All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 21 - Chapter 30

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21.玲の思惑と勝利の祝杯

華が神宮寺家を去って一週間が過ぎ、広大な本邸の一室には熱狂と高揚感に満ちた空気が渦巻いていた。私は透き通るような白ワインのグラスを片手に、向かいに座る母・櫻子と目を合わせた。シャンデリアのきらめきが二人の瞳に宿り、祝祭的なムードを一層際立たせる。テーブルには高級シャンパンの空瓶から残り香が微かに漂っていた。「玲、本当にやったのね……!」母の声は歓喜に震えていた。瞳は潤み、長年の願いが成就したかのような深い満足感に満ちている。母は後妻として神宮寺家に嫁いできた。華とは血縁関係がなく、私だけが母の実の娘だ。由緒正しき一条家の縁談が持ち上がった時、母は実の娘である私を嫁がせるように父に言ったらしい。しかし、父も祖父も当然のように長女である華に決めた。母は内心では腹正しかったが、瑛斗と華が婚姻したことを機に諦めたそうだ。でも、私は諦めきれなかった。瑛斗と一緒になるのは私であるべきだと信じて疑わなかった。私が諦めずに計画を企てていることを知り、母はその背中を強く押してくれた。私の熱意が母がかつて抱いていた野望の炎を再び燃え上がらせたのだ。私は陶然とした表情でグラスを傾け、ワインを一気に飲み干した。「ええ、お母様。見て
last updateLast Updated : 2025-06-23
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22.神宮寺家の娘

「お姉ちゃんは自分から出ていくことを決めて『さようなら』って言ったんだから、もう神宮寺家とは関係ないわ」「これで玲は心置きなく瑛斗さんと結婚できるわね。」「もう今は一条家もお父様も皆が私たちの味方だもの。私が神宮寺家と一条家、両家の跡取りを産むわ」私の言葉に母は深く頷いた。華の妊娠は誤算だったが、離婚を切り出して失踪後に発覚したことで瑛斗や両家をうまく誘導することが出来た。これで私が瑛斗の子を産めばより強固なものとなるだろう。「玲が瑛斗さん、いや一条家との縁談が決まるなんて夢のよう。私ね、もう既に玲が瑛斗の隣で一条グループを、そして玲と瑛斗さんの子どもたちが神宮寺グループを継ぐ華やかな未来が思い描けるの。」「お母様、話が早すぎるわ。それに私が瑛斗さんをどんなに愛しているか知ってるでしょう?高校時代からずっと瑛斗さんのことだけを想ってきたの。やっと私の恋が叶ったのよ」「ええ、もちろん分かっているわ。これからは玲が神宮寺家の光となり、一条家との絆をより一層深めるのよ」母は私の手を取り力強く握りしめた。私たちの間に強固な共謀関係が築かれた瞬間だった。 私は、ふと華の残していった言葉を思い出した。
last updateLast Updated : 2025-06-24
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23.新たな命の誕生、静かな産声①

「華ちゃん、気分はどうですか?」優しい声が耳に届き、そちらに目を向けると神宮寺家の専属医を務める三上先生がいた。この日、私は緊張した面持ちで白い天井を見上げていた。ここは病院の特別室。部屋だけ見ればホテルと変わりないが、たまに様子を見に来る看護師と冷たい消毒液の匂いが鼻腔をくすぐり、数時間後に控える帝王切開に不安と期待がない交ぜになった感情が渦巻く。彼は検診の日以外にも、こうして足繁く病院や別荘を訪れては私を気遣ってくれる。玲と母に神宮寺家から追い出されて以来、私にとって三上先生は心を開ける唯一の存在になっている。「少し緊張していますが早くこの子たちに会いたいです」三上先生は、私を気遣いながらも踏み込みすぎることなく優しく見守ってくれていた。先生の存在は、私の孤独な日々において温かな光そのものだった。「双子ちゃんたちもきっと華ちゃんに会いたがっているよ。もうすぐだからね」その言葉に私はそっとお腹を撫でた。このお腹の中で小さな命が確かに宿っている。彼らに会えばこの数ヶ月の苦しみもきっと報われるはずだ。瑛斗に離婚を突きつけられ、玲と母に家を追われたあの日の絶望を私は決して忘れられないだろう。けれど、これからはこの子たちのためにどんな困難も乗り越えていこうと強く決めていた。
last updateLast Updated : 2025-06-25
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24.新たな命の誕生、静かな産声②

