グエン・エンバーは事実上、死んだ。 広場の大捕物の成功を祝い、関わったメンバーで極秘に飲み会が開かれた。 アレックスと私も後から招待されたの。だって鐘楼のてっぺんから飛んだのは、美しく女装したグエンと、顔を隠して手配書の男のフリをしたアレックスだから。 アレックスとグエンの二人はアラバマの孤児院で育ち、幼い頃からスパルタで体を鍛えさせられた仲らしい。孤児院……というか、あんな曲芸みたいな真似できるなんてサーカスの養成所なのでは? いくら悪人だとしても、人が亡くなったのには変わりない。店を閉めるようノーマンの部下が島中に警告するという、緊急事態になった。 お祭り騒ぎは鎮火し、無法島の忙しさも半減した。 マリアが遅れてやってきて、私の隣に座る。男性が多い中、マリアの自然体の美しさは目を引く。初対面ではくねくねしてたし派手な化粧で、女の敵!なんて思ったのに。化粧を落とすとまるで別人。「二人とも今夜はありがとうね! あっ、あと島についたときは悪かったわね。アレックスにちょっかい出しちゃって」「いえいえ。こちらこそすみません。全く大丈夫です!」 私は深くお辞儀をする。マリアはノーマン・ダークの娘なんだから。嫌われたくないわ。「お仕事だからね、あれも。レベッカ〜、妬いてたわね。ほほほ。あなたってウブなのねぇ〜」「ちょっ、やめて下さいって!」 ローズマリーみたいなこと言わないで。恥ずかしくなるから。「そんなことより体は大丈夫ですか?」 「大丈夫、たくさん寝たから。明日も舞台で踊らないと。そうだ! レベッカ、まだ見てないなら招待するわ」「いいんですか?」 アレックスが私の肩を強く掴み、自分のほうに倒した。その握力にドキッとしてしまう。「そろそろ俺たちは宿に戻る。へとへとだ」「あらあら。もっと話したかったわ。レベッカ明日、またね」 立ち上がるアレックスを、街の人々は寂しがる。でもグエンだけは満面の笑み。「おー、早く帰れよ。よそ者」「グエン! あんたもそうだったでしょ?」 マリアがグエンの頭をひっぱたいた。皆が大笑いする。「あ、俺の本名はグエン・サンチェスだからな。修道院の養子だったんだ。追い出されたけど。二人とも間違えるなよ」 なるほど、エンバーはもともといないのね。 アレックスは私を強引に引っ張って、店の外に出た。なんだか嬉しか
Terakhir Diperbarui : 2025-07-12 Baca selengkapnya