「なぁ、この家さ、クッションとかないの? おれ、手が疲れてきたわ」 龍太郎が寝転びながら、隣に正座している私に話しかけてきた。 刑事もののドラマスペシャルに、龍太郎は釘付けだ。 「……ないよ。私が使ってる普通の枕でいい?」 私が枕を取りに立ちあがろうとすると、龍太郎に手をつかまれた。 ……な、なに? 心臓が跳ねた。龍太郎の手は温かくて大きい。 「おまえでいいわ」 そう言うと、私の膝にひょいと図々しく頭を乗せてきた。 「ちょ……、なにするの⁉︎」 私はびっくりして顔が赤くなる。 「いや、ちょうどいいところに枕があったから。それにしても、やっぱりこのバディの組み合わせが一番好きだわ、おれ」 龍太郎はテレビに夢中だ。 こっちの気持ちなんて、てんでお構いなしだ。 これではまるで、恋人同士みたいじゃないか……。 現に彼の顔を見ても照れている様子もなく、ひとの膝枕を使い、当たり前のように|呑気《のんき》にテレビを見ている。 ……龍太郎はきっと極度の寂しがり屋で、こういうことをするんだ。 甘えられる相手が欲しいんだろうな……。 龍太郎が私の太ももを撫でてきた。 「おまえさ、もう少し太れよ……。痩せすぎだぞ。おれはもっと弾力のある太ももが好きなん……」 私は即座に立ち上がり、龍太郎の頭が畳の上にドスンと音を立てて落ちた。 「信じられない、この変態!!」 もう二度と膝枕なんかしないもん! ほんとに龍太郎はスケベなんだから!! *** 夕食の時間になり、私がご飯を作る姿を龍太郎が興味深々に見ていた。 そんなに見ないでほしい……。 穴があきそうなほど、彼はリビングから私をまじまじと見ている。 もっと可愛いエプロンを買っておけばよかったと後悔した。 今、身に着けているのはデニム生地の普通のエプロンだ。 おしゃれといえば、おしゃれだが、男のひとは花柄とかフリルがついた女らしいエプロンが好きなのではないだろうか? ま、自分にそういうデザインが似合うかどうかと言われれば、疑問だが。 龍太郎の視線が気になる。もぉ! なんでそんなに見てるのよ! 心配しなくても、少しは料理ぐらいできますよ~だ。 「あ、あんまり見ないでくれる? 緊張するから」 私は抗議したが、龍太郎は愉しそう
Last Updated : 2025-07-04 Read more