お姉ちゃんと私の彼氏・九条玲司(くじょう れいじ)は、ずっと相性が最悪だった。 チャラくて女癖の悪い「京市の御曹司」が、私のために心を入れ替えるなんて、ありえないって信じてなかった。 婚約が決まったあとでさえ、お姉ちゃんは二人の交際に猛反対してた。 だから私は、どうしても納得してもらいたくて―― 夜中にこっそり小さいアカウントサブ垢を作って、彼氏を試すことにした。 玲司の返事はずっと冷たくて、どこまでも突き放すような態度だった。 ……それが、むしろ安心材料になって、私はほっとしてたのに。 そのとき、玲司から音声メッセージが届いた。 「だから言っただろ?お前たち姉妹以外、女遊びなんかしないって。 桜、そんなに欲求不満ならさ、俺が結婚したら、誰が満たしてやるんだ?」 桜って――お姉ちゃんの名前だった。 そのメッセージを聞いた瞬間、私の全身の血が凍りついた。 夢じゃないかって思って、太ももをつねったけど、痛みはちゃんとある。 心臓の音がうるさいくらいに鳴り響くなか、現実が私を殴りつけてきた。 玲司はお姉ちゃんと関係を持っていた。そして私は、その代わりだったってこと。 ……そんなの、嘘でしょう? 二人って、いつも喧嘩ばっかりしてたじゃない。 お姉ちゃんはいつも玲司のことを「家柄だけで中身スカスカの遊び人」って言ってたし、 玲司はお姉ちゃんのことを「うるさいだけのトラブルメーカー」だって嫌ってた。 そのたびに私は、お姉ちゃんに「別れたほうがいい」と諭されてきた。 そのとき、スマホが震えて、思考が中断された。 玲司からの通話。私は呆然としたまま、拒否ボタンを押す。 すぐにメッセージが届いた。 【なんで出ない? まさか、泣いてたりして? 「夜色」別荘に来いよ。今夜は俺が、たっぷり慰めてあげるからさ。 大丈夫。結婚なんて形式的なもんだから。 まどかに用意したものは、全部お前にもやるよ。 俺自身も、ね】 スマホの画面を見つめたまま、耳鳴りがひどくて、頭の中が真っ白になる。 涙が止まらなかった。 ぼんやりとした視界の中、ふと――最初にお姉ちゃんをあの別荘に連れて行った日のことを思い出した。 場所も教えてないのに、彼女は勝手知ったる様子で洗面台も収納棚も探し当て
Baca selengkapnya