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このプロポーズ、姉と寝た彼からだった

このプロポーズ、姉と寝た彼からだった

By:  時間の歌Completed
Language: Japanese
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お姉ちゃんと私の彼氏は、ずっと相性が最悪だった。 チャラくて女癖の悪い「京市の御曹司」が、私のために心を入れ替えるなんて、ありえないって信じてなかった。 婚約が決まったあとでさえ、お姉ちゃんは二人の交際に猛反対してた。 だから私は、どうしても納得してもらいたくて―― 夜中にこっそりサブ垢を作って、彼氏を試すことにした。 玲司の返事はずっと冷たくて、どこまでも突き放すような態度だった。 ……それが、むしろ安心材料になって、私はほっとしてたのに。 そのとき、玲司から音声メッセージが届いた。 「だから言っただろ?お前たち姉妹以外、女遊びなんかしないって。 桜、そんなに欲求不満ならさ、俺が結婚したら、誰が満たしてやるんだ?」 桜って――お姉ちゃんの名前だった。

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Chapter 1

第1話

お姉ちゃんと私の彼氏・九条玲司(くじょう れいじ)は、ずっと相性が最悪だった。

チャラくて女癖の悪い「京市の御曹司」が、私のために心を入れ替えるなんて、ありえないって信じてなかった。

婚約が決まったあとでさえ、お姉ちゃんは二人の交際に猛反対してた。

だから私は、どうしても納得してもらいたくて――

夜中にこっそり小さいアカウントサブ垢を作って、彼氏を試すことにした。

玲司の返事はずっと冷たくて、どこまでも突き放すような態度だった。

……それが、むしろ安心材料になって、私はほっとしてたのに。

そのとき、玲司から音声メッセージが届いた。

「だから言っただろ?お前たち姉妹以外、女遊びなんかしないって。

桜、そんなに欲求不満ならさ、俺が結婚したら、誰が満たしてやるんだ?」

桜って――お姉ちゃんの名前だった。

そのメッセージを聞いた瞬間、私の全身の血が凍りついた。

夢じゃないかって思って、太ももをつねったけど、痛みはちゃんとある。

心臓の音がうるさいくらいに鳴り響くなか、現実が私を殴りつけてきた。

玲司はお姉ちゃんと関係を持っていた。そして私は、その代わりだったってこと。

……そんなの、嘘でしょう?

二人って、いつも喧嘩ばっかりしてたじゃない。

お姉ちゃんはいつも玲司のことを「家柄だけで中身スカスカの遊び人」って言ってたし、

玲司はお姉ちゃんのことを「うるさいだけのトラブルメーカー」だって嫌ってた。

そのたびに私は、お姉ちゃんに「別れたほうがいい」と諭されてきた。

そのとき、スマホが震えて、思考が中断された。

玲司からの通話。私は呆然としたまま、拒否ボタンを押す。

すぐにメッセージが届いた。

【なんで出ない?

まさか、泣いてたりして?

「夜色」別荘に来いよ。今夜は俺が、たっぷり慰めてあげるからさ。

大丈夫。結婚なんて形式的なもんだから。

まどかに用意したものは、全部お前にもやるよ。

俺自身も、ね】

スマホの画面を見つめたまま、耳鳴りがひどくて、頭の中が真っ白になる。

涙が止まらなかった。

ぼんやりとした視界の中、ふと――最初にお姉ちゃんをあの別荘に連れて行った日のことを思い出した。

場所も教えてないのに、彼女は勝手知ったる様子で洗面台も収納棚も探し当てた。

お姉ちゃんのスマホはすでにWi-Fiに繋がっていて、「たまたままどかのアカウントのパスワードを入力しちゃったの」なんて言い訳してた。

それに、玲司が飼ってるコーギー。

私にはあんなにそっけなかったのに――お姉ちゃんにだけはしっぽを振って、すり寄ってた。

「まどかの匂いがついてるからかもね」って笑ってたけど……

あのコーギー、私にはそっけないくせに――フリスビーを投げようが、骨ガムを差し出そうが完全スルー。

なのに、お姉ちゃんが現れた瞬間、しっぽをぶんぶん振って喜んでた。

それだけじゃない。お姉ちゃんの部屋には、私と全く同じ限定バッグに、オーダーメイドのドレスやジュエリーがズラリと並んでる。

一部は、玲司が「お義姉さんに気に入ってもらいたいから」って、私に預けてたものだった。

でも他のは?お姉ちゃんは「追いかけてくる男たちからのプレゼントよ」なんて笑ってたけど、

私が食いつくように誰からか聞いたとき、いつもごまかすようにはぐらかされた。

そのときは、照れてるんだって思ってた……まさか、後ろめたかっただけなんて。

――前に三人でショッピングに出かけたときのことが頭に浮かぶ。

ふたりは、私の目の前でやたらと張り合って言い合ってたけど、突然笑い出して、その場の空気が和やかになることもあった。

私はそれを「やっと仲良くなってきたのかも」って、のんきに喜んでた。

……ほんとは、私が「演目」の一部で、バカにされてただけだったのに。

涙で目が腫れ上がるまで泣いて、頭もクラクラしてた。

でも、気づいたら車のキーを握って、「夜色」へとアクセル全開で飛ばしてた。

あそこは玲司のプライベートクラブで、今日は彼のバチェラーパーティーらしい。

そして――やっぱり彼は、そこにいた。

驚いたことに、お姉ちゃんまで来ていた。

私はフェンスの外から、ふたりを見つめていた。

露天のバーカウンター。玲司の顔はほんのり赤く染まっていて、目は酔いでトロンとしていた。

その腕が、お姉ちゃんの首元をやわらかく抱いて、なにか耳元でささやいてる。

お姉ちゃんはイヤそうに口を尖らせながらも、ふざけた仕草で彼のネクタイを指でくるくる巻いた。

周りの男たちが、からかうように笑って声を上げる。

玲司はふっと前髪をかき上げて、わざとらしく後ろに身を倒した。まるで、計画通りに事が進んだって顔で、イタズラっぽく微笑んでいた。

「きゃっ」とお姉ちゃんが悲鳴をあげたかと思えば、そのまま玲司の膝に倒れ込んだ。

玲司は彼女の細い腰を抱き寄せて、薄暗い照明の中――その唇に、キスをした。

空気が一瞬で変わる。

周囲からは歓声と口笛。誰かがシャンパンを開けて、誰かがスマホを掲げていた。

さらには、こんなふざけた言葉まで聞こえてくる。

「玲司、明後日には妹と結婚するんだろ?今日になって姉とイチャつくのはマズくね?」

「ハハッ、みんな、あんまり言うなよ。今夜玲司が桜とヤったって、まどかにはバレないってさ」
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