季節は慌ただしく移り変わっていき、ミカエラの置かれている状況も流されるようにどんどん変わっていく。(王妃教育は受けてきたけれど、いざその時が近付いて来たら役に立つかどうかが分からないなんてっ!) ミカエラは自分の過去の努力に疑問を持ちつつも、目の前に流れてきた役目を必死でこなしていた。 使用人たちは噂する。「王妃さまが静養に入られてから、国王さまも執務から遠ざかっているような」「それは王妃さまの側にいるためでしょう?」「意外でしたわ。国王陛下と王妃殿下の仲がそんなに良かったなんて」(何があったか知らない者たちにとっては、そう見えるわよね) 真実の一部を知っているミカエラにとっては複雑だ。「愛だわ、愛」「王族であっても愛は大切よね」「ええ、愛あればこそ」「国王陛下と王妃殿下ですら愛があというのに、うちの主人ときたら……」「分からないわよ? いざ貴女になにかあったら寄り添ってもらえるかも」「いざというときではなくて、いま寄り添って欲しいものだわ」 貴族たちもザワザワと騒めていてる。 それは愛についてだけではない。「王妃さまがご静養に入られたくらいで国王さままで半ば引退されてしまうというのでは国政が……」「ああ。王国にとっては良いことではない」「でもアイゼルさまがいらっしゃるではありませんか」「まだお若く未熟な上に、王位を譲り受けられるまでに時間がある」「春には戴冠されるのでしょう?」「でも春の前には冬がありますからね」 貴族たちが国政について騒めくのは、野心があるからだ。「アイゼルさまが国王になられるのは既定路線ではあるけれど。ミゼラルさまはどうなされるおつもりなのだろうか?」「公爵位を得られて王族から離れるのでは?」「それは時期尚早ではないかな? アイゼルさまには御子がおられないのだからな」「ああ、そうですね。王族が少なすぎるのは問題です。王位争いを避ける必要もありますし」「でしたら次の王太子はミゼラルさまということに?」 アイゼルがミカエラと結婚することが決まっていても、ミゼラルが王位を得る可能性が少しでもあるのなら貴族たちにとっては見逃せないチャンスがそこにはある。 王族でなくとも国で力を持つ方法は色々とあるのだ。「側妃さまの立場はどうなるのでしょうね?」「ミゼラルさまの母君であるマリアさまの
Last Updated : 2025-09-04 Read more