All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 51 - Chapter 60

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51.深まりあう絆

子どもたちが1歳を過ぎて、よちよちと歩き始めると、三上先生が私たちを色々な場所に連れて行ってくれるようになった。別荘の庭を抜け出し、少し離れた高原の公園や、時には、車で片道数時間の距離にある水族館や動物園などに足を延ばすこともあった。専属の運転手もいるけれど、休日にわざわざ運転をお願いするのは気が引けた。それに、三上先生といる方が私自身もリラックスできたし、助手席に座り会話をするのが楽しみで厚意に甘えることにした。 彼が運転する車の後部座席で慶と碧が楽しそうにしている姿を見るたび、胸の奥が温かくなった。「華ちゃん、この前言ってた、あのパン屋さんに寄っていこうか?美味しいって評判なんだ」「慶くん、碧ちゃん、あそこに可愛い羊がいるよ!」三上先生は、いつも私たちのことを一番に考えて行動してくれた。子どもたちの興味を引く場所に連れて行ってくれたり、私が話していた何気ない言葉を覚えていて、サプライズで立ち寄ってくれたりいつも細やかな気遣いをしてくれる。帰り道、車窓から流れる景色を眺めながら、時折バックミラー越しに子どもたちの様子を気に掛ける先生。「ねえ華ちゃん後ろ見て。慶くん、碧ちゃんぐっすり寝ているよ。」「本当。気持ちよさそうに寝て
last updateLast Updated : 2025-07-10
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53.かけがいのない存在へ

慶と碧の1歳の誕生日から、三上先生はさらに頻繁に別荘を訪れるようになった。時には休日のほとんどをここで過ごし、子どもたちと庭で遊んだり、昼寝をする双子の隣で静かに本を読んだりする彼の姿は昔からそこにいた家族のようだった。久保山執事と談笑したり別荘のスタッフたちも彼に心を開いているようだった。彼が来る日は、私自身も笑顔が増えて、別荘の空気が明るくなる。夜、子どもたちが寝た後も私たちはリビングでのんびりと過ごす時間が長くなった。子どもたちも大人と同じように1日3回の食事が取れるようになったことで私はお酒を解禁した。その日、三上先生は今までお酒を控えてきた私にと少しいいワインを用意して持ってきてくれた。リビングで一緒にワインを開けながら談笑していると、2年ぶりのお酒のせいか今まで以上に酔いが回るのが早く、私はテーブルに伏せてしまった。そして、瑛斗に裏切られて悲しかったこと、家族から不貞を疑われたこと、社会から隔絶されて感じていた孤独と恐怖など、今まで誰にも話せずに心の奥しまっていた感情を、ポツリポツリと打ち明けた。先生はただ黙ってたまに優しく相槌を打ちながら、私の言葉に耳を傾けてくれた。「華ちゃんは本当に強く頑張ってきたね。僕には、華ちゃんのつらさが痛いほどわかるよ」そう言
last updateLast Updated : 2025-07-11
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54.慶に命の危機?頼れる三上

ある日の休日。この日も三上先生がきて別荘から少し離れた公園へと連れて行ってくれた。慶と碧はおぼつかない足取りだが一人で歩けるようになっている。この日も、両手でバランスを取りながらよちよちと私の方に向かって笑顔で駆け寄ってきて楽しく遊んでいた。しかし、夕方になり家に戻ると慶がぐったりとして身体に触れると驚くほど熱くなっている。三上先生にみてもらうと身体に発疹もあり乳幼児によくある突発性の発熱とのことだった。食欲もなく、ベッドに横になりぐったりとしている。こまめに水分を取り安静にしていることにした。三上先生も気にかけてくれてこの日も泊まることにしてくれた。そして深夜、私の隣で寝ている慶が突然痙攣し始めた。目は虚ろで焦点が定まっておらず明らかに様子がおかしい。「慶!慶!」私は初めてみる慶の姿にパニックになった。慌てて慶を抱きかかえ、客室で休んでいる三上先生の部屋に行きドアをノックした。「先生、三上先生。慶が、慶が……」私のただならぬ声に先生は慌ててドアを開けて出てきてくれた。そして痙攣を起こす慶を見て、一瞬で状況を把握した。「華ちゃん、落ち着いて!慶くんを僕に。すぐに病院に行こう」
last updateLast Updated : 2025-07-11
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55.慶に命の危機?頼れる三上②

