「ミカエラ、一緒に夜会へ行かないか?」 執務室で2人になったタイミングでアイゼルはミカエラを誘った。 ミカエラは自分用の執務机の前に座り、意外そうな表情を浮かべて自分の前に立つ婚約者を見上げる。「えっ? いいのですか? わたくしたちは冷たい関係でいなければならないのに?」「ふふ。冷たい関係だからだよ。私と君は、婚約者として相応しい間柄にならないといけないからね」 アイゼルは悪い笑みを浮かべてた。 その表情があまりに魅力的だったので、ミカエラは頬を赤く染めた。 ミカエラは両手を膝のあたりでモジモジさせながら言う。「でも……仲が良く見えすぎるのは、よくないのでは?」 オレンジ色の光が笑うようにチカチカと彼女の周りに煌めく。 それをアイゼルは満足そうに眺めた。 そして自分の執務机の後ろ側に隠すように置いてあった大きな箱をミカエラの前に置いた。「それは大丈夫。ということで、ドレスのプレゼントです」「まぁ」 大きなリボンのかかった大きな箱を見て驚くミカエラに、アイゼルは悪戯な笑みを浮かべて促す。「開けてご覧」「え? あ、はい」 ミカエラが箱を開けると、そこには黒をベースにして赤をアクセントカラーに使ったドレスが入っていた。「これは……」「ふふ。君の色だよ」 確かに黒と赤を使ったデザインは、ミカエラの色だ。「でもこの国で黒は……」 黒を着ないというわけではないが、喪に服する以外の時期の黒は、女性にとって公の席において忌み避けるような色であるため、夜会のような華やかな席では黒を大胆に使ったドレスは好まれない。 アイゼルが悪戯っぽく笑って言う。「だからさ。この色のドレスを贈って君を夜会に連れていけば、仲がよすぎるとは思われないよ」 ミカエラは少しだけ呆気にとられてポカンとしたが、すぐに表情を変えて悪戯っぽく返す。「あら。わたくしの色は、仲の悪い証拠ですか?」 ミカエラの様子を見て噴き出したアイゼルだったが、すぐに色っぽい笑みを浮かべた。 そしてミカエラの耳元で囁くように言う。「ふふ。私は好きな色だよ」 ミカエラは茹でられたように赤くなった。 青い光とオレンジ色の光がダンスをするように2人の回りでキラキラと瞬いた。 数日後。 2人の姿は王宮の大広間にあった。 王城の大広間で開催される夜会は、そう何回もない。 今回
Last Updated : 2025-08-26 Read more