アイゼルは話し始めた。「この王国では常に陰謀がうごめいている。私はミカエラ、君を愛している。だから君の安全が気になっていた」(えっ⁉ いまアイゼルさまは、わたくしのことを愛しているとおっしゃった? わたしくを愛していると? えっ? えーーーーーーっ⁉) サラッと愛を告げたアイゼルは、動揺するミカエラを置いてきぼりにして先を続けた。「怪しい動きがあることは随分前から掴んでいたけれど、まさか副神官まで一枚噛んでいるとは思っていなかったよ。夜会で君と別れたあと、私は陰謀に関する報告を受けていた。浮気をしていたわけじゃないよ? 信じて?」 澄んだ青い瞳に覗き込まれたミカエラは、ドキドキする胸の鼓動に気を取られていて、何を聞かれているか分からないままコクリと頷いた。 アイゼルは満足げにニコッと笑うと、先を続けた。「報告を受けている間、信頼できる護衛たちが君を守っているはずだった。だけど神殿が絡んでいたから、なかに裏切り者がいたんだ。信心深い者にとって副神官は信頼おける人物だからね。本人にも裏切っているという意識もなくて、処分に困っているよ」 アイゼルが苦笑するのに、ミカエラは「はぁ」と気の抜けた返事をした。「君が庭の端まで行ってしまうのも計算外だった。夜の庭は死角が多すぎる。今度じっくり、気を付けるべきことを教えてあげないといけないね」「あ……はい、お願いします」(あ、流し目が色っぽい……えっ、なにどういうこと?) ドギマギするミカエラの左手をとったアイゼルが、その手を自分の口元に引き寄せてそっと口付けた。(えっ……ええっ!) ソファの上で固まっているミカエラに、アイゼルは何事もなかったかのような涼しい顔で笑みを向けた。 青い光とオレンジ色の光が、ソファの周りをキラキラと煌めきながら回っている。「ねぇ? そろそろ見えないかな?」「えっ?」 アイゼルの視線に促されて光へと目を向けたミカエラは驚いた。 小さな頃に絵本で見たものが目に映ったからだ。「えっ⁉ 守護精霊さま?」 宙に浮く人形のようなものが、鈴が転がるような声で話す。『やっと見てくれた』 青い瞳に青い髪のラハットは、呆れたように言った。『やっと会えたね、ミカエラ』 オレンジの髪と瞳を持ったウィラは、嬉しそうに言うとオレンジ色の光を煌めかせた。
Last Updated : 2025-08-04 Read more