「私は一生、あなたたち篠原家のまわりをぐるぐる回って、自分の友達も作れないってわけ?」ことはは冷たく言い放った。「『あなたたち篠原家』じゃない。『僕たちの家』だ」涼介は険しい声で訂正する。「商売なんてやめて、マルチの講師でもやったらどう?」「……」涼介は無言でため息をつき、穏やかな声に戻して言った。「ことは、変な意味じゃない。ただ、君が変な人間に騙されて傷つくのが心配なんだ。あいつらとは階層が違うし、遊び方も派手すぎる。翔真のことだって、22年も知っていて簡単に騙されたろ?むしろ毎日酒と女にまみれてる二世連中だ」ことはは、ゆきが言っていた涼介への評価を思い出した。本当にあいつは、口が上手くて、いつも自分が正しいと思い込んでて、しかも変態だ。昔は、そんなことに少しも気づかなかった。思考を切り替え、ことはは冷たく笑った。「篠原家以外は全員悪人だとでも思ってるの?翔真がこんなことになったのも、そもそもあなたたちの仕込みじゃなかった?」ことはがまだ翔真をかばう様子に、涼介の表情がさっと陰った。「じゃあ聞くが、もし彼に何の問題もなかったら、あんな簡単に引っかかるか?翔真が完全に無実だとでも思ってるのか?ことは、物事は一面だけ見ちゃダメだ」「もちろん翔真にも非はある。でも、あなたたちもあまり変わらないよ」ことはは涼介を睨みつけた。「その上から目線の説教にはうんざり」彼女の目には、はっきりとした嫌悪と冷たさが宿っていた。涼介は、その視線がとにかく気に食わなかった。彼はただ、ことはが昔のようにいつも楽しそうに自分の後をついてきて、「お兄ちゃん」という甘える声を聞きたいだけだった。だが、ことはが実の妹じゃないと知ってから、二人の間にはどうしても越えられない溝ができた。彼女は変わらず兄として尊敬はしてくれていた。けれど、子供の頃のあの無垢な気持ちはもうなかった。重い沈黙を破るように、前席のボディーガードが声を上げた。「篠原専務、神谷隼人の車が後ろについてきてます」ことはと涼介は、同時にバックミラーを覗き込む。ことはは落ち着いていたが、涼介の顔には不快感が露わだった。隼人に対して、涼介は翔真以上に殺意を覚え、顔を背けながら不満そうに聞いた。「ことは、君は本当に神谷隼人の女になったのか?」「どっちの意味で言ってるの?」ことはの
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