瑛斗side三年前、会社や家庭で玲の存在が大きくなっていた頃、俺はもう一度、父である会長に認めてもらうため、新規事業の長野のリゾート事業に躍起になっていた。開拓地の場所の選定を入念に行い、マーケティング調査会社や不動産業者と頻繁にやり取りをし、実際の現地調査に何度も全国各地に足を運んで事前準備に二年以上かけて始動した、社運を賭けたプロジェクトで、自己の存在価値を証明するための背水の陣でもあった。その長野の視察中に、たまたま華と双子らしき人が歩いている姿を運命的に車から見かけた。二年間、居場所が分らず諦めかけていた時だったが、そのすれ違いがきっかけで、探偵が長野の別荘を特定し、華たちと再会することが出来た。あのプロジェクトがなかったら、俺はいまだに華たちのことを探していたかもしれない。俺にとって、この事業はビジネスの成功とは別に特別な意味を持っていた。そんな俺にとって感慨深い事業で、始動して三期目となった今年ようやく単年で黒字化となり、事業開始の五年目以降は、累計でも黒字化の見込みで、今後の一条グループの成長事業の一つでもある。(確かに外食産業の芦屋と提携出来たら、食材の調達も安定するし、事業にはプラスだな。融資の件も、次の物件を手掛けるための資金としてあるとありがたい。しかし……)俺が沈黙していると、会長は苛立ちを露わにした。「何を
Terakhir Diperbarui : 2025-11-16 Baca selengkapnya