次に、アーサーは、やれやれと首を振りながら、書庫のさらに高い場所を指さした。「そして、あの上でふんぞり返っておる、妙に偉そうな骸骨が見えるかの?あれは、自分を神だと信じておる、元・高名な聖職者の男じゃな。誰彼構わず、『罪を悔い改めよ』だの、『我を崇めよ』だのと、有り難い説教の演説を垂れておるが、御覧の通り、誰も聞いてはおらん。全く、哀れなことよのぅ」アーサーの指さす方を見れば、確かに遥か高い本棚の天辺に一体の骸骨が腕を大きく広げるという、大仰なポーズで鎮座していた。「……大書庫で、演説、ですか」その奇妙で場違いな光景に、アイリスはただそう呟くことしかできない。知識を求める場所であるはずの書庫で、一方的な演説が繰り広げられているという事実が奇妙さに、さらに拍車をかけていた。アイリスのそんな困惑を知ってか知らずか、骸骨は、今まさに、その説教のクライマックスを迎えているようだった。『聞け、迷える子羊たちよ!汝、その罪を深く悔い改めよ!さすれば、道は開かれ、汝らの魂は、この我によって、必ずや救われるであろう!さあ、祈るのです!この、唯一無二の、真なる神に向かって!』よく通る、しかし誰の心にも届いていない骸骨の演説だけが、静かなはずの書庫に虚しく響き渡っていた。誰にも届かぬ独りよがりな演説を、ジェームズは心底うんざりしたとでもいうように、骸骨の顎を軽く指で支えながら眺めていた。「全く、日課とはいえ、よくもまあ、あれほど中身のない言葉を、毎日毎日、大声で叫べるものだな……」「本当に。わたくし、あの方のせいで何度読書の邪魔をされたことか……」リリーもまた、その半透明の顔を、はっきりと不快そうに歪めている。「あ、あの……あのまま、演説を続けさせておいても、よろしいのでしょうか……?」アイリスが心配そうにそう尋ねると、
Terakhir Diperbarui : 2025-06-24 Baca selengkapnya