凛の家には少し遅れて合流する手はずになった。 陽川はかなり不満顔で、『もしサボったりしたらどうなるかわかってるでしょうね?』と俺じゃなかったら卒倒物の威圧感を放ちながら言ってきたのだ。 これ以上機嫌を損ねたら何をされるかが怖いし、もちろん遅れて参加するつもりではいるが、物事には順序ってもんがある。 別に連絡を受けた相手のせいで浮かれているわけではない。 俺が向かうのはいつもの公園。 待ち合わせの相手は────エマ。 少しウキウキとした気分になっているのはきっと気のせいだし、弾む足取りは早く陽川の元に向かいたいからだ。 ……多少、浮ついているのは認める。 いつもの公園にたどり着くと、ベンチに座るエマの姿があった。 後ろ姿だってすぐわかる。 このまま普通に声をかけてもなんか面白くないような気がして、たまにはサプライズをしてやろうと思った。 うーん。ここはベタにだーれだなんてやってみる? いや、直接顔に触れるのはダメだろ……だとするならば──── エマに気が付かれないよう、足音を立てないように近づく。 そして一気に背後から……「わっ!」「きゃっ!」 可愛らしい鈴の音のような悲鳴が公園内に響き渡るのと同時に液体が飛んできた。 その液体が俺の体に付着して、夏服がスケスケになってしまった。「ふふふ。まだまだ甘いね。お見通しだよ」「くっ、不覚をとったか」 エマの手元には水のペットボトルがくしゃくしゃに握り潰されていた。 どうやら俺が忍び寄っているのに気がついて、声をかけたタイミングで潰して水をかけてきたようだ。 ドッキリを仕掛けようとして、逆ドッキリを仕掛けられた格好だ。 エマは軽く体を捻ってこちらを盗み見ると、チラリと舌を出してみせた。「水だから安心して。決して危ないものじゃないから」「その言い方は危ないものをぶっかけた時に使うんだぞ」「ただの水だよ。本当の本当。だから安心して」 ちょっと納得いかないけど、最初にイタズラを仕掛けようとしたのは俺だしな。「しょうがねえな」「とりあえずこっち座りなよ」 エマは自分の横の座面を叩いて座ることを促した。 断る理由はないというか、話をするために来たわけだしな。 ベンチ正面に回り込み、ベンチに座ろうとした時、思わぬ物が目に入った。 俺は思わず目を逸らした。 水で濡れて
Last Updated : 2025-08-20 Read more