「おぎゃー、おぎゃー!」病室に、小さいけれど力強い声が響き渡った。カーテン越しで誕生の瞬間を見ることは出来なかったが声を聞いた瞬間、安堵と感動で自然と涙がこぼれてきた。 1時間前、手術室に入り双子たちの帝王切開が始まった。ひんやりとした空気、強い照明の眩しさ、そして医師たちの淡々とした声。いつもとは違う空間とこれから始まることに緊張が押し寄せてきたが、三上先生がいてくれることで安心できた。「華さん、今から麻酔をかけますね。意識はありますから心配いりませんよ」麻酔医の声が聞こえ背中にチクリとした感覚があり、下半身から徐々に感覚が薄れていく。不思議と痛みはなくただぼんやりとした感覚だけが残るが、意識ははっきりとしていた。「華さん、聞こえますか?これから赤ちゃんを取り出しますよ」医師の声が私を現実へと引き戻した。お腹のあたりがごそごそと動くのを感じる。痛みはないけれど確かに何かが行われているのが分かる。息を呑んでその瞬間を待った。力強い産声が手術室に響き渡った。「一人目、元気な男の子ですよ!」医師の声が響き、看護師さんが赤子を私の顔の近くに連れてきてくれた。温かいタオルに
last updateLast Updated : 2025-06-25
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26.新たなる障害①

白い病室の窓から差し込む午後の光が生まれたばかりの小さな命を優しく包んでいた。私の隣にはかけがえのない二つの宝。帝王切開から数日経ち、体はまだ本調子ではないけれど、この小さな手と気持ちよさそうに眠る顔を見ると、どんな痛みや苦しみも乗り越えられる気がした。「慶(けい)……碧(あおい)……」私は二人の名前を呼んだ。二人の小さな唇が、時折、ちゅぱちゅぱと音を立てるたびに胸の奥が温かさに満たされていく。あくびをしたり、ちょっとした動きでも子どもたちの命を感じて愛おしかった。玲と母に神宮寺家を追われ一人きりでの出産。慶と碧を守りこの子たちと新しい人生を歩む。未婚の母として生きる覚悟は、出産を経験して一層固まった。私の手の中には希望に満ちた未来があると信じていた。この日、執事の久保山に出生届の代理提出を頼んでいた。午後三時を少し過ぎた頃、静かな病室に、突然、携帯電話の着信音が鳴り響いた。画面を見ると久保山の名前が表示されている。 「届けが終わったという報告の電話かしら?」電話に出ると、久保山はいつもとは違う少し動揺と焦ったような声で話しかけてきた。 「華様……申し訳ございません、大変申し上げにくいことがございます」
last updateLast Updated : 2025-06-26
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27.新たなる障害②

(まだ婚姻関係にある……? まさか。私は、瑛斗から渡された離婚協議書と離婚届にサインを交わして家を出てきた。それでもう全て終わっているはずなのに……。)誤解を解いた後に妊娠の報告をして瑛斗との関係を再構築しようと、離婚を告げられた翌日に瑛斗の会社を訪ねた。しかし、瑛斗は地下駐車場で玲と密会しており、玲から私と離婚した後の話を持ちかけられていた。その姿を目の当たりにして、妊娠のことを言えずに家を飛び出したのだった。「そんな……嘘でしょ?」 震える声で呟いた。離婚が成立していない理由を色々と考えたが、離婚届に不備があったか、瑛斗が離婚届を提出し忘れていたということくらいしか思いつかなかった。そして名前のサインしかしていない離婚届に不備がある可能性も低く、完璧主義だった瑛斗が出し忘れるなんてことも考えられなかった。久保山の声が遠くで聞こえる。 「瑛斗様がまだ離婚届を提出されていないようでございます。そのため、戸籍上はまだお嬢様が一条瑛斗様の妻となっています。」(私が今も瑛斗の妻?…私が出ていった後、玲と婚約をして夫婦になったのではないの?)「…このままでは、瑛斗様の戸籍に入るか無戸籍となってしまいます。」
last updateLast Updated : 2025-06-27
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28.新たなる障害③

