開人が限界に近づいていたころ、羽彌が再び姿を現した。数ヶ月の間に彼女の顔の傷はすっかり癒え、かつての妖艶な雰囲気を完全に取り戻していた。一挙一動、すべてが誘惑的で、男を惹きつける仕草ばかりだった。開人にとって、長い間節制を強いられてきた今の状態で羽彌に再会するのは、実に危険だった。だが、彼はまだあの「協議書」の存在を忘れてはいなかった。もし自分が一線を越えてしまえば、全てが水の泡になる。財産すべてを失う。その現実はさすがに恐ろしく、開人は深く息を吸い込んで衝動を抑え、冷たい目で羽彌に言い放った。「何の用だ?もう終わったって言っただろ」「島岡様、そんな冷たいこと言わないでくださいな~」羽彌はふわりと開人の胸に倒れ込んできて、柔らかな声で甘えるように囁いた。「子猫ちゃんに会えなくて......寂しかった?」開人はもちろん、寂しかったとは言えなかった。それどころか、頭の中がぐらぐらするほど欲望に支配されかけていた。だが、今は南に完全には許されておらず、「協議書」の縛りもある。これ以上の過ちは許されない。そう思って、彼は心を鬼にして羽彌を突き放した。「出て行け、もう俺の前に現れるな。俺の心には南しかいない!」しかし羽彌は去らず、逆に開人の手を掴み、そのまま自分の服の中に押し当てた。「嘘ついちゃダメよ......?本当はすごく会いたかったくせに......」その瞬間、開人の呼吸は荒くなった。意志で押さえ込もうとしていたが、羽彌の誘惑はあまりにも強すぎた。彼女は彼の手を導き、身体を密着させ、甘く囁いた。「子猫ちゃんも、島岡様に会いたかったよ?ほら、触ってみてください」「反省してます。もう奥様に手出ししたりしません。これからは、島岡様だけの秘密の存在になりますから......」開人の喉がごくりと鳴った。彼は今にも理性が崩れそうになっていた。だが、名義上の全財産はすでに南のものになる。その恐れが、彼を最後の一線で踏みとどまらせていた。「羽彌......やめろ、俺たちはもう終わったんだ......もう裏切らないって決めたんだ......!」口では拒絶しつつも、彼の手はまだ彼女の身体に触れたままだった。自分から離そうとせず、ただ言葉だけの抵抗を繰り返す。羽彌は
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