結局、隣の部屋の謎の物音は一時間ぐらい続いたが、その後は静かだった。 ふかふかのお布団、気持ちいいな……。 置き時計の目覚ましをセットして、私は眠りについた。 ここ数日の疲れがどっと出たようで、朝までぐっすり眠った。 次の日、私は六時前に起きた。メイド初日目。 今から仕事着に着替えなければならない。 昨夜二人でご飯を食べている時に、仕事中はクローゼットの中に入っているものを着ろ、と命令されたのだ。 それが仕事着だと。それ以外は認めないと。 クローゼットを開けた瞬間、私は目を丸くした。 ……なんだ、これは……。こんなの着たこともないんですけど……。 クローゼットの中には白いフリルのエプロン、膝下まである黒いワンピース。そこにはクラシカルな、ブラックカラーのメイド服が入っていたのだ。 コスプレ用ではないらしく、生地がとても良い。 まるで海外の映画に出てくるような、そんな上等なメイド服だった。 こんなこったろうと思った……。 私は割り切って、そのメイド服に袖を通した。龍太郎は八時前に家を出るらしく、今から急いで朝ごはんの支度をしなければならない。 鏡を見ながら、フリルの可愛らしい白のカチューシャを合わせる。 あまりの似合わなさに、乾いた笑いとともに眉が下がる。 こういう服はものすごい美人が着るからこそ、映えるのだ。 「こんな服を私に着せて楽しいのいだろうか……」 私は鏡を見て、ため息をついた。 仕事着に関してはあきらめ、急いでキッチンに向かう。白いタイル調のキッチンは洋風で本当に可愛らしい。 「簡単なものしか作れないけど、頑張るか」 「……良い匂いがするな」 二階から龍太郎が降りてきた。ジャージの上は着ていなくて、グレーのTシャツ姿だった。 寝癖がついていて、それがまたなんとも可愛らしい。 なんだか新鮮だ……。 「お、おはよう……ございます」 なんとなく、かしこまる。なにもしていないのに、なんだか恥ずかしい。 なんやかんやで好きなひとと、ひとつ屋根の下に住んでいるのだ。 「おはよう。敬語は使わなくていいぞ」 龍太郎が私を|一瞥《いちべつ》して洗面台に向かった。 え? なんの感想もなし? 自分でこんな服を準備しておいて?? 私は真っ白にうまく炊けたご飯
Terakhir Diperbarui : 2025-07-17 Baca selengkapnya