All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 281 - Chapter 290

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282.結果

瑛斗side刑事に頼み、鑑定結果の正式なコピーを警察署で受け取ってから、会長と華の待つ神宮寺家へと向かった。結果が出ている以上、どうしようもないのだが、二人にこの事実を報告しなくてはいけないことに、気も足取りも重かった。神宮寺家の屋敷を訪ねると、家政婦が変わらぬ笑顔で出迎えてくれて、後ろに続いて応接間に続く長い廊下を歩いていく。華と結婚していた頃は年に三回ほど顔を出していたこの屋敷も、玲との結婚後は一度もなく、久しぶりの空気が温かい。廊下から見える庭には、池に錦鯉が優雅に泳いでおり、綺麗に選定された松の木と美しい砂紋が描かれており、俺の心を少しだけ癒してくれた。(こんな景色の中で、お茶をたてたら風情もあっていいな……)華が着物姿で生徒に茶道を教えている姿を思い浮かべると、つい頬が緩む。しかし、すぐに隣に北條湊の姿も出てきて、俺は意識的にすぐに消し去った。(今は、あの男のことは考えない。今は、会長と華としっかりと向き合うんだ……)「旦那様、一条様がお見えになりました」家政婦が声を掛けると中から声がし部屋の扉を開ける。会長と華は笑顔で出迎えてくれたが、二人とも普段と違い表情が硬く極度の緊張が伝わってくる。「お時間を頂
last updateLast Updated : 2025-11-06
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284.寄り添い

華side(玲は、お父様と血が繋がっていなくて別の男性の子ども?今までなんで姉妹なのに、こんな酷いことが出来るんだろうって神経を疑っていたけれど、そもそも私とは血の繋がりがないから関係ないってこと?でも、それにしても一緒に暮らしてきた情というものがないの?)自分がされてきた仕打ちを思い出すだけで心が痛むが、今はそれ以上に長年連れ添った妻と娘に裏切られた父の心情を考えると、胸を激しく抉られたような悲しみや憤りが湧き上がってきた。この事実は、単なる詐欺ではなく、家族という信頼の根幹を破壊するものだ。リビングに入ってすぐに、瑛斗はソファに座ることもせず立ち尽くし、素直で複雑な心境を私に吐露した。「華、これで良かったのだろうか。俺は玲と三上の真相をつきとめるために提案したが、会長の気持ちを考えると、本当に正しかったのかって胸が痛くて……」瑛斗の優しさに、私は少し救われた気がした。「……瑛斗が気にすることはないわ。このままだったら、玲のことも櫻子さんの秘密も分からないままだったし、血縁関係も疑わなかった。でも、それこそ相手の思うツボよ。一連の出来事を解決するために必要なことだったわ」私は、自分に言い聞かせるように、冷静な言葉を続けた。「お父様は、裏切りを知って悲しいだろうから、私が側で支える。だから瑛斗は自分を責め
last updateLast Updated : 2025-11-07
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285.答え合わせ

華sideリビングで瑛斗と二人、温かい緑茶を飲みながら鑑定結果について話をしていた。しかし、応接間に一人きりでいる父のことが気になっていて、私たちの間には重たい空気が流れている。しかし、この重い真実に目を瞑るわけにはいかなかった。「櫻子さんはお父様と結婚したけれど、誰か別の人の子どもを身籠った。だけど、そのことは伏せて夫婦の子どもということにして妊娠、出産をした。それが玲だった――――」頭の中で整理するように改めて口にすると、瑛斗は小さく頷いた。「ああ、そういうことになるな。櫻子さんの真意は分からないが、誰か別の男と接触があったことは確かだ」「そうなると、結婚の決め手になった妊娠や死産届も、本当にお父様との子どもか怪しいわ。」「ああ、それは俺も不信に思っている。神宮寺会長の良心に、つけ込んだ気がしてならないんだ」「そうなの、最初に聞いた時、既成事実を作らされたような気がしてならなくて。今日、玲のことを聞いて尚更、私の中で疑いが強くなってきて……」「そうだな。玲の失踪後に櫻子さんがいなくなったのは、玲から連絡があって、この血縁関係の事実がバレるのを恐れてかもしれないな」「ええ、私もそう思う。タイミング的にも玲がいなくなってすぐに櫻子さんも行方
last updateLast Updated : 2025-11-08
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288.松本と成田

瑛斗side「やっぱり瑛斗もそう思うんだね。僕も、役員会での発言や部下への指示を聞いている限り、玲さんに会計の知識は無いと思う。だから、誰かが悪知恵を働かせた可能性が高い。そうなると今の部門にいる人間も怪しくなってくるから、部門の空気を一新するためにも、人を入れ替えて新体制でやった方がいいと思うんだ」「そうだな。社員の考えもあるだろうから、異動希望の確認をして、本人の希望を叶える形で入れ替えを行ってくれ。増員という形でもいい。人員配置は空に任せるよ。でも今後は、部門ごとに担当者を全て分けてくれ。不正が起きても一箇所に集中しないように」「分かった。また報告するよ」「あと大変だと思うが、玲の事業の正しい収益結果を出し直してくれるか。事業の継続も踏まえて今後、役員会での議論の題材にしたいと思う。今、分かっている範囲で構わないから俺にもデータを送ってくれ。こちらでも確認する」「数年分に遡るから少し時間はかかるけど、会社の信用のためにも取り組むよ」こうして玲の事業を引き継いだ空は、部員たち全員と簡単な面談を行い、今までの業務内容と部門の方針や空気について率直な意見を求めた。最初は、全員が言いづらそうにしていたが、話しても大丈夫だと分かると指示内容の曖昧さや抵抗した社員への左遷など、玲の横暴さと支配体制が次々と露呈された。希望に沿った人員配置を行った結果、部門の半分以上が
last updateLast Updated : 2025-11-09
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290.秘密の会話

華side平日の午前八時。この日は北條先生の教室の手伝いの日だった。いつもは九時半に花村に送っていてもらうが、この日は新規の体験入門が三名来る予定で、事前準備のためにいつもより三十分早く出ようと思い、花村のいる運転手の休憩部屋に顔を出した。花村は休憩部屋におらず、ガレージで車を磨いていると聞いて裏口からガレージに向かうと、父と話す花村の姿があった。花村は、いつものにこやかな笑顔とは違い、少し戸惑った表情をしていて、私はとっさに二人の視界に入らない植え込みの陰に隠れた。「旦那様。翠様の件ですが、お嬢様はすべてご存知なのですか。あのことは知っておられるのでしょうか?」「いや、あのことは華には話をしていない。時が来るまではまだ秘密にしておこうと思っている。すまないが、花村ももう少しの間だけ沈黙を貫いてほしい」「かしこまりました」(あのこと?時が来るまで秘密って何の事?その時っていつなの?お父様と花村は私に何を隠しているの?)父と花村のやりとりに嫌な不信感が胸の中に広がっていく。父は、話が終わると玄関に向かって歩いて行った。父の背中が見えなくなって五分程してから花村に声を掛けた。「花村、今日の送迎だけどいつもより三十分早くしてもらえるかしら?」「かしこまりました。すぐ準備して
last updateLast Updated : 2025-11-10
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