瑛斗sideこの日、俺は業績打ち合わせという名目で空と成田を会議室に呼び出した。しかし、その実態は今後の「対・長谷部智花」に向けた作戦会議だ。「成田……長谷部には、例のデータを渡したのか? その後、向こうから接触はあったか?」成田は緊張で強張った顔のままプライベートで使用しているタブレットを操作してメール画面を開いた。「はい。相原専務から預かった『偽の顧客名簿』を送付しました。当初は指定されたクラウドに直接アップロードするように指示されていたのですが、『セキュリティが厳しくてアップロードが弾かれる。うまくできないからメールで送らせてほしい』と言って、なんとか承諾してもらいました」「よくやった。メールでの送付に切り替えさせたのは大きいな」「ああ、このメールに受信した相手のIPアドレスや現在地を特定する特殊なプログラムを仕込もうと考えている。ただ、相手は長谷部だ。少しでも不自然な挙動があれば即座に感づかれるだろう。チャンスは一度きりだ」「分かった。それで、実行はいつにするつもりだ?」「できるだけ早い段階で仕掛けたい。成田君の話では、彼はこれまで一度も長谷部の指示に遅れたことがなかった。だから、あまり不自然に時間を稼ぐと逆に不審がられる可能性もあるからね。……成田君、もう少しだけ長谷川とのやり取りを続けてくれ」
Last Updated : 2026-01-27 Read more