病院に向かっている間も三上先生は慶の容態を常にチェックし、動揺する私に優しい言葉をかけ続けてくれた。「華ちゃん、怖かったね。でももう大丈夫だよ。僕がいますから」病院へ到着した後も、三上先生は慶のそばを離れず一緒に見守ってくれた。症状が発生してからの状況を医師に詳しく話している。「慶くんは、高熱による熱性けいれんのようだね。0~2歳の子はなりやすくて、長い痙攣が何度も長時間続くと脳に障害が出ることもあるんだ。でも、障害として残るケースは稀で華ちゃんがすぐに気がついてくれたから時間的にも問題ないと思うよ。」「障害」と聞いて全身に寒気を感じた。それ以外の言葉は耳に入らなかった。待合室で待っている間も、怖くてずっと神に祈るような気持ちでいっぱいだった。そんな私の震えている手を先生はずっと握ってくれていた。その温もりが私の張り詰めた心を少しだけ緩めていく。しばらくして慶の容態を教えに病院の先生が来てくれた。気が動転している私を見て、三上先生が話を聞いてくれている。「慶くん、今痙攣をおさえる薬を処置したら落ち着いてきたって。もう大丈夫だから帰っていいみたい」「先生、先生が側にいてくれて良かった。私一人じゃ何も出来なかった。慶を救ってくれて本当にありがとうございました……」「そんなことないよ。華ちゃん、ビックリしたよね。怖いのに、よく頑張ったね。」
last updateLast Updated : 2025-07-11
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58.三上と華の新たな関係 (後編)

妊娠中も身の危険から守るために送迎し、父にこの別荘に非難することを提案してくれた先生。お腹の子の父親を疑われた時も三上先生だけが信じ続けてくれた。そして、慶と碧のことを我が子のように可愛がってくれる。おもちゃで遊んだり、車で色んな場所に連れて行ってくれたり、抱っこして微笑む優しい眼差しも、一緒に成長を喜んでくれることも子どもたちへのまっすぐな愛情が伝わってきて、とても嬉しかった。そのことが子どもたちにも伝わり、子どもたちも先生のことを「みみ」と愛着を持って呼んでいる。先生は私にも子どもたちにも大切な存在だ。そんな彼を、私は「専属医」以上の存在としてずっと見ていることに気がついた。「華ちゃん、不謹慎かもしれないけれど昨夜、僕は嬉しかったんだ。華ちゃんが頼ってくれたことも自分が役に立てたことも。」「先生……。」「改めてもう一回言わせてくれないかな?これからは僕が華ちゃんと慶くん、碧ちゃんを守りたい。だから、華ちゃんの隣にいさせてください」 産後間もない時期に言われたときは、離婚したばかりで考える余裕すらなかった。でも、その後も変わらず、いやそれ以上に、私のこと、子どもたちのことを考え尽くし続けてくれた。そして、ずっと前から何か困ったことや、悲しい事があったときに駆けつけてくれるのはいつも三上先生だった。瑛斗への
last updateLast Updated : 2025-07-12
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59.離婚後の瑛斗と玲

華が長野の別荘で双子との新しい生活を始める一方で、東京の一条邸では、玲の存在感が日増しに強まっていた。華が去った後、正式に玲と結婚し玲は一条家の人間となった。驚くことに玲は俺と二人で新しい家を構えることはせず、両親たちの屋敷で一緒に暮らすことを選んだのだ。玲は、一条グループの現会長である俺の父に献身的に尽くした。朝は誰よりも早く起きて家政婦たちと一緒に朝食の準備を手伝っていたし、夜は遅くまで両親の話し相手になっていた。いつも笑顔を絶やさず細やかな気配りをする玲は、あっという間に両親の信頼を勝ち取っていった。「玲さん、あなたが来てくれて本当に助かるわ」母が心底から安堵したように玲に話しかける声が聞こえてきた。「お義母様、ありがとうございます。私は瑛斗さんや一条家の皆さまのお役に立てるように、これからも頑張ります」玲の返答はいつも完璧だった。その巧妙な立ち回りにより、父も母もすっかり玲を信頼しきっていた。両親は、俺と華の関係が破綻した後も一条家と神宮寺家の関係が維持できているのは、玲のおかげだと本気で信じ込んでいた。玲の献身的な行動が両親の心を完全に捉えていた。 父たちの信頼を得たところで玲は次の手を打った。
last updateLast Updated : 2025-07-13
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