All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 461 - Chapter 470

515 Chapters

461.封筒

華side数日後、真珠さんが再び教室を訪れた。営業活動が忙しくなったのか、最近は顔を出す機会が増えている気がしていた。「真珠さん、今週も東京ですか? 京都との往復、移動だけでも相当な負担でしょうに。お体は大丈夫?」私が淹れたての緑茶を差し出すと、彼女は少し疲れたような、けれど充実感に満ちた表情で受け取った。「そうなんですよ。おかげさまでお取引先が増えて、東京に来る機会も格段に多くなりました。最近は、いっそのこと関東圏に小さな拠点でも借りた方がいいのかしら、なんて考えてしまって。でも、京都の事務所の仕事もできる限り手伝いたいと思っているので、決めかねていまして……」「そうね、拠点を移せば移動の時間は節約できるかもしれないけれど。京都の事務所まで支えているなんて本当にお忙しいのね」毎週のように時間を気にしながら日帰りで往復するのは、精神的にも肉体的にも削られるものがあるはずだ。私が労いの言葉をかけると、真珠さんは大したことないとでも言うように、柔らかい笑顔を見せた。「いえ、私は全然。……育ててくれた両親のためにも、一刻も早く仕事を覚えて恩返しがしたいんです」「真珠さんは本当に親孝行ね。ご両親に大切に、深い愛情を注がれて育ったのが伝わってくるわ。真っ直ぐで温かくて……なんだか羨ましい
Read more

464.株主

瑛斗side三村が主要株主となり経営権を握ると宣戦布告して以来、一条ホールディングス社内の空気は一変した。 廊下ですれ違う役員たちの視線は泳ぎ、影では俺と三村のどちらの陣営に付くべきか情報交換が秘密裏に行われているという。派閥抗争が泥沼化し、会社が二分されるのは、もはや時間の問題だった。(三村は、一体誰の支持を得ているんだ……。会長は以前、三村の副社長就任は大口株主たちからの強い推薦があったと言っていた。その「推薦者」こそが、三村の背後に潜む黒幕に違いない……このことを会長にも報告して、一条家として対策を練らなければ)会長の秘書に連絡を入れて予定を組んでもらう。最近の会長は、グループ企業の視察や政財界の会合で外出が続いており、社内にいる時間は極めて短い。それでも、なんとか明日の午前中に三十分だけ時間をねじ込んでもらうことができた。翌日、最新の株主名簿を手に会長室の扉を叩いた。 会長は来客用のソファに腰を掛けており、俺にも座るよう顎で促した。「お前からわざわざ打ち合わせを求めてくるとは珍しいな。その表情を見る限り、いい報告ではなさそうだが。……一体、何があった」「はい。単刀直入に報告いたします。副社長の三村ジョニーが、一条グループの経営権乗っ取りを画策していると役員会議の場で表明しました。現在、役員たちの間で動揺が広がっています」「……乗っ取り
Read more

465.密談

瑛斗side「三村を推薦したのは、多岐(たき)という株主だ。しかし、多岐の持ち株比率は三パーセントに過ぎん。三村の言う『三十五パーセント』という数字には、到底及ばないはずだ。あとの三十二パーセント、一体どこが通じているというんだ」会長は苦渋に満ちた表情で手元の資料を指で叩いた。 「……多岐? この株主は、一条とビジネス上で深い取引があったり、過去に何かしらの関係がある家系なのですか?」俺の問いに会長はゆっくりと首を横に振る。 「いや、直接的な仕事上の関係はない。……そう言えば、多岐家と財前家は同郷で古くから縁が深いと聞いたな。確か、婚姻関係も含めた一族ぐるみの繋がりがあったはずだ。財前家が保有する五パーセントを合わせれば、それだけで八パーセント。……だが、それでもまだ足りないな」「……ええ。残り二十七パーセント。考えたくはありませんが、三村は外資系の証券会社出身です。三村が海外のヘッジファンドや機関投資家に独自のパイプを持ち、情報を操作して一斉に買いに回らせていたら、比率は一気に跳ね上がります」「そうか、それは厄介だな。海外投資家の動向は不透明な部分が多い。それこそ、実質的な支配者や資金力を特定するのは至難の業だ」日本株における海
Read more