『瑛斗とまだ婚姻関係にある』その事実は、私を惑わせた。私が家を出てから、すぐに瑛斗と玲は婚約した。居場所が見つかり、実家に帰った私に母が「離婚前の妊娠だから戸籍上は瑛斗の子どもになる」と言っていたこと。 そして「瑛斗さんと血の繋がった子は私が産むから。今いる子も産まなくてもいいんだよ?」という玲の言葉。(あの時の玲の目は殺意すら宿っていた…。玲は、慶と碧の存在を恐れていたの?だから、慌てて婚約をし、夫を守るという口実のためDNA鑑定を拒否した?もしそうなら、私や子どもたちの命を狙っていたのは瑛人ではなく、玲の仕業?)しかし、なぜ瑛斗は離婚届を出さなかったのかは分からなかった。瑛斗は、玲の言葉を信じ、私との関係を解消したかったはずだ。彼の胸に、微かでも私への情が残っていたのだろうか。妊娠を知って跡継ぎだけでも早く欲しいがために婚姻関係だけは維持をして、形だけでも留めておきたかったのか……。今まで命を狙うのは私との関係をすべて清算させたい瑛斗の策だと思っていたが、婚姻関係が続いているということは、瑛斗が仕向けたわけではなく別の人物の仕業と裏付ける一筋の希望にも見えた。瑛斗の真意は分からないが、私との婚姻関係が続いているということは玲にとって最大の誤算だろう。玲の性格を考えると、瑛斗のことを独占したいはずだ。分からないことも
last updateLast Updated : 2025-06-28
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30.交錯する二人の想い②

離婚届が出されていないことを知り、瑛斗に連絡を取ったが質問には答えず『隠し事をしていることを知っている』と返された。瑛斗の親友でビジネスパートナーの空くんが三上先生の元へ訪ねてきて、妊娠のことを問いただされたことを思い出した。三上先生は、瑛斗からの問い詰めにも詳細を話さなかったが私が妊娠している事実は把握しているだろう。隠し事とは妊娠の事だとすぐに分かった。「……私、子どもを産んだの」震える声を押し殺し、私は正直に話した。瑛斗の反応が恐ろしかった。だが、隠し通せることではなくこれが私と彼をつなぐ唯一の真実だった。電話の向こうで再び沈黙が訪れる。今度は、先ほどよりも長く重苦しい沈黙だった。「……それで父親は誰なんだ?」その一言が、私の心を深く抉った。(玲や母だけではなく、瑛斗も私を疑っていたの?私が別の男性との子どもを宿したと、信じていたなんて…。)心から愛していた夫に不貞を疑われていたことに、私は深い絶望を感じた。彼の冷たい言葉は私の心をズタズタに引き裂いた。「誰って……、そんなのあなたの子に決まっているじゃない……!」私の声はもはや震えを隠すことができなかった。涙が込み上げてきて視界が滲む。「俺の子なら、なんで家を出たりこそこそ隠れるようなことをしているんだ。やましいことがあるからじゃないのか」瑛斗の声は明らかに怒りを帯びていた。瑛斗は、玲が私について吹き込んだ嘘を信じている。私が真実を語っても、玲の言葉を信じてしまう瑛斗に激しい怒りが込み上げてきた。「今はそんなこといい!子どもたちが産まれたら、すぐに戸籍登録しなくちゃいけないの。時間がないのよ。あなたが私と関わりたくないなら早く離婚届を出して!」私は叫ぶように感情的に訴えた。彼の疑念や怒りなど、どうでもよかった。今はただ、慶と碧の戸籍をどうにかすることが最優先だった。
last updateLast Updated : 2025-06-29
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