真希が正式に大和を養子として迎えてから、生活は一層充実し、心も以前に比べてずっと穏やかになっていた。しかし、不思議なことに、このところずっと桔平の姿を見ていなかった。もう半月も経つというのに、まだ会議が終わっていないのだろうか?大和もよく彼のことを尋ねてきて、真希はどう答えてよいか困ってしまう。二人でベッドの縁に座り、窓の外の雪を眺めながら、自然と想いは同じ人物に向かっていた。真希は、彼に電話をかけようか、メッセージを送ろうかと何度も考えたが、なかなか適当な理由が見つからなかった。彼は自分の上司ではあるものの、業務上の接点はそれほど多くなかった。それに、大和の件ではすでに彼に大きな犠牲を強いてしまっている。これ以上は頼みづらかったし、そもそも特に用もなかった。桔平からも連絡はなく、まるで音信不通のように姿を消していた。気持ちを整理し直して、真希は何度も自分に言い聞かせた。あの人がしてくれたのはあくまでも大和のため。そこに感情なんてない。もう妄想するのはやめよう、と。大和はバイオリンの教室に通っているが、そろそろ幼稚園にも入る時期だった。教室の前で、大和はよく他の生徒がパパとママに迎えに来てもらうのを目にしていた。自分にはママしかいないから、どこか寂しそうにしていた。けれど、彼は一言もその気持ちを真希に打ち明けなかった。きっと彼なりに母を気遣って、負担をかけたくなかったのだろう。それでも、桔平は一度も姿を見せなかった。まるでこの世から消えてしまったかのようだった。真希も気にはなっていたが、会社の上司たちの話によると、彼はずっと海外出張中らしい。生活自体は安定していた。真希はこの穏やかな毎日に満足していた。ただひとつ気がかりだったのは、泰明が娘を連れてやってきて、なんと彼女の向かいのマンションに住み始めたことだった。まるで監視されているようで、居心地が悪かった。幸いにも、彼ら親子は以前のように積極的に接触してくることはなかった。ただ遠くから見守るようにしている。そんな中、真希がもっとも驚いたのは、一花の変化だった。以前とは打って変わって、彼女は素直になり、時折「ママ」と呼んで声をかけてくるようになった。真希はそれに返事をすることはなかったが、静かに彼女を見つめていた。どんなに過去があった
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