All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 431 - Chapter 440

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431.戦いの幕

瑛斗side翌週、三村は俺たち経営陣がこの一週間、どれほどの心労を重ねてきたかなど微塵も気にする様子もなく何食わぬ顔で出社し、社長室のドアを軽快にノックして入ってくると、ニュージーランドの空港で買ったという高級チョコレートの箱を渡してきた。「いやー、一条社長、大変な時に不在にしてしまって本当に申し訳ない。まさか私が視察に出ている間にこれほど派手な相場変動が起きるなんて夢にも思いませんでしたよ。まあ、株式市場なんていうのは生き物ですからね。いつ、どこで、誰が仕掛けてくるか分からない。それがまた面白いところではあるんですが」(……俺たちが先週、どんな気持ちでいたか分からないのか?よくも今このタイミングでそんなことが言えるな)全く笑えないどころか、嫌悪感すら覚えるジョークを吐く三村に対し、俺は奥歯を噛み締めた。拳を握り込みそうになるのを必死で抑え、頭の中で「冷静になれ」と何度も念じながら、あえて奴の土俵に踏み込むような質問を投げかけてみた。「証券会社に長年勤め、数々の企業買収や相場操縦の現場を見てきたあなたの知見をぜひ伺いたい。一条の価値を不当に貶めるような今回の事態に対し、経営陣としてどう対処するのが最も適切だと考えますか?」俺の問いに、三村は顎に手を当て考えるフリをした。だが、その瞳が一瞬だけ獲物を追い詰めた愉悦に歪みニヤリと口角を上げたのを俺は見逃さなかった。「そうですね……。客観的に見て、自社の
last updateLast Updated : 2026-02-18
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432.式典

瑛斗sideこの日は、長年懇意にしている取引先の創立記念式典に招待されており、俺と三村、そして空の三人で出席することになっていた。俺の社用車で運転手に会場まで送迎してもらうため、午後四時に都内某所にある高級ホテルへと向けて発進した。助手席に空、そして後部座席には俺と三村が並んで座り、車内では三村が相変わらずの調子で、ニュージーランド視察の土産話や現地の経済状況について陽気に話しかけてくる。俺が適当に相槌を打って聞き流していると、助手席の空がバックミラー越しに三村へ視線を送り、声を掛けた。「そういえば三村副社長は、アメリカ以外の国でも幅広く仕事をされていたのですよね。これまでに、延べ何か国ほど回られたのですか?」「何か国、か……。プライベートの旅行も含めると相当な数になるから、正確には覚えていないね。一度の渡航で国境を跨いで複数の国をハシゴすることもザラにあるからね」「旅行がお好きなんですか。私も幼い頃から両親の仕事の都合で海外を転々としていまして。国によって文化も食事もルールも全く違って面白いですよね」空がさらりとルールという言葉を混ぜて答えると、三村は一瞬だけ目を細めたが、すぐに嬉々として今まで訪れた国々のエピソードをユーモアたっぷりに語り始めた。
last updateLast Updated : 2026-02-19
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433.自由人

瑛斗side会場に到着すると、既に多くの招待客が詰めかけていた。クリスタルのシャンデリアが眩い光を放ち、至る所で名刺交換の儀式が行われている。俺たちもすぐさま親交のある会社の役員たちに三村を紹介するための挨拶回りへと向かった。「わが社の新しい副社長、三村です。今後とも一条グループ共々よろしくお願いいたします」 「初めまして、三村ジョニーです。この度縁あって一条社長を支えることとなりました。至らぬ点も多いかと存じますが、ご指導いただけますと幸いです」三村は、持ち前の圧倒的なコミュニケーション能力を発揮し、爽やかな笑顔で次々と握手を求めていく。彼がどういう経緯で副社長に就任したのか、その裏事情を知る者はこの場にはほとんどいない。皆、三村の華やかな経歴と洗練された佇まいに、グローバル化に本腰を入れたのだと好意的に受け入れていた。しかし、鋭い情報筋を持つ一部の古参経営者たちだけは違った。彼らは一歩引いた位置から、俺と三村を交互に探るような冷ややかな視線を向けてくる。その疑念に満ちた空気は、俺の皮膚を刺すように不快で、同時に焦燥感を激しく煽った。一通り予定していた主要人物への挨拶を済ませると、三村は退屈そうにシャンパングラスの脚を細い指で弾いた。彼は早く自由になりたいと言わんばかりの口調で俺に声を掛けてきた。「一条社長、挨拶はこれで終わりですかね? 実は会場内に個人的な知人を見つけたので、そちらに顔を出してきてもよろしいでしょうか?」 
last updateLast Updated : 2026-02-21
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434.協力者?

