All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 81 - Chapter 84

84 Chapters

81.護の想い、報われない気持ち

(父の代わりに神宮寺家の専属医として仕え、どれほどの歳月が流れただろうかーー)幼い頃に父を亡くした私は、父の背中を追い医師になることを決意した。もっとも、先祖代々医者の家系だったので、それ以外の選択肢はなかった。しかし、父のことを心から尊敬していた私は、一般的な内科医の道だけでなく繊細な命と向き合う産婦人科医としての道も選んだ。父が亡くなったあの時、神宮寺家との間に生じた言葉にはできないわだかまりは、私の心に深く刻まれていた。神宮寺家に仕えたばかりの頃、華はまだ高校生だった。目を見張るような美少女だったが、家柄や年頃なのか、男性への免疫が低いようだった。訪問時に私が笑顔で挨拶をすると、華は顔を赤らめ視線を逸らし恥ずかしそうに言葉を返してくる。しかし、何度か訪問して会話を交わすようになるといつからか華は手作りのお菓子をプレゼントしてくれるようになった。「三上先生、もしよかったら少しですが……。」そう言ってラッピングが施された可愛らしいカップケーキをもらった。最初はたまたまかと思ったが、頻繁に受け取るようになり、もしかしたら、という微かな期待が胸に芽生え始めた。(もしかしたら、私に恋心を抱いているのではないか。)
last updateLast Updated : 2025-07-24
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82.護の決意、もう二度と君を傷つけさせない

訪問のたびに貰う、可愛らしいお菓子。控えめな甘さで過度なラッピングがされていないその姿は、謙虚で健気な彼女の姿を映し出しているようだった。(彼女が私のためにお菓子を作ってくれていたらいいのに。)しかし、その希望はあっけなく打ち砕かれた。私のためではなく、別に思いを寄せる相手のために作ったと教えてくれた。作った中で一番うまくできたものを好きな人用にラッピングをし、残りをいつも私にくれたのだろう。そして、数年後に華の結婚が決まってから、学生時代にお菓子を渡していた相手が夫となる一条瑛斗だということを知った。彼女には言えなかったが、長年、神宮寺家の専属医として仕え、父の件もあったため、私は密かに華と縁談の話が私の元へ来ることを願っていた。神宮寺家と一条家、この二つの名家が結ばれることは、政略結婚の意味合いが強いことは承知していた。政略結婚という形は好きではなかったが、華が初恋の人と結ばれ、幸せそうに笑っている姿を見て、私は無理に自分自身を納得させて祝福することにしたのだ。結婚後も、華はつらい妊活にも笑顔で耐え、三年もの間、決して弱音を吐
last updateLast Updated : 2025-07-24
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83.玲にあたるスポットライトと陰る瑛斗

特集:一条グループ初の女性幹部 一条 玲さん玲は、副社長としてメディア露出を増やし華々しく改革を謳っていた。しかし、玲に脚光が当たるほど、その裏で俺の実権は巧妙に削られていく。重要なプロジェクトの責任者は次々と外部の人間や玲の息のかかった者にすり替わり、俺の承認なしに大規模な組織改編が断行されることもあった。会議で意見を述べても、玲は冷静な顔で「瑛斗さんのご意見ももっともですが、現状にはふさわしくないかと」と切り返し、最終的な決定権は彼女が握っていた。俺は、会社でお飾りの社長になりつつあった。家庭でも状況は変わらなかった。父とは華との一件依頼確執が生まれ、その空気を察した玲が上手く父の懐へと入っていった。父と母は、玲の献身的な態度にすっかり心酔していた。「玲さんがいてくれるから助かるよ」という父の声を聞くたび、俺の胸には冷たい風が吹き抜けた。「お父様、瑛斗さんはこのところずっと疲れているようで最近は顔色も優れません。私が会社でのサポートをより深めるようにしたいのですが……」「そんなことはない、大丈夫だ」「瑛斗さん、無理をしないでください。本人が気がついていない状態が一番危険なのよ。夜中、いつもうなされているんです。」玲は俺を庇うような体裁を取りながら、あたかも事実のように話をしている。実際は不眠に悩まされており玲の横でまともに寝ることが出来ず悪戯に時間ばかりが過ぎている。玲のいない時間が俺がゆっくりと休める時間だった。
last updateLast Updated : 2025-07-25
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84.玲に実権を渡すな、瑛斗必死の行動

玲の本性が露わになるにつれて、俺の後悔は日ごとに膨れ上がっていった。玲から見せられた、華が自身の海外口座へ大金を送金している画像。そして、華が産んだ子が俺との血縁関係が認められなかったとされたDNA鑑定の結果。 かつては疑う余地のない「物的証拠」だと思い込んでいたそれらが、玲の冷酷な支配を目の当たりにした今となっては、なぜか胡散臭く思えて仕方なかった。あの完璧すぎるまでの証拠がかえって不自然に見えて、実は何者かによって巧妙に作られたものではないかと勘ぐってしまうのだ。 (玲ならば裏でどんな手も使うだろう。華を追い出すためにどんな嘘もつき通すかもしれない。) その思考が一度芽生えるともう止まらなかった。探偵に再依頼しても華の行方は依然として掴めない。その報告を聞くたびに、俺の自責の念をより一層強くするばかりだった。(俺のせいで華はどこか分からない場所で一人で苦しんでいるのかもしれない……。俺のせいで……。華は孤独の中で俺に助けを求めているかもしれない。)その想像が俺を蝕んでいた。 そんなある日だった。一条グループの新規事業視察のため、俺は長野へ訪れていた。
last updateLast Updated : 2025-07-25
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