紗夜はそれを聞いて、軽くうなずいた。「確かにね」彼の言うことはもっともだった。ただ、紗夜自身は一つの分野を深く掘り下げ、極めていくタイプで、幅広く手を出すよりも、精度を高めることを良しとする人間だ。それでも、これまで彼に助けられたこともあり、試用の機会だけは与えることにした。飲み終えた椀を彼に返しながら言う。「行きましょ」「はい」出雲はようやく視線を戻し、エンジンをかけてホテルへ向かった。彼はときおりバックミラーに目をやり、目を閉じて休んでいる紗夜の横顔を見ていた。白い肌にうっすらと赤みが差し、まるで酒に浸したライチのようだった。「本当は......物だけじゃなくて、人も同じなんですよ」出雲は小さく唇を緩めた。ホテルに着くころには、紗夜はすっかり眠り込んでいた。出雲はしばらく彼女を見つめ、やがて後部座席に回り、そっと手を伸ばす。その指先が彼女の頬に触れそうになった瞬間、紗夜がふいに目を開けた。「なに?」「着きました」出雲は何事もなかったかのように手を引っ込める。紗夜は体を支えながら車を降りたが、足元がややふらつく。出雲がすぐに手を伸ばして支えた。「気をつけてください」彼の腕が彼女の肩に回り、自然と胸元に引き寄せられる形になる。紗夜は一瞬、戸惑った。「立っていられないなら、上まで送りますよ」出雲がそう言いかけた、そのとき――。「紗夜さん!」ちょうど結萌が駆け寄ってきて、紗夜を受け取った。「ありがとうございます、出雲さん。あとは私が送りますので」出雲はそこで手を放し、保温ポットを結萌に渡す。「社長、今夜は結構飲んでます。寝る前に酔い覚めのスープを飲ませてあげてください。じゃないと、明日頭が痛くなります」「分かりました」結萌はそれを受け取り、紗夜を支えながら離れていった。二人の背中が回転ドアの向こうに消えるのを見届けてから、出雲は紗夜のキーをバレーパーキングの係員に渡した。「お預かりしていたお車のキーです」係員は別のキーを彼に差し出す。同時に、隣にはポルシェ・カイエンが停まっていた。出雲はキーを受け取り、車に乗り込むと、そのまま走り去った。......「紗夜さん、気をつけてください......」結萌は力が足りず、保
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