彼の眉はきつく寄せられており、工事の進み具合に明らかに不満を抱いている様子だった。【2024年11月5日 曇り設計図を十八回目の修正。これなら彼女も気に入るはず】三ページ目。写真の中で彼は白い手袋をはめ、年老いた花農に付き添いながら、不器用にバラの接ぎ木を学んでいる。手にしたハサミは慎重そのもので、その表情は、千億規模の契約書にサインするとき以上に真剣だった。【2024年12月1日 小雪ピエール・ドゥ・ロンサールの根が、ようやく活着した】四ページ目。彼の自撮り写真。顔にも髪にも泥が跳ね、ひどくみすぼらしい姿なのに、その深い瞳には隠しきれない笑みが満ちている。【2025年3月18日 雨今日は自分で畑に入り、彼女の一番好きな「ジュリエット」を植えた。来年、丘いっぱいに咲いてくれたらいいけど】......一枚、また一枚。紗夜はただ静かに、ページをめくり続けた。荒れ果てた土地から、工事の開始へ。一本目のバラを植えた日から、今のこの咲き誇る景色へ――このアルバムには、このバラ園が無から形を成し、荒野から花園へと変わっていく、そのすべての過程が刻まれている。そして同時に――彼女の知らない無数の昼と夜の中で、この男が彼女のために注ぎ込んできた、すべての心血も。気づけば、彼女の目はすでに潤んでいた。金と権力でしか感情を表せない、不器用な男だと思っていた。そんな彼が、ここまで心を砕いて、こんなにも「役に立たない」のに、極限までロマンチックなことをしてくれるなんて。彼女は、最後のページを開いた。――白紙だった。文翔はそっと、金色の万年筆を差し出す。「これからの物語は」彼は彼女を見つめる。その深い瞳には、隠しきれない愛しさが満ちていた。「一緒に書こう」紗夜は涙を浮かべたまま、頷く。だが文字は書かず、そのペンで白いページに一枚の絵を描いた。そこには――背の高い男と、優しい女性。その間で手をつなぐ、小さな男の子。そして女性の腕の中には、さらに小さな、まだ布に包まれた赤ん坊。4人家族が、花畑の中で、笑い、はしゃいでいる。文翔はその絵を見つめる。そこに描かれた、少し間の抜けた笑顔の自分を見て――胸の奥が、これまでにないほどの満たされる感覚でい
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