ぎこちない雰囲気のまま小さな部屋にいると、心臓の音が聞かれてしまいそうで、私は急いでテレビをつけた。『大好き……』「え!!」 お互いの声が一緒になり、顔を見合わせた後、視線をテレビに向ける。今流行りの恋愛ドラマ。確か不倫の話だったような気さえするが、画面の中の女性が大胆に男性に抱きついた。どうしてこのタイミングでこんな場面なの。 泣きたくなる気持ちを耐えながら慌ててリモコンに手を伸ばすと、尋人もそれを取ろうとしていたらしく手が重なった。「ごめん」 今度は尋人がすぐに私の手を離した。それが少し寂しく思ってしまうのは、私の勝手な思いだ。 狭い床の上に、なぜか正座するような格好になってしまう。まさか尋人まで緊張してる? そんな考えが頭をよぎり、そっと彼を見れば、何もない壁に視線を向けていた。「尋人も緊張したりするわけ……ないよね……」 つい思ったことを言ってしまえば、彼は少し険しい表情をして、私の額を軽くデコピンをした。「弥生、お前バカだろ」 「なに?」 いきなりディスられる覚えなどなく、少しムッとして言い返せば、尋人は苦笑する。「緊張してるに決まってるだろ。告白して、嫉妬して、みっともないところばかり見せて、それでも部屋にこうして呼んでもらえた」そこで尋人は一度言葉を止めた。一気に顔が熱くなるも、真っ直ぐに向けられた瞳から目を逸らせない。「少しは期待したくなる」 「尋人……」 お互い無言で見つめあっていると、尋人は私の小指だけに触れた。「少しずつでいい。付き合うところから始めてくれないか?」 その言葉に私は抗うことなどできず、ゆっくりと頷いた。 「マジ? 本当に?」 何度も確認する尋人に、私はコクコクと頭を振ることしかできなかった。付き合おうとなったら、さあ、キスですか? 抱き合っちゃいますか?そんなことを思っていた私だったが、その期待?を裏切り、尋人は立ち上がった。「じゃあ、また連絡する」 「え?」 「きちんと鍵かけろよ」 私の返事はかなり間抜けな声だったと思うが、尋人は何も言うことなく、柔らかな笑みを浮かべて家から出て行った。その姿を見送ると、ずるずる私は床に座り込んだ。「何、この甘酸っぱいの……。いくつよ。私たち」こんな自分に驚きすぎる。いい年をして結婚までして、手を握られただけで真っ赤になるとか。
Terakhir Diperbarui : 2025-07-13 Baca selengkapnya