夜、私は街を歩いていた。あちこちにネオンが輝き、無数の灯りがとても美しかった。だが、そのどれも私のために灯っているものではなかった。バーの前で少し迷い、結局中に入った。お酒で気を紛らわせて、今日はよく眠りたかったからだ。ビールを何杯か続けて飲むうちに、頭がふらつき始めた。背の高い男が近づいてきて声をかけた。「明空さん?」聞き覚えのある声に、なんとか顔を上げた。「佐藤さん?」彼は佐藤一郎(さとう いちろう)。玉の親友だ。一緒に食事したこともあり、顔なじみだった。「今日は玉さんの誕生日だろ?なんで一人でこんなところにいるんだ?あ、わかった。ここで玉さんを待ってるんだな?彼はあと十分くらいで来るよ。ここで待っていな」そうか、今日は玉の誕生日だった。親族だけでなく、きっと親友たちとも祝うのだろう。私はふらふらと立ち上がった。「いや、大丈夫。もう帰るよ。玉には、私が来たことは言わないでほしい」ただ適当にバーを選んだだけで、他に意味はなかった。玉にしつこく思われたくなかったし、まだ未練があると思われたくもなかった。しかし酒のせいで足元がおぼつかず、よろけて倒れそうになった。一郎が慌てて私を支えた。「明空さん、そんなに飲むなよ。ここで休んだほうがいい。外に出るのはやめたほうがいい」「いや、帰る」私は一郎の手を振りほどき、よろよろと出口へ向かった。バーの中は薄暗くて、音楽がうるさかった。目の前が二重に見えた。ドアを押そうとしたとき、目の前でドアが開いた。玉が桜宮の手を引いて現れた。私を見ると、彼の口元に嘲笑のような笑みが浮かんだ。「明空、やっぱり俺のことが忘れられないんだな」桜宮は鋭く私を睨んだ。「お姉ちゃん、なんでここにいるの?」一郎が近づき、言った。「玉さん、明空さんはどうやら酔ってるみたいだ」玉は桜宮の手を握り締めて言った。「何をいってんのか。明空とは別れたんだよ。今は桜宮ちゃんが俺の彼女だ。間違えんなよ」一郎は驚いた顔で私を見た。「玉さん……冗談じゃないよね?」「もちろんだ。さあ、中に入ろう」玉は私の前に立ち、強引に手を引いて個室へ入った。「来たからには一緒に中に入ろう。友達に誤解されないよう、俺たちの関
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