遠くで雷鳴が聞こえる。小雨になったものの、不安定な大気は続いているようだ。台風でも来ているのかもしれない。ベッドでごろごろと寛いでいたが一度起き上がり、寝室の窓のブラインドを全開にした。山の斜面に建っているマンションは周辺では一番高さがあり、窓からは、空も市街地も見渡すことができる。それに気付いたヒューゴが、リビングで灯していた小さなキャンドルだけを残して照明を落とし、「雷鑑賞か」と言いながら寝室にやってくると、おれの隣で肘を立てて頭を支えながら横臥する。「あ、光った」細い閃光が空から地上に突き刺さる。ヒューゴは、仰向けのまま窓の外を見ているおれの頭を撫でてくれる。髪をすくうように往復する指先が心地良い。しばらく無言のまま、雷光でフラッシュのように白む空を眺める。頭からじんわりと伝わる温もりに癒されながら。「疲れてる?」「いや、とてつもなくリラックスしてるよ。まだ休みはあるし、おまえが傍にいるし」髪をすくうヒューゴの手に自分の手を重ね、長く筋張った指を撫でた。「透」とヒューゴは小さくおれの名前を呼んだ。「少しだけ、触れてもいい……?」そう耳元で囁かれ、一瞬でカッと身体が熱くなってしまい思わず目を瞑ると、ヒューゴはゆっくりおれに覆いかぶさってきた。腰が触れ、背中に戦慄が走る。「言っただろ、なにをしてもいいって」「少しずつ、ね」ヒューゴは腕をついておれを見下ろしたままで微動だにしない。窓から雷光が差し込み、青い瞳の奥がシルバーに輝く。吸い込まれそう。「透はとてもきれいだ」「全部おまえのだよ」おれがそうささやくと、ヒューゴは照れたように優しく微笑みキスをしてくれる。でもすぐに離れてしまい、おれは広い背中に腕を回して引き寄せた。遠慮と情熱のそれぞれを持て余して悩むヒューゴは魅力的だ。どうにでも好きなようにできると知っているのに。軽く口を開くと熱い舌がおれの舌を絡め取る。今夜のキスは、いつもより柔らかく、
최신 업데이트 : 2025-09-04 더 보기