学校へ向かう道中は、特に何があるというわけでもなく、無事登校できた。 それは良かったのだけれど、俺の心中は穏やかではなかった。 矢野さんはお祭りに誘われた意味を理解していなくて、ただ断っただけで。 振られたと思っていたのは俺の勘違いで、矢野さんは俺を嫌っていない。 幾度となく枕を濡らし、繰り返してきた自己嫌悪、自問自答は全て無意味だったのだ。 つまるところ、まだ俺にはチャンスがある。ということになる。 その事実に気がついてしまっただけでも、胸の高鳴りは止まらない。 俺はこれからどうすれば良いのだろう。 天然な矢野さんにもわかりやすいように、もう一度アプローチをかけてみるべきだろうか……「おはようさん。いつも以上にぼうっとしちゃってどうしたよ?黄昏れるのは夕暮れ時だけにしとけー」 背後からやってきた人物に無粋な挨拶をされるが、邪険には扱わない。 今の俺はとても機嫌が良いのだ。「おはよう。吉岡君。今日はとても爽やかな朝だね」 吉岡は道端に落ちていた邪神像でも見つけてしまったかのように怪訝そうに目を細め言った。「お前……毒キノコでも食べたのか? そこらの公園なんかにも危険なのが自生してるらしいからな。 可哀想に。きっと幻覚作用が見える類の毒キノコを食べてしまったんだな」「んなわけあるか。拾い食いはしないように子供の頃から躾けられるとるわい」 うちの母親はそこん所はしっかりしてるのだ。もちろん他の躾もしっかりされている。 ……訂正しておかないと後が怖いからね。「そりゃよござんした」 吉岡は謝罪する事はなく、当たり前に自席に座り、体を俺のほうに向けた。 そんな態度を見て、見逃してやろうと思っていた気持ちが変わった。これは言わなければなるまい。「お前さ、俺に謝らなきゃならないことがあるんじゃあないのか?」「はて?」 吉岡は悪びれる事なく、今朝の言い訳をしようともしない。「矢野さんから、お前も一緒に登校してくれるように頼まれていたよな?」 吉岡は悪びれる様子もなく答える。「特に何もなかったんだろ?朝こっ早くから押し掛ける暇人もそうは居ないだろうよ。それぞれ学校やら、仕事やらがあるだろうしな」 何もなかったから問題ないだろうで押し通そうとしているが、それとこれとはまた別の話だ。「何かあってからじゃあ遅いだろ。 それに
Terakhir Diperbarui : 2025-07-25 Baca selengkapnya