瑛斗side「あの……人違いでしたら申し訳ございません。相原専務は、今年の七月に帝王ホテルで行われた経団連のパーティーに出席されませんでしたか?」真珠の問いかけに、空が虚を突かれたように目を見開いた。「え、はい。確かに、あの場にはおりましたが……。長谷部さんもご出席を?」空が意外そうに問い返すと、真珠はパッと花が咲いたように顔を明るくして微笑んだ。 「やっぱり! あの時、受付で迷っていた私に会場の場所を丁寧に教えてくださったのが相原専務だったんです。あまりにスマートな対応だったので、ずっとお礼を申し上げたいと思っていて……。まさか、こんな形でお会いできるなんて!」帝王ホテルでのパーティー、その単語を聞いた瞬間、俺の脳裏には思い出したくもない苦い記憶が蘇った。あの時、俺の隣には芦屋彩菜が寄り添って婚約者であるかのように振る舞っていた。そして、その光景を華に見られてしまったのだ。華は、北條湊の隣で一歩引いて慎ましく凛と佇んでいたが、華の瞳に一瞬だけ宿った冷ややかな拒絶の視線に胸が痛くなっていた。急に俺のことを『瑛斗さん』と呼ぶ彩菜さんへの怒りと、北條のことを『湊さん』と呼んだ華と微笑む北條にただならぬ気配を感じて嫉妬したのだった。感情を顔に出さないようにしたつも
last updateLast Updated : 2026-02-22
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436.女の影

瑛斗side華やかな式典が終わりを告げると、一斉に参加者たちが会場の外へと出て行き、ホテルのエレベーターホールは、駅や迎えの車へ向かう着飾った人々で溢れ返り独特の熱気と香水の香りが渦巻いている。周囲に視線を走らせたが三村の姿はどこにもない。俺が見ていないことをいいことに先に帰路についたのかと思ったその時、ポケットのスマホが小刻みに震え、芦屋彩菜の秘書から、事前に作っておいたグループ宛にメールが届いた。  芦屋秘書:三村ですが、会場から近い出口とは逆方向のエレベーターホールにて待機中。上の階へ行くようです。誰かと密会する可能性があるためそのまま偵察を続けます。「三村のやつ、真っ直ぐ帰らなかったようだな。上の階は、確かバーと宿泊用の部屋だよな。誰かと待ち合わせか?」 「どうだろうね。知人がいるっていうのは、僕たちと別行動をするための単なる口実だと思っていたけれど、本当に誰かを待たせていたわけだ」俺と空がクロークで受け取ったコートを羽織りながら話し合っている間にも、再びメッセージの通知音が響、今度は写真が添付されている。それを見た瞬間、俺と空は同時に足を止め、液晶画面に映し出された光景に目を疑った。  芦屋秘書:三村は高層階のラウンジバーへ移動後、女性と合流。三村の顔を見て、女性はすぐさまチェックをして二人は宿泊者専用フロアの奥へと移動しました。送られてき
last updateLast Updated : 2026-02-24
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437.盗聴

