もうすぐ四月になり温かくなってきて、大きな窓ガラスから暖かな日差しが差し込んでいる。春は私が一番好きな季節だったー。去年までは。世間一般的に言われる私たちの“愛の巣”は、モダンな黒と白のインテリアで統一されている。都内のいたって普通のマンションの一室。昼食後、彼が淹れてくれた紅茶を前に、ダイニングテーブルに向かい合って座っていた。もうすぐ四月になり温かくなってきて、大きな窓ガラスから暖かな日差しが差し込んでいる。春は私が一番好きな季節だったー。こんな休日は昼寝をするのにはもってこいだな。そんなことを思いながら、淹れてくれたアールグレイに口をつけつつ、目の前の彼に視線を向けた。「明日で約束の一年だ。離婚しよう」私に向けた真面目な瞳を見た時、この話だろうと想像はついていた。だから、私の返事は決まっていた。「そうだね」静かに同意して感謝を込めて目の前の人を見つめる。仕事の時はきちんと整えられている髪が、休日の今日はサラサラとしている。こうしていると、今年三十歳になるとは思えないほど若く見える。堂前尋人《どうまえ ひろと》。私の一年だけの夫だ。会社では海外事業部の若きエースとして活躍し、家では家事も手伝ってくれる良き夫だ。身長百八十二センチの高い身長に、細身だが均整の取れた身体。まっすぐな瞳が私を見つめている。なんだかんだ優しい彼は、かわいそうに見えた私を見捨てることができなかったのだろう。「とりあえずお互いメンツは保てただろう?」「それは私だけでしょう」少し笑って言って見せれば、尋人はくすりと肩をすくめた。自分の本音を見せないときにするこの癖は、もうわかってしまった。そんなことを知らなければよかった、そう思うが、今更仕方がない。三条弥生、29歳。濃いブラウンの背中までの髪は、いつもはまとめているが、今日はなんとなく朝に念入りにセットした。この話をされる気がしたからだろうか。私たちが知り合ったのは7年前。同じ会社に入社した私と望月佐和子、そして一つ上の先輩だった尋人と金沢宗次郎。仕事を一緒にし、休みは何かと一緒に遊ぶようになるのに、それほど時間はかからなかったと思う。飲んだり、旅行にも行ったりした。そして二年ぐらい前に、宗次郎くんと佐和子が付き合い始めた。その時も尋人は「良かったな」とだけ言って笑っていた。もちろん私
Terakhir Diperbarui : 2025-06-26 Baca selengkapnya