「あ、あのそれで治療費と、ここの個室料金はいくらですか?」 私は光太郎の返事が待ちきれない。 たぶん治療費は入っている保険でどうにかなるだろうが、このオプション的な特別個室料金は、保険では賄《まかな》えない。 確実に自腹だ。たった今、会社を辞めることにした人間にはきつい。 「ああ。ここのお金は要らないよ。体調が悪い中、龍太郎に連れ回されたんでしょ? そう聞いてるけど……。自分のせいだって」 光太郎の返事は意外なものだった。 龍太郎は自分のせいだと思ったらしい。 「いや、それは違います。私に原因がありますから、入院費用は自分で払います。保険がある程度はきくと思うし……」 「え~、でも龍太郎がねぇ、自分で払うって言ってるし……。どうしても払いたいなら、龍太郎に払えばいいんじゃない? 僕はどっちでもかまわないから」 龍太郎、どうしてそこまで……。 日頃から、自己管理ができてなかった私の責任だよ。 「それでさ、過労になりそうな原因は? 思い当たることがあるかなぁ? 過労も甘く見てると命を落とすからね」 命……。光太郎の言葉は私の胸に刺さった。 「まぁその……プライベートで色々あって悩んで、それが仕事にも影響を与えて、悪循環を生んでしまったんです。最近夜勤の後も、ぜんぜん寝れてなくて……」 「そうかぁ。悪循環かぁ。う~ん……」 光太郎は腕組みしながら、考え事をしている。モデルみたいに奇麗な肌だ。 「なら、もういっそ、夜勤のない仕事に変えて、環境を整えるようにした方がいいね。なんてったって身体が一番だし」 光太郎はあっけらかんと言い放った。 「そうですね。夜勤のある仕事はさっき辞めました。私も自分の生活を見直してみます」 さすがに左遷《させん》のことは言えない。自分が悪いのはわかってるけど、これ以上、惨《みじ》めになりたくない。 「あ、そうなんだ。いいんじゃない、まぁ人生色々あるし。英断だと僕は思うよ」 光太郎はけろりと言葉にする。 「これからは自分の体をもっと大切にします。はい」 このひとと龍太郎、性格、ぜんぜん似てないな。龍太郎はこんな感じじゃないもんな。なんていうか、口下手な部分があるっていうか……。 「それで、次の仕事は? なにか当てがあるの?」 光太郎はなにか含んだ言い方をしてきた。 「
Last Updated : 2025-06-17 Read more