updated : 2025-06-11 Read more