龍太郎に視線を注いだまま、絢斗が唇を噛んだ。 「そうか、そうだよな。だからおまえといた思い出は、こんなに後になってからも、ずっと心に残っているのか……。なるほどなぁ、悔しいな……。雪音、おまえはおれのこと、少しでも好きでいてくれたか?」 絢斗の目のふちは赤い。 「……好きだったよ。でなきゃ、こんなに長く一緒にはいなかったよ……」 「そうだよな。身体の相性も良かったもんな。……おれとのこと、忘れないでくれよ」 絢斗がふっと片方の口角をあげて笑う、龍太郎への当てつけらしい。 「やめてよ! こんなところでバッカじゃないの!!」 「ふ、歪んだ愛だな。見苦しいぞ、絢斗!! おれは雪音を何度も昇天させているからな、貴様はおれには勝てん!!」 おぉぉい!!! なに言い出したんだ、龍太郎は。 昇天させられたことなんかないよっ!! てか、そういうこと、してないじゃん、まだ。 あ、まだって言っちゃった!! とにかくこの話題、もうやめてよ……。 「雪音、顔が赤いぞ……。そうか、おまえ、このひとと、やっぱりもうそういう関係なんだな。そりゃそうだよな、泊まってる時点で、そうか……」 絢斗の視線が|彷徨《さまよ》う。 ち、違う。……がここはもう|敢《あ》えて否定しない。する必要もない。 「さぁ、雪音、行こうか?」 龍太郎の背景にピンクの薔薇が咲き誇る。 「……雪音を幸せにしてやってください」 絢斗が龍太郎を正視しながら、大きな声で叫んだ。 「ふん、おまえに言われるまでもない。雪音はおれが一生涯かけて幸せにするから安心しろ。おまえはきちんと結婚して子育てをしろ。いいか? 子供にだけは悲しい思いをさせるなよ!」 最後の言葉は母子家庭だった龍太郎の思いが、詰まっていたように感じた。 突然、周りから拍手喝采された。気がつくと噴水の周りにたくさんのひとが集まっていた。 「なんだ。ドラマの撮影じゃなかったのか。すごいな、俳優かと思ったぞ」 「兄ちゃん達、幸せになれよ」 「あんた、父親になるのかい? 若いけど、きっとやっていけるさ」 「フラれたお兄ちゃんも頑張れよ~」 あちこちから声援が聞こえる。 二人の声が大きいので、ひとが集まったのと、龍太郎が目立ち過ぎだ。 ぎゃあ!! いつからこんなにひとが……!! 恥ずかし
Terakhir Diperbarui : 2025-07-28 Baca selengkapnya