All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 31 - Chapter 40

84 Chapters

32.瑛斗の本心と後悔(前編)

「せっかく華さんから連絡来たのに、なんでそんな冷たい態度取っちゃったの?」華からの電話を切ってすぐに親友でビジネスパートナーでもある空に全て話すと、呆れた声が返ってきた。「そ、それは…突然だったから……」革張りの椅子にふてくされるように深く身を沈めた。先ほどの電話での自身の対応を思い出し、深い後悔の念が胸を締め付けている。玲の言葉に囚われ、華を信じきれなかった弱さ。そして、久々の華からの連絡に動揺し素直になれなかった自分への苛立ち。様々な感情が渦巻いていた。「しかも、離婚届も出していなかったなんて……玲さんのこともあるしバレたら大問題だよ?」空の言葉は、正論過ぎて俺は何も反論できない。華とはとっくに離婚が成立していると話してある。もし、この事実を知られたら大問題になることは目に見えていた。一条グループのCEOである俺の立場も危うくなるだろう。「それに他の男性の子どもかもって疑っておきながら、離婚しないって宣言して電話切っちゃうなんて、華さんからすれば執拗ないじめにしか思えないよ?」空の言葉が俺の胸に突き刺さった。確かに、その通りだ。あの時の華の声はひどく震えていた。もしかしたら、泣いていたのかもしれない。「それは…華から本当のことを聞きたかったのに『そんなことはどうでもいいから早く離婚届出して』とか言うからついカッとなって……」思わず言い訳をした。華が、あの時なぜあんなことを言ったのか真意が分からなかった。華は俺との縁を早く切りたがっているようにしか聞こえなかったのだ。空は深い溜息をついた。「あのね、瑛斗?出生届って、子どもが産まれてから2週間以内に出さなきゃいけないの。だから華さんは焦っていたんだと思うよ」「そう、なのか?」空の言葉に俺は目を見開き、言葉を失った。
last updateLast Updated : 2025-06-30
Read more

33.瑛斗の本心と後悔(後編)

デスクに置いていたスマートフォンから「華」という文字が画面に映し出されたあの時、本当はとても嬉しかった。あの離婚を告げた日以来、連絡が取れなくなっていた華からの電話。待ち焦がれていたが、いざ「華」の表示を見ると柄にもなく焦った。(華?華から俺に連絡をくれたのか…?)しかし、いざ電話に出ると冷淡な言葉と声しか出てこなかった。華の震える声を聞いて、さらに胸が痛んだのに、なぜか素直になれなかった。玲の『別の男の人の子を身籠った』という言葉が脳裏を巡る。あの言葉が俺の心を深く蝕んでいた。華に限ってありえない、信じたくはなかったが、妊娠を告げずに去った理由は他に思い当たらなかった。玲のあまりにも真に迫った訴えに疑念を拭いきれずにいた。そして、華が家を出て以来、一度も連絡してこなかったこともその疑念を増幅させた。「……それで父親は誰なんだ?」出産を終えたばかりだという華に対して掛けた言葉は父親を問いただすものだった。華は、震える声で「あなたの子に決まっているじゃない」と叫ぶように言った。その後は泣いているのか時折、鼻をすするような音が聞こえてきた。いつも穏やかで笑顔だった華が取り乱すような声で反論したことに心がぐらついた。しかし、真実を知りたい俺に対し今は早く離婚届を出すように華が言ったことで怒りと戸惑いが復活した。
last updateLast Updated : 2025-07-01
Read more

34.瑛斗の決断と玲の焦燥①

社長室の重苦しい空気が瑛斗の苦悩を物語っていた。華からの電話、そして自分の感情的な対応。その全てを吐き出した瑛斗に、空は静かに切り出した。「結局のところ、瑛斗はどうしたいの?」空の問いに瑛斗は顔を上げた。混乱していた思考が少しずつ整理されていく。「俺は……真実を知りたい。華の産んだ子どもが本当に俺の子なのか、玲と華、どちらの言っていることが真実なのか知りたい……」 「なら簡単なことじゃないか。DNA鑑定を受ければいい。それが一番確実で誰もが納得できる方法だ。憶測で苦しむよりよっぽど合理的だろ」その言葉に稲妻が走った。玲の言葉に囚われ感情的になっていた自分を恥じた。「……そうか。DNA鑑定か。なぜ最初からその発想に至らなかったのだろう。でも、なぜ華もDNAのことを言いださなかったのだろう。華だってそんなに馬鹿な女じゃない。血縁関係を明らかにしたければ検査して証明すればいい話なのに。」瑛斗はふと疑問に思ったが、それ以上考えるのは止めた。空の言葉に迷いは消え失せ、CEOとしての冷静さと決断力が戻っていた。「ありがとう、空。助かった」(そうなんだよな、DNA鑑定のことを華さんが言って
last updateLast Updated : 2025-07-01
Read more

37.玲の反応はどっち?

