「あー、あの……寛道。ちょっと時間掛かりそうだから電話、一旦切るね。住所表示見つけたらすぐ連絡するっ」 そわそわしながら言ったら、少し不機嫌そうな声で『ホントにすぐ連絡してくるんだろうな?』って聞かれた。 その声に思わずムッとして、「幼なじみを信じなさいよね!?」って言ったら、『掛け直してこない前科持ちに信用があると思うな』とか。 た、確かにっ。 余りにごもっともな言い分に言葉に詰まった私に、溜め息まじりに『待ってる』って言われて、一方的に通話を切られてしまった。 何なのよ、もう! 思いながらもとりあえず玄関を探そうって気を取り直した。 〝ここがどこなのか問題〟は、明日からの生活にも掛かってくることだもの。 しっかりしなきゃ。*** ショッピングモールさながらに、屋内で迷子になってしまうかと懸念したけれど、広いといってもまぁ一個人の邸宅。 ぐるぐる歩いていたらちゃんと玄関に出られてホッとする。 でも、玄関に靴が一足も出ていないってどういうことですか!? とっても広い土間なのに、サンダルはおろか、靴がひとつも置いてないとか、何ごとなの? 掃除中か何かですか? うちのアパートの玄関にはお母さんと私の靴が小さなシューズラックに所狭しと並べてあって、それでも収まり切らない靴や、割とよく履く靴なんかがいつでも数足土間にもあふれてたのに。 あ。そういえばこの前テレビで玄関横にシューズクロークとかいう、「靴だけのための空間」がある家のことやってたっけ。 まさか、ここも? そう思ってみれば、玄関横に扉。 多分それだ。 廊下にもちゃんとそちら側に向けた出入り口があって、そこからも土間に降りて玄関の方へ行けるみたい。 何て贅沢な空間の使い方! 思いながら恐る恐る玄関横のシューズクロークと思しき側の引き戸を開けて、そちらのスペースを覗くと、ビ
Last Updated : 2025-06-21 Read more