瑛斗side一条ホールディングスの株価が謎の大量売りによって大幅に下落した一か月後―― 市場は落ち着きを取り戻しつつあり、株価も底を打って緩やかに回復基調になってきた。しかし、いまだ下落前の水準の半分程度まで戻したに過ぎず、俺は売買動向を細かくチェックし、大口投資家の動向に目を光らせるのが日課となっていた。「……海外投資家は買い越しに転じているのか。あの時売りを仕掛けた連中が安値で買い戻しをしているのか? このまま長期保有の姿勢を見せてくれればいいが、また何かの拍子に一斉に売られたら他の株主たちも黙っていないぞ……」社長室のデスクに肘をつき、溜め息交じりに独り言をつぶやいていたその時だった。 しんと静まり返った室内で、耳慣れない微かな電子音が聞こえた気がした。「……ん? 今の音はなんだ。俺のスマホでも、パソコンの通知音でもないな」空耳かと思ったが、意識を集中させるとやはりチリチリという電子機器が発する独特のノイズが聞こえるような気がした。目を閉じ、聴覚を研ぎ澄ませる。(……やはり音がしているな。どうやら、この部屋の隅からだ)椅子から立ち上がり、足音を殺して音を辿っていくと、部屋の一番端にある壁面のコンセントに行き当たった。そこには社内LAN用のWi-Fiルーターのケーブルやプレゼン用の大型TVモニターの電源コンセントが刺さっている。
last updateLast Updated : 2026-02-25
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438.逆探知

瑛斗side「お疲れ様。今週と来週の三村副社長の予定を教えてくれないか。午後から打ち合わせを入れたいんだ。一時間もかからないと思うが、外出の予定などがあったら先に把握しておきたくてね」外出先から戻り、社長室に戻る前に俺は三村の秘書に声を掛けた。彼女は、デスクの傍らに置かれたタブレットを手に取り、手慣れた動作で三村のスケジュールを表示させて俺に見せた。「三村副社長でしたら、今週の木曜日と来週の月曜日に午後から取引先訪問の予定が入っております。それ以外の平日の午後でしたら、今のところ一時間程度の空きはございますので、スケジュールの調整が可能です」「そうか。分かった、助かるよ。……あれ、なんだか今日は少し印象が違う気がするな。何か変えたのか?」何気ない問いかけに、彼女は少し意外そうな顔をした後に自分の足元をチラリと見て小さく微笑んだ。「ああ、鋭いですね。実は今日の朝、少し時間に余裕がなくていつもより遅い電車になりまして、走れるようにいつもよりヒールの低い靴を選んだんです。普段は七センチのヒールを愛用しているので、今日は少し視線が低く感じられるのかもしれません」「七センチか……。失礼だが、ヒールが高い靴というのは歩きにくくないのか? 男の俺には想像もつかないが、あんな細い接地面でよく身体を支えて颯爽と歩けるものだといつも感心してしまうよ。七センチ高いとなると普段の君の身長はこれくらいか?」
last updateLast Updated : 2026-02-26
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440.焦り

瑛斗side「昨日話した打ち合わせの件だが、来週の木曜日、午後二時からに入れてくれないか。ああ、場所は社長室で構わない。時間は一時間ほど確保しておいてくれ。よろしく頼む」翌朝、出社してすぐに三村の秘書に内線電話を掛けた。あえて一週間先の時間を空けたスケジュールを組んだのは俺なりの計算だ。もし昨夜、あの和食店で三村の副社長解任と監査役への左遷という内容が三村の耳に届いているのなら、奴らはこの一週間、疑心暗鬼と焦燥感に苛まれながらも、何かしらの行動を起こすはずだと思ったからだった。盗聴器については、依然としてコンセントに挿したままだ。相手に盗聴がバレたと思わせず自然な形で撤去するために、来週、社長室のTVモニターを大型の最新機種に交換する工事を組み、その工事の際に回収することにしている。それまでは、会社の機密情報が漏れないよう細心の注意を払いながら、大事な内容は電話や社長室で話すことは避けるようにするつもりだ。金曜日。午前の定例役員会議が終わり資料をまとめて席を立つと、いつもなら会議が終わり次第、誰よりも早く風のように去っていく三村が、珍しく俺の方へ歩み寄ってきた。「一条社長。来週の木曜日の打ち合わせの件ですが、どのような内容でしょう? 事前に分かれば、こちらも必要な資料やデータを揃えて準備ができる。効率的に進めたいので、ぜひ教えていただきたい」三村から自発的に「
last updateLast Updated : 2026-02-28
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