赤色の礼服を着たアッサム王子と、赤いドレスを着たリリアナ。 嫉妬を忘れて息を呑むほどお似合いの2人だった。 美しい2人が舞踏会の開幕を告げるダンスを始めると皆が一斉に注目した。 それと同時に僕に対する、嘲笑が始まった。 僕は一瞬にして婚約者を王子にとられた可哀想な男になった。 異様な視線を感じて隣を見ると、ミーナは僕の反応を楽しそうに見ていた。「ひゃあっ」 小さな悲鳴をあげる声が聞こえて、アッサム王子とリリアナに目を向けると2人は口づけをしていた。 (リリアナがこんな大衆の目がある場所でそんなことを!) 彼女は初めて会った時は無関心な姿を見せたのに、一昨日は僕に夢中な可愛い女だった。 そんな彼女は昨日には他の男を庇い、今、僕の大嫌いなその男と口づけをしている。 曲が終わると同時に2人が離れたので、僕はすぐに彼女に近づいた。 アッサム王子との口づけの余韻に浸るような彼女に苛立つ気持ちを抑えながらも彼女をダンスに誘った。 「リリアナ⋯⋯曲が始まる。踊ろうか⋯⋯怪我はもう大丈夫なのか?」 昨日、彼女は気絶する程の出血をしたのに今は平然としている。 無事だったのは喜ばしいことだし、彼女と2人の時間を持とうと思った。 拒否されることなど全く予想していなかったダンスの誘いは断られた。 リリアナは小走りで逃げるようにバルコニーの外に出たので、僕は慌てて彼女の後を追った。 バルコニーに出ると外には雪が降っていた。 少し震えたリリアナを抱きしめたくなるも、僕たちはそんな親密な関係ではないことに気が付く。 (婚約者なのに、彼女との距離が遠い⋯⋯アッサム王子は彼女と口づけまでしてたのに!)「リリアナ⋯⋯なんで、逃げるんだ! 一昨日は僕のことが好きだと言った癖に今はアッサム王子殿下が好きなのか?」 気がつけば彼女を問いだだしていた。 僕のことを好きだ、抱いて欲しいなどと熱烈にらしくもなく迫ってきた彼女が愛おしかった。 僕の心を捉えといて、彼女
Last Updated : 2025-07-09 Read more