466.密会

瑛斗side会長の前では「何としても食い止める」と言ったものの、実際のところ、俺の足元はひどく心許なかった。 役員たちの混乱と分裂、社員の不祥事などこのところの一条は、問題がいっぱいだ。すべては三村たちが故意に仕掛けた罠だが、社長として未然に防がなくてはいけないことでもある。 (くそっ…役員会で三村を降ろすことに成功したのに、肝心の経営権を奪われたら、一条は本当に終わりだぞ……) 先日の役員会で、三村を副社長から監査役へ転換させる方針は決定した。来週には株主たちへ臨時株主総会の招集通知を発送する予定だ。その議案の中に「副社長解任および常勤監査役への選任」を盛り込み、賛成多数を得られれば人事は正式に確定する。三村は「株主たちの猛反発が起きる」と豪語していたが、実務的な観点から言えば、その可能性は極めて低い。明確に三村を支持している多岐と財前家を合わせても、保有比率はわずか八パーセントで三村の降格自体はほぼ確実な情勢だ。だが、三村のあの余裕に満ちた笑みが、どうしても脳裏から離れない。奴らがどこかのタイミングで株式を大量取得し、実質的な過半数を握ってしまえば、監査役に棚上げされた三村が「オーナー」として返り咲くことになりかねない。(三村は最初から、
Read more

467.友情

瑛斗side俺は自分の目を疑った。出来れば見間違いだと思いたかったが、昼の明るい日差しが、残酷なまでに真実を突きつけてくる。こんなに明るい日差しの中では、間違えようがなかった。その相手も三村に気づき、小さく会釈をして小さく一歩三村に歩み寄っていった。三村は、微笑むと大きく右腕を前に出してエスコートするように先導する。二人に感づかれないよう、ビルの影に身を潜めながらスマホを少しだけ出して、震える手でカメラを起動する。レンズを顔が認識できるように注意しながら、最大限ズームにして二人の様子をシャッターに収める。(本当は、こんな真似はしたくないが……。よし、顔もしっかり映っている……。これで証拠になるだろう)二人は待ち合わせ場所からすぐの場所にあるイタリアンレストランへと静かに入っていく。二人の姿が完全に見えなくなってからも、俺はしばらくその場を動けなかった。 三村の密会相手―――――。それは、北條湊から厚い信頼を得ている仕事のパートナーであり、華とも親しい女性。そして何より空とただならぬ雰囲気になりつつあった長谷部真珠だった。「なんで彼女が三村と? 嘘だろ…………」俺の脳裏には、三村にエスコートされて店に入る真珠の姿とそれを知った時に失望する空の
Read more

468.真相

空side「相原さん、お疲れ様です。突然ですが、来週の水曜日に御社の近くへ伺うことになりました。もし相原さんのご都合がよろしければ、少しお会いできたら嬉しいです。 長谷部真珠」彼女からメールが届いたのは、十日前のことだった。 前回は、当日にいきなり予定を聞かれたが、今回は十日前と余裕を持った連絡。その緩急に少しばかり戸惑いながらも、手帳を確認するとその夜の予定は白紙だった。僕は迷うことなく、快諾の返信を送った。帰りの新幹線の時間を尋ねると、翌日も都内で商談が入っているため、珍しく一泊する予定なのだと教えてくれた。いつも京都からこちらへ来ては、慌ただしく新幹線で帰っているようで、ゆっくりと東京で夜を過ごす機会がないから嬉しいと喜ぶメールに、僕の頬は緩んでいた。(長谷部さん、これまではずっと日帰りだったのか。移動だけでも往復四時間以上かかる。営業とはいえ相当な負担だったろうな。……それにしても、ゆっくりできる貴重な夜に会う相手に、僕を選ぶなんて……)メールを読み終えると、自然と指は返信ボタンをタップしていた。気づいた時には、「お時間を気にせずに過ごせるなら食事でもいかがですか?」と彼女を誘っていたのだった。送信ボタンを押してから返信を待つまでの数分間、冷静になろうと自分に言い聞かせていた。 (僕に連絡する前に、当然、北條先生や華さんにも声をかけて断られたのかもしれない。華さんにはお子さんがい
Read more

469.接近

空side都心の一等地にありながら隠れ家のような静寂を保つ人気の創作和食店。せっかくならば予約しないと入れないすこし良い店にしようと、彼女から連絡が来てすぐに予約をしたのだ。店に入り名前を言うと、すぐに個室へ案内された。「わあ、素敵なお店。こんなオシャレなお店も知っているなんて、さすが相原さんですね」キラキラして喜ぶ彼女だが_三村との接点を知った今、僕にはそれすらも心をほぐすための演技ではないかと勘ぐってしまう。「……長谷部さん、今日は弊社の近くに用事があると言っていましたよね?日中は、どちらに行かれていたのですか?」先付の料理が運ばれてきたタイミングで、あえてストレートに質問をぶつけると、彼女は驚いて箸を動かそうとした手が、一瞬止まった。「ええ。実は、相原さんとお会いしたパーティーで御社の三村副社長ともご挨拶をして、その時に名刺を交換したんです。一条は飲食関連は携わっていないので、こちらからご提案できることがないので、そのままになっていたのですが、二週間前、三村副社長からご連絡を頂いだんです」「三村から長谷部さんにですか?一体、何の用件だったんですか?」「それが……、一条ではなく電報社グループの子会社との取引の打診でした」
Read more
PREV
1
...
4546474849
...
52
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status