生徒指導室を出たあと、秋斗と雑談をしながら自クラスへと向かった。 アイリは、可愛いものや綺麗なものが好きなのが災いして、陽川に質問攻めをしている。 アイリの熱量にさすがの陽川もタジタジなようすだ。 名前から始まり、自らが引き受けたストリーの本物の中身であることに気が付き、彼氏は居るのかとか、メッセのアドレス交換しようだとか、陽川は押され気味な様子で交換を了承していた。 自クラスへたどり着くと、相変わらず閑古鳥が鳴いていた。 受付にはエマ、そして凛が談笑をしている姿があった。「あっ、おかえり。お客さん連れてきてくれたんだね。さっすが桐生くん!」 エマは私服姿の秋斗とアイリを交互に見てからそう言った。 普通に考えたら、そう思われても無理はないよな。 でも空気の読める男、秋斗はそんなエマと凛の方へ歩み寄ると、こう声をかけた。「僕の試合を観に来てくれたお嬢様方二人へのお返しだよ」 瞬時にあの時の二人だと気がついたのも凄いし、咄嗟にそんなセリフが出てくるのが純粋に凄いと思った。 秋斗の行動を見て、アイリもどこか満足げだ。「覚えててくれたんだね。ありがとう笹川くん」 エマもエマでさすがの記憶力だ。 凛はオドオドとした様子で秋斗の方を見ていた。「お客さんの入りがわるいのでしょう?このチケット、美しいあなた達にあげるわ」 秋斗の背後からアイリがそう声をかけた。 すると、苦笑いを浮かべるエマ。「一人1枚までしか受け取れないの。ちょっと貸してもらってもいいかな?」「ええ」 アイリが受け付けの方に歩み寄り、つづりになっている入場券を受け取る。 そして、それを裏返した。「ここを見て」 エマが指差した場所には、シリアルコードのような物が刻まれている。「ここに番号があるでしょう?この入場券が20枚つづりになっているんだけど、不正ができないように、全部同じ番号になっているの」「へー。あんがいしっかり管理をしているんだね」 感心をしたように秋斗はそう言いながら頷いた。「だから、貰えるのは1枚だけ。1枚貰うね」 断りを入れてからエマはチケットを1枚だけ切り離し、受け付けの上に置かれている箱の中に入れた。 それを見て秋斗は自分が持っているチケットを1枚もぎり箱の中に入れた。「今、何人くらい来ているんだい?」「うーん。どうだろう……50
Last Updated : 2025-09-23 Read more