「空、今の玲の反応はどう思った?」玲が社長室を後にしたのを見計らい、俺は親友でビジネスパートナーでもある空に尋ねた。DNA鑑定の話を切り出した時の玲の反応を第三者の視点から分析してもらいたかった。空は腕を組み考え込むように天井を見上げた。「うーん、動揺している感じだったね。明らかに冷静じゃなかった。何か隠しているようにも見えるし、華さんの名前を聞くのも嫌で怒りが混じっているようにも見えた」空の言葉に俺は眉をひそめた。やはり、俺の感じた動揺は間違いじゃなかったのか。玲はいつもポーカーフェイスを保つ女だ。感情を露わにすることなど滅多にない。「でもね、瑛斗…玲さんが言っていることが本当なら、海外に行くように仕向けて嫌がらせをしてきた姉が、自分の好きな人と結婚して妻になったら恨みたくなる気持ちは分かるよ。それに、離婚してもまだ君と華さんが連絡を取っていたら面白くはないよね。だから、今の状況だけではなんとも言えない」空の冷静な分析は俺の頭を冷やした。確かに、玲が主張する華の悪行が事実だとすれば、彼女の動揺や怒りも理解できる。嫉妬や憎悪は人を感情的にさせるものだ。「そうだよな……」俺は唸った。玲の言うことと華の主張のどちらが真実なのか、まだ判断がつかない。ただ、あの時の華の声、そして玲の動揺は、どちらも俺の心を深く揺さぶるものだっ
last updateLast Updated : 2025-07-03
Read more

38.玲と瑛斗の過去

「そもそも瑛斗と玲さんって本当に付き合っていたの?」空の突然の問いに俺は少し戸惑った。こんな時に玲との関係を聞かれるとは思わなかった。「ああ」俺は静かに答えた。高校時代の記憶が鮮やかに蘇る。高校時代の玲は、今とは少し違った。華やかな見た目は変わらないが、どこか控えめで、誰にでも優しい笑顔を向ける少女だった。俺は当時から、一条グループの次期社長として、周りから一目置かれる存在だった。多くの女子生徒が俺に近づいてきたが、そのほとんどは俺の肩書目当てだと感じていた。そんな中、俺のロッカーには時々、手作りのクッキーや俺の好きなスポーツ雑誌の切り抜きなど小さなプレゼントが置かれていた。いつも名前はなく誰がくれたのか分からなかった。だが、そのさりげない気遣いや俺の好みを正確に捉えているセンスに俺は次第に惹かれていった。高校卒業を控えたある日、俺は偶然、ロッカーにプレゼントを忍ばせようとする玲の姿を目撃した。彼女は驚いた顔をして、少しばつが悪そうに俯いた。その瞬間、俺は確信した。いつもこっそりプレゼントをくれていたのは玲だったのだと。俺は玲を呼び止めた。 「いつもロッカーにプレゼントいれてくれていたのって玲だったんだな。ありがとう。」 玲は小さく頷いた。その姿がとてつもなく可愛くて俺はその場で玲に告白した。
last updateLast Updated : 2025-07-03
Read more

40.非情な鑑定結果side瑛斗

検査から二週間後。社長室で空と共にDNA鑑定の結果を待っていた。報告書が届けられるという時刻が近づくにつれ、言葉には出来ないほどの緊張が募る。真実が明らかになることに、期待と同時に深い恐怖を感じていた。空もまた黙って瑛斗の隣に座り、その重苦しい空気に耐えていた。約束の時間通り、鑑定機関の担当者が厳重に封をされた報告書を手に現れた。瑛斗は震える手でそれを受け取るとゆっくりと封を破った。中から取り出した一枚の紙に彼の視線は釘付けになった。「これは……」瑛斗の顔からみるみるうちに血の気が引いていく。その表情を見た空はただならぬ事態を察し報告書を覗き込んだ。報告書には、冷徹な文字でこう記されていた。「被検体A(一条瑛斗)と被検体B(慶)、被検体C(碧)の間に、生物学的な親子関係は認められない。」瑛斗の手から報告書が音もなく滑り落ちた。彼の瞳は焦点が合わず、まるで魂が抜けたかのようだった。「そんな……」虫の泣くような小さくてか細く声で呟き、一気に絶望の底へと落とされた気分だった。心のどこかで、子どもたちが自分の子どもであると証明されることを期待していた。血縁関係が証明されて、今までの言動を反省して華を迎えに行こうと思っていた。今度こそ夫婦として、そして子どもを含めた家族として新
last updateLast Updated : 2025-07-04
Read more
PREV
1234569
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status