玲が副社長になってからというもの、社員たちは顔色を伺い、常に委縮していた。会議では誰も発言しようとせず閉塞的な空気だった。以前は社員食堂も静寂に満ちており、会話もひそひそ声だったが、空が復帰してからは笑い声が聞こえるようになった。廊下で社員同士が立ち話をする姿も増え、皆の表情に生気が戻りつつあるのが見て取れた。知能・経験・実績・人脈、どれを取っても空の方が優れているのは明らかだった。 玲の具体性のない発言に対しても理路整然と話す空に、玲は言い返す言葉を見つけられずに口を閉ざすしかなかった。玲の理不尽な命令も減り、それに伴い、異常なまでに上昇していた離職率も抑制され始めたのだ。人材が流出するスピードが明らかに鈍化している。空は大変な役目だっただろう。だが、空の冷静沈着な対応が、玲の暴走を食い止め一条グループに再び光をもたらし始めていた。そして、玲はこの頃には苛立ちを隠すこともせずに表情や態度に出すようになっていた。玲にとって、空の存在は予想以上に邪魔だったはずだ。空を脅威に感じたからこそ、子会社に異動させて俺から空を遠ざけたはずだ。 しかし、空は俺が全面的な信頼を寄せ、役員たちも賛同する形で最も重要な事業戦略部門の責任者として返り咲いた。玲は、社内での自分
Terakhir Diperbarui : 2025-07-29 Baca selengkapnya