華side(お父様と花村が何か隠している。花村は『翠様の件』と言っていたから私の母のことね。そうなると、怪しいのはやっぱりあの事故についてだわ。二人はまだ私に母の死に関して何か隠し事をしているんだ)車が赤信号で停止した時を見計らって花村に話しかけた。「花村、一つお願いがあるんだけれどいいかしら」「はい、お嬢様。どんな内容でしょうか?」「週末に子どもたちを連れてお墓参りをしたいの。母に子どもたちのことを報告したくて」母の名前を出すと、ほんの一瞬だけ花村の顔が強張った気がした。しかし、それは長年花村と過ごしてきたからこそ感じるもので、他の人には分からないほどの小さな変化だった。「それは素敵ですね。翠様もきっと喜ぶと思います」「今週の天気がいい方で、行きにお花を買って、そのあとにお墓に向かいたいのだけれど、予定を空けておいてもらえるかしら?」「かしこまりました。天気と周辺の花屋も確認しておきます」「ありがとう、頼むわ」バックミラー越しに花村は私を見て、目を細めてにこやかに顔を縦に振った。
Last Updated : 2025-11-11 Read more