ミカエラが副神官たちにより攫われたことは秘密だ。 だから粛々と行われた処罰は、それと分からない形で行われていった。 当事者であるミカエラも、知ることが出来ることもあれば、知ることのないこともあった。(副神官の処罰が、あのような形で行われるとは) ミカエラはブルリと震えた。「ん? 寒いのかい? 今日はどちらかといえば暑いと思うが」 アイゼルはミカエラの肩へそっと手を回して自分の方へ引き寄せた。 誘拐の一件以来、ミカエラと秘密の共有に成功したアイゼルは彼女との時間を増やした。 表向きには【婚約者がいるにもかかわらず下半身の軽い王太子】を【罰するため】の【教育的な指導として婚約者と触れ合う時間を増やす】ということになっている。 だがその実情は普通の恋人たちがするようなデートと変わらない。 今日はそんな【懲罰的デート】の日である。 ミカエラとアイゼルの2人は王城の庭園を散歩していた。 ミカエラの後ろには白い日傘を差し出す侍女ルディアの姿もある。 彼らの周囲には護衛もしっかり配置されていた。 この国は陰謀に満ちている。 発覚した陰謀の全てを知り、その処分の行く末の全てを把握している者などいない。 それでも時は過ぎていき、王国の歴史は刻一刻と新しく刻まれていく。「ミカエラ? どうかしたの?」 美しい王子さまが彼女を覗き込む。「いえ、何でもありません」 笑顔でそう返事をしたミカエラ自身が、その言葉は嘘だと知っている。 真実を教えられた後も、ミカエラのなかには漠然とした不安があり、それは消えない。(わたくしは、どこへ流れていくのかしら?) その答えを知る者はない。
Last Updated : 2025-08-14 Read more