「あ、あのっ、お、お漬け物のお話よ!? ……い、イイナ漬けっ。美味しいな? えへっ♪」 苦しい言い訳で逃れようとしたけれど 「かぁーがぁーりぃーちゃぁーん。そんな漬け物ないでしょ? さぁ、恋人すっ飛ばして婚約者……いや、もしかしてご主人!? とにかく私を差し置いてそんなことになっちゃった経緯っ! 詳しく聞かせなさいっ!」 誤魔化せるわけ、なかった……。 *** 「えー、それっていわゆる玉の輿じゃん? 何を躊躇う必要があるの?」 小町《こまち》ちゃんの粘り強さはスッポン並み。 日頃は春風駘蕩《しゅんぷうたいとう》とした雰囲気のくせに、気になることが見つかると、途端人が変わったようにスッポンモードに突入しちゃう。 幼い頃から彼女のことを知る私は、観念するしかないと思ったの。 根掘り葉掘り聞かれるままにアレコレ答えたら、あっけらかんとそんな風に言われてしまった。 「でっ、でもっ……私またあんなのは……」 「ストップ! ね、昔、花々里《かがり》ちゃんに美味しいものくれてたお兄さんと……その、えっと……」 「頼綱《よりつな》?」 「そう、その頼綱さんとやらは別に同一人物じゃないんでしょう?」 私が子供の頃、依存しきっていたお菓子のお兄さんと突然会えなくなって意気消沈して、あまつさえそれがトラウマになっていることを知っている小町ちゃんが、「その人と頼綱さんのことは別物として考えなきゃダメだと思うな」って言って。 「そ、それは……そうなんだけど……」
Last Updated : 2025-07-01 Read more