その日を境に、義人の「贖罪」が始まった。最初は、毎日違う花を遥の会社に届けてきた。バラ、ユリ、ヒナギク——など、どの日も同じものはなく、まるで尽きることのない謝罪の気持ちを訴えかけるかのようだった。やがて、花は高級なハンドメイドバッグ、オーダーメイドのジュエリー、限定版の香水へと変わっていった。だが、どれほど高価な贈り物でも、遥はすべて受け取りを拒否した。時にはそのまま突き返すことさえあった。この日も、遥は秘書に義人からの贈り物を返すよう指示し、オフィスを出たところで、廊下に絵梨の姿があった。「江口さん、相変わらずお高くとまっていらっしゃるんですね。福西社長がこんなに尽くしているのに、あなたは少しも感謝しないんですか?」その口調は柔らかいが、内に秘めた棘は明らかだった。「本当に彼のことを愛してるなら、彼にこんな苦労をさせるはずないでしょ」遥は冷ややかな目で彼女を見つめ、表情一つ変えずに答えた。「久木さん、今日はわざわざ愛し方を教えに来たわけ?」「ただ思っただけです。福西社長のことを大切に思っているなら、もっと優しくすべきじゃないかって。彼があなたに贈り物をするのは、それだけあなたを愛している証拠よ」絵梨は首を傾げて、無邪気なふりをしながら言った。「それに……彼、もう以前の彼とは別人みたいなのよ」遥の瞳が一瞬だけ冷え込む。「久木さん、まず第一に、私はあなたの説教なんて必要としていない。第二に、彼がどう変わろうと、あなたには関係のないこと。あなたは彼のアシスタントなんだから、自分の仕事だけしていなさい。口出しは無用よ」絵梨の顔から笑みが一瞬消えたが、すぐに楚々とした表情に戻した。「江口さん、悪気はないんです。ただ、あまりにも冷たくて……福西社長が本当に気の毒で」遥は顎を上げ、冷笑を一つ浮かべた。「気の毒?久木さん、あなたは何者?そんなことを言える立場かしら?」絵梨の顔色がサッと青ざめ、口を開けたが、言葉は出なかった。その夜、遥が帰宅したばかりの頃、昭代から電話がかかってきた。「遥!ネット見た?大変なことになってる!」遥は眉をひそめ、送られてきたリンクを開いた。動画の中、会社の休憩室らしき場所で、絵梨の声が響いていた。「江口さん、福西社長の贈り物を全部突き返したの。福西社長、この頃
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