瑛斗side翌週、三村は俺たち経営陣がこの一週間、どれほどの心労を重ねてきたかなど微塵も気にする様子もなく何食わぬ顔で出社し、社長室のドアを軽快にノックして入ってくると、ニュージーランドの空港で買ったという高級チョコレートの箱を渡してきた。「いやー、一条社長、大変な時に不在にしてしまって本当に申し訳ない。まさか私が視察に出ている間にこれほど派手な相場変動が起きるなんて夢にも思いませんでしたよ。まあ、株式市場なんていうのは生き物ですからね。いつ、どこで、誰が仕掛けてくるか分からない。それがまた面白いところではあるんですが」(……俺たちが先週、どんな気持ちでいたか分からないのか?よくも今このタイミングでそんなことが言えるな)全く笑えないどころか、嫌悪感すら覚えるジョークを吐く三村に対し、俺は奥歯を噛み締めた。拳を握り込みそうになるのを必死で抑え、頭の中で「冷静になれ」と何度も念じながら、あえて奴の土俵に踏み込むような質問を投げかけてみた。「証券会社に長年勤め、数々の企業買収や相場操縦の現場を見てきたあなたの知見をぜひ伺いたい。一条の価値を不当に貶めるような今回の事態に対し、経営陣としてどう対処するのが最も適切だと考えますか?」俺の問いに、三村は顎に手を当て考えるフリをした。だが、その瞳が一瞬だけ獲物を追い詰めた愉悦に歪みニヤリと口角を上げたのを俺は見逃さなかった。「そうですね……。客観的に見て、自社の
Last Updated : 2026-02